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第6話
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マレリアに届いた知らせ、それはマーリンが自身に政略結婚を強いた貴族の不正を暴き、離縁したというものだった。
そしてその知らせに、マレリアは歓喜した。
この2年の間、マーリンの動向をマレリアは国王から教えてもらっていた。
それはあくまでマーリンが政略結婚を強いられたことにより、何らかの不都合を被っていないかと調べていたのだけだが、その結果マレリアはマーリンの現状についておおよそのことを知っていた。
それはマレリアがセルシフォアを後にしてから、マーリンは鍛錬に打ち込み、英雄と大陸中にその名を馳せる人物になっていたことを。
最初、マレリアには何故急にマーリンがそんな無茶をし始めたのか分からず、ただマーリンのことを心配して無事を祈ることしかできなかった。
けれども、国王から告げられたマーリンの離縁を聞いてマレリアはようやく何故かれがそんな無茶をしていたのかを悟ることとなった。
マーリンは自分に政略結婚を強いた貴族達を追い出す、それだけの力を手にするために必死に頑張っていたことを。
そしてその結果、マーリンはもう高位貴族の言うことは逆らえないような平民上がりではなく、英雄となった。
それならば、自分がセルシフォアに戻ればマーリンと結ばれる可能性があるのではないかと、マレリアは喜んだのだ。
「……マーリンはお主を迎えに行くために聖マリフィナ王国に行くらしいぞ」
「…………は?」
……けれどもその笑顔は、セルシフォア国王が告げた次の言葉に固まることとなった。
◇◆◇
マーリンが自分を救うために聖マリフィナ王国に来てくれる。
それはまるで御伽噺の英雄譚のような話だった。
「ぁぁああああああ!」
……白銀の乙女という、マレリアの黒歴史が聖マリフィナ王国で広まっていたりしなければ。
マレリアはセルシフォアでは国王以外の全員に、戦姫という裏の顔を隠していた。
その理由は簡単だ。
………マーリンに自分の暴れっぷりを知られ、引かれるという状況を回避するためだ。
けれども、マーリンが白銀の乙女という噂か広まっている聖マリフィナ王国に来てしまえば、マレリアには隠し通す自信はなかった。
もし、こんな未来があったというならばもっと上手く隠し通すことが出来ただろうに。
しかしその後悔はもう遅い。
このままでは、せっかく来たマーリンにマレリアは幻滅されることになる。
けれども、降って湧いてきたチャンスをあっさりと諦めることが出来るわけがなかった。
だからマレリアはマーリンが来る前に聖マリフィナ王国を後にすることを決意した。
そして聖マリフィナ王国外でマーリンを見つけ、追い出されて来た風を装いセルシフォアに戻る。
「………何としてでも、マーリン様を聖マリフィナ王国から遠ざけないとーーそう、物理を使ってでも」
セルシフォア王女マレリア。
彼女は政略結婚に出されたほどなのだから、決して要領は悪くはない。
しかし要領は悪くないだけの、ただの馬鹿である。
そしてその知らせに、マレリアは歓喜した。
この2年の間、マーリンの動向をマレリアは国王から教えてもらっていた。
それはあくまでマーリンが政略結婚を強いられたことにより、何らかの不都合を被っていないかと調べていたのだけだが、その結果マレリアはマーリンの現状についておおよそのことを知っていた。
それはマレリアがセルシフォアを後にしてから、マーリンは鍛錬に打ち込み、英雄と大陸中にその名を馳せる人物になっていたことを。
最初、マレリアには何故急にマーリンがそんな無茶をし始めたのか分からず、ただマーリンのことを心配して無事を祈ることしかできなかった。
けれども、国王から告げられたマーリンの離縁を聞いてマレリアはようやく何故かれがそんな無茶をしていたのかを悟ることとなった。
マーリンは自分に政略結婚を強いた貴族達を追い出す、それだけの力を手にするために必死に頑張っていたことを。
そしてその結果、マーリンはもう高位貴族の言うことは逆らえないような平民上がりではなく、英雄となった。
それならば、自分がセルシフォアに戻ればマーリンと結ばれる可能性があるのではないかと、マレリアは喜んだのだ。
「……マーリンはお主を迎えに行くために聖マリフィナ王国に行くらしいぞ」
「…………は?」
……けれどもその笑顔は、セルシフォア国王が告げた次の言葉に固まることとなった。
◇◆◇
マーリンが自分を救うために聖マリフィナ王国に来てくれる。
それはまるで御伽噺の英雄譚のような話だった。
「ぁぁああああああ!」
……白銀の乙女という、マレリアの黒歴史が聖マリフィナ王国で広まっていたりしなければ。
マレリアはセルシフォアでは国王以外の全員に、戦姫という裏の顔を隠していた。
その理由は簡単だ。
………マーリンに自分の暴れっぷりを知られ、引かれるという状況を回避するためだ。
けれども、マーリンが白銀の乙女という噂か広まっている聖マリフィナ王国に来てしまえば、マレリアには隠し通す自信はなかった。
もし、こんな未来があったというならばもっと上手く隠し通すことが出来ただろうに。
しかしその後悔はもう遅い。
このままでは、せっかく来たマーリンにマレリアは幻滅されることになる。
けれども、降って湧いてきたