血肉の花弁

柘榴

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第7話 血肉の花Ⅰ

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 美しい花弁は全て揃った。
 俺は冷蔵庫から真衣の首、里香の手足、栞の胴体を運び出した。
 そしてそれらを1つずつ接合し、1つの身体の形に仕上げた。
 俺の目の前には歪な骸がある。異なるもの同士を接合したのだ、きっとこれは本来なら悍ましく、歪なものなんだろう。
 けれど、俺はこの歪な骸が美しくて、愛しくて仕方ない。
「やはり、死してもお前は美しいよ真衣。お前だけは」
 俺は冷たくなった真衣の頬に触れ、呟く。
 里香も栞も、お前を際立たせるためのパーツに過ぎない。
 花を開花させるためには、花弁が無ければならない。
 里香と栞はまさに「血肉の花弁」となって、真衣という花を彩っている。
「だがおかしな話だ。今の世の中じゃ手足が長いか、豊満な肉体だけが取り柄のバカ女たちの方が需要があるんだと。ただ外面だけに惑わされる世間の連中は救いようのない馬鹿だとは思わないか?」
 世間の馬鹿共はその外見だけに惑わされ、本物の美しさに気付かない。
 だが、今俺が真衣にもそれを与えてやった。世間の馬鹿共が魅力と感じるものを全て「花弁」として真衣に与えた。
 これで満足かと、俺は世間の連中に向けて叫びたい。
「お前のようなこんなにも美しい存在を理解できない連中は馬鹿だ。だがら、その馬鹿共に教え込んでやらないといけない。真衣、お前という存在の重みを」
 それこそが俺のプロデュースの目的だった。
 真衣を世間の連中に認知させる。真衣という存在を、世間の連中の記憶と心に植え付ける。
「世間の馬鹿共は、俺を何と言うだろうな。狂人、殺人鬼……想像はつくさ。俺はきっと、世間に許されることは無い。けど、許される必要なんてない。俺は罪は犯したが、過ちを犯したわけではない。俺の行いは最善ではなくても、正しかったとは思う。俺はただ……お前をプロデュースしただけなんだから」
 そのために、お前の死が必要だった。
 殺人鬼のプロデューサーが担当アイドル3名を惨殺。挙句その死体をバラバラにし、死体のパーツを接合して1つの身体……「理想のアイドル」を模した骸を造った。
 世間の連中が、こんな残酷な事件から目を背けられるか? 忘れられるか? きっと永遠に人々の心に留まり続けるはずだ。事件と共に、その被害者の存在も。

 俺はこうして、真衣という存在を世間の連中の記憶と心に植え付けるんだ。
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