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第8話 血肉の花Ⅱ
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接合した真衣を自宅から車に運び入れ、そのまま深夜の秋葉原を目指す。真衣をステージに立たせ、お披露目するためだ。
深夜ということもあってすぐに秋葉原の地下会場まで辿り着いた。俺は裏口を破壊し、真衣と共に会場に侵入した。
「お前と再びこのステージに上がれるなんて、思いもしなかった」
真っ暗なステージ上に真衣を運び入れ、ステージ中央の椅子に座らせる。
真衣にはウエディングドレスを模した純白の衣装を着せた。黙して椅子に座るその姿は、ただ美しかった。
ようやくステージ上に「血肉の花」が開花した。里香と栞という血肉の花弁が集い、真衣という花が開花した。
「真衣、お前の引退は撤回だ。お前はずっとこのステージに立ち続ける。見た者の記憶と心に留まり続ける。真衣という存在は、未来永劫に生き続ける」
こんな美しくも残酷な光景、1度見たら忘れられるわけがない。
明日になれば、世間はこの事件を一斉に報道する。真衣、お前の存在と共に人々に認知される。
「お前に見向きもしなかった馬鹿共が、明日にはきっとお前に釘づけだ。狂ったプロデューサーに惨殺された、哀れなアイドルとして。きっと世間の誰もが俺を非難し、お前に同情する。誰もがお前という存在を認めてくれる」
こんな手段でしかお前を表現してやれなかった俺を、お前はどう思うだろうか。
きっと、笑うことはしても怒ることは無いだろう。何故なら……
「真衣、お前は最期……俺に殺されることを受け入れた。俺を信じると言って、声も出さず抵抗もせずに静かに死を受け入れた。まさか俺のプロデュースがこんなことだとはお前も想像しなかったはずなのに、お前はそれでも受け入れた」
真衣は、俺に首を絞められている時声も出さず抵抗もせず、ただ黙って俺に身を委ねた。
あの時、真衣はただ静かに目を閉じて俺のプロデュースを受け入れた。
例えそれが「死」という形でも、真衣は俺のプロデュースを信頼し受け入れた。
「本当に……馬鹿だな。10年間俺のプロデュースを受けて、結果が出なかったことはお前が1番よく知っていたはずだろう。それでも、それでもお前は俺を信じていた……けれど、お前に結果など必要なかったのかもしれないな」
真衣は結果が出ないことを俺のせいにしたことなど無かった。
きっと真衣には結果など必要なかった。ただ10年間をアイドルとして全力で駆け抜けられた事だけが、彼女にとって全てだった。
結果などでなくても、彼女にとっての10年間は成功だった。だからこそ、真衣にとって俺のプロデュースは間違いなどでは無かった。
「心配するな、お前はこれからもステージに立ち続ける。誰もお前の事を忘れたりしない。もう……お前は」
俺はただ温度の感じられない真衣を最後に抱きしめ、会場を後にする。
「もう、立派なみんなのアイドルだ」
間違った選択をしたつもりはない。けれど、俺の頬には涙が確かに流れていた。
深夜ということもあってすぐに秋葉原の地下会場まで辿り着いた。俺は裏口を破壊し、真衣と共に会場に侵入した。
「お前と再びこのステージに上がれるなんて、思いもしなかった」
真っ暗なステージ上に真衣を運び入れ、ステージ中央の椅子に座らせる。
真衣にはウエディングドレスを模した純白の衣装を着せた。黙して椅子に座るその姿は、ただ美しかった。
ようやくステージ上に「血肉の花」が開花した。里香と栞という血肉の花弁が集い、真衣という花が開花した。
「真衣、お前の引退は撤回だ。お前はずっとこのステージに立ち続ける。見た者の記憶と心に留まり続ける。真衣という存在は、未来永劫に生き続ける」
こんな美しくも残酷な光景、1度見たら忘れられるわけがない。
明日になれば、世間はこの事件を一斉に報道する。真衣、お前の存在と共に人々に認知される。
「お前に見向きもしなかった馬鹿共が、明日にはきっとお前に釘づけだ。狂ったプロデューサーに惨殺された、哀れなアイドルとして。きっと世間の誰もが俺を非難し、お前に同情する。誰もがお前という存在を認めてくれる」
こんな手段でしかお前を表現してやれなかった俺を、お前はどう思うだろうか。
きっと、笑うことはしても怒ることは無いだろう。何故なら……
「真衣、お前は最期……俺に殺されることを受け入れた。俺を信じると言って、声も出さず抵抗もせずに静かに死を受け入れた。まさか俺のプロデュースがこんなことだとはお前も想像しなかったはずなのに、お前はそれでも受け入れた」
真衣は、俺に首を絞められている時声も出さず抵抗もせず、ただ黙って俺に身を委ねた。
あの時、真衣はただ静かに目を閉じて俺のプロデュースを受け入れた。
例えそれが「死」という形でも、真衣は俺のプロデュースを信頼し受け入れた。
「本当に……馬鹿だな。10年間俺のプロデュースを受けて、結果が出なかったことはお前が1番よく知っていたはずだろう。それでも、それでもお前は俺を信じていた……けれど、お前に結果など必要なかったのかもしれないな」
真衣は結果が出ないことを俺のせいにしたことなど無かった。
きっと真衣には結果など必要なかった。ただ10年間をアイドルとして全力で駆け抜けられた事だけが、彼女にとって全てだった。
結果などでなくても、彼女にとっての10年間は成功だった。だからこそ、真衣にとって俺のプロデュースは間違いなどでは無かった。
「心配するな、お前はこれからもステージに立ち続ける。誰もお前の事を忘れたりしない。もう……お前は」
俺はただ温度の感じられない真衣を最後に抱きしめ、会場を後にする。
「もう、立派なみんなのアイドルだ」
間違った選択をしたつもりはない。けれど、俺の頬には涙が確かに流れていた。
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