6 / 36
第5話
しおりを挟む
2年前、本来マレリアは聖マリフィナ王国に来るはずの人間ではなかった。
マレリアはセルシフォアでの戦姫という裏の顔を持っており、だからこそ聖マリフィナ王国に送られるとなった時、真っ先に除外されたのだ。
なのに何故、彼女が聖マリフィナ王国に嫁ぐことになったか。
……その理由は、失恋によるやけだった。
その当時、マレリアは騎士団長として名を馳せていたマーリンへと仄かな恋心を抱いていた。
それはマレリアの初恋。
だからこそ、気恥ずかしさが優先してマレリアはマーリンに思いを告げることが出来なかった。
決して身分としては釣り合わないわけではなかったにもかかわらずにも、だ。
……そしてマレリアがそれではいけないと気づいた時にはもう手遅れだった。
騎士団長として武名を馳せていたマーリンはとある貴族の女性を娶ることになってしまったのだ。
……それは明らかに本人達の意思がない政略結婚だった。
確かにマーリンは騎士団長として名を馳せていたが、それでも平民出身で、貴族に強制されれば婚姻を断ることが出来なかったのだ。
……そしてそんな状況になってマレリアはやけになり、自身の姉妹が聖マリフィナ王国への政略結婚に難を示していることを聞き、自ら志願して聖マリフィナ王国へとやって来たのだ。
聖マリフィナ王国との国交を結ぶ仕事に専念することで失恋の衝撃を軽減するために。
……けれども、聖マリフィナ王国に渡ったマレリアを待っていたのは、選民思想による差別の目だった。
聖マリフィナ王国の人間は選民思想に侵されており、他国の人間であるマレリアを認めようとしなかったのだ。
いや、それどころか援助をしてくれた大国の王女であることを知りながら、徹底して虐げた。
マレリアを世話する侍女は全てマレリアを見下した態度を取り、執事の中にはマレリアに襲いかかろうとした人間がいた程だ。
ーーー その状況に、マレリアは激怒した。
◇◆◇
聖マリフィナ王国に来るにいたり、マレリアは自身が身体を国王に捧げなければならないという決意ぐらい固めていた。
……けれども、あまりの対応の酷さにマレリアのその決意は消え去った。
幾ら失恋した衝撃でやけになっていても、聖マリフィナ王国の国王に身を捧げるのだけはごめんだったのだ。
そしてそう判断してからのマレリアの行動は早かった。
自分にちょっかいを出してきた人間をごうも……お話の後懐柔し、自分がまるで屋敷に閉じこもっているように報告させて、冒険者として活動し始めたのだ。
もちろん、セルシフォアの国王にこの現状を報告して。
……無能な宰相は知る由はないが、実は聖マリフィナ王国の警備は穴だらけでこの2年間、ずっとマレリアは本国と連絡を取っていたりする。
ついでに、何故それでも支援金が出たのかというと、実はマレリアがやらかすことに対する慰謝料だったする……
それからマレリアは聖マリフィナ王国の中で暴れに暴れた。
確かに聖マリフィナ王国では選民思想が有名であるが、それはあくまで富裕層だけでしかない。
つまり、貧民達は聖マリフィナ王国に摂取される立場にあって、マレリアは彼らを虐げる悪徳貴族を問答無用で成敗し、それらが溜め込んでいた財産を民衆に分け与えたのだ。
……半端八つ当たり気味に。
そのおかげで聖マリフィナ王国の国民は潤い、活気に満ち始めたのだがその代わりに、主な貴族が次々と没落していったせいで、聖マリフィナ王国の名は地に堕ちることになった……
そしてその結果、王家の名誉を立ち直すためには民衆に金をばら撒くような政策を取り、民衆のご機嫌伺いをするしかなくなり、そのせいでセルシフォアからの支援金が欠かせなくなったというのが、現在の聖マリフィナ王国の現状だったりする……
けれども、そんな生活をしていたマレリアに届いたセルシフォア王家からのある知らせが彼女に大きな転機をもたらすことになる。
マレリアはセルシフォアでの戦姫という裏の顔を持っており、だからこそ聖マリフィナ王国に送られるとなった時、真っ先に除外されたのだ。
なのに何故、彼女が聖マリフィナ王国に嫁ぐことになったか。
……その理由は、失恋によるやけだった。
その当時、マレリアは騎士団長として名を馳せていたマーリンへと仄かな恋心を抱いていた。
それはマレリアの初恋。
だからこそ、気恥ずかしさが優先してマレリアはマーリンに思いを告げることが出来なかった。
決して身分としては釣り合わないわけではなかったにもかかわらずにも、だ。
……そしてマレリアがそれではいけないと気づいた時にはもう手遅れだった。
騎士団長として武名を馳せていたマーリンはとある貴族の女性を娶ることになってしまったのだ。
……それは明らかに本人達の意思がない政略結婚だった。
確かにマーリンは騎士団長として名を馳せていたが、それでも平民出身で、貴族に強制されれば婚姻を断ることが出来なかったのだ。
……そしてそんな状況になってマレリアはやけになり、自身の姉妹が聖マリフィナ王国への政略結婚に難を示していることを聞き、自ら志願して聖マリフィナ王国へとやって来たのだ。
聖マリフィナ王国との国交を結ぶ仕事に専念することで失恋の衝撃を軽減するために。
……けれども、聖マリフィナ王国に渡ったマレリアを待っていたのは、選民思想による差別の目だった。
聖マリフィナ王国の人間は選民思想に侵されており、他国の人間であるマレリアを認めようとしなかったのだ。
いや、それどころか援助をしてくれた大国の王女であることを知りながら、徹底して虐げた。
マレリアを世話する侍女は全てマレリアを見下した態度を取り、執事の中にはマレリアに襲いかかろうとした人間がいた程だ。
ーーー その状況に、マレリアは激怒した。
◇◆◇
聖マリフィナ王国に来るにいたり、マレリアは自身が身体を国王に捧げなければならないという決意ぐらい固めていた。
……けれども、あまりの対応の酷さにマレリアのその決意は消え去った。
幾ら失恋した衝撃でやけになっていても、聖マリフィナ王国の国王に身を捧げるのだけはごめんだったのだ。
そしてそう判断してからのマレリアの行動は早かった。
自分にちょっかいを出してきた人間をごうも……お話の後懐柔し、自分がまるで屋敷に閉じこもっているように報告させて、冒険者として活動し始めたのだ。
もちろん、セルシフォアの国王にこの現状を報告して。
……無能な宰相は知る由はないが、実は聖マリフィナ王国の警備は穴だらけでこの2年間、ずっとマレリアは本国と連絡を取っていたりする。
ついでに、何故それでも支援金が出たのかというと、実はマレリアがやらかすことに対する慰謝料だったする……
それからマレリアは聖マリフィナ王国の中で暴れに暴れた。
確かに聖マリフィナ王国では選民思想が有名であるが、それはあくまで富裕層だけでしかない。
つまり、貧民達は聖マリフィナ王国に摂取される立場にあって、マレリアは彼らを虐げる悪徳貴族を問答無用で成敗し、それらが溜め込んでいた財産を民衆に分け与えたのだ。
……半端八つ当たり気味に。
そのおかげで聖マリフィナ王国の国民は潤い、活気に満ち始めたのだがその代わりに、主な貴族が次々と没落していったせいで、聖マリフィナ王国の名は地に堕ちることになった……
そしてその結果、王家の名誉を立ち直すためには民衆に金をばら撒くような政策を取り、民衆のご機嫌伺いをするしかなくなり、そのせいでセルシフォアからの支援金が欠かせなくなったというのが、現在の聖マリフィナ王国の現状だったりする……
けれども、そんな生活をしていたマレリアに届いたセルシフォア王家からのある知らせが彼女に大きな転機をもたらすことになる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,374
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる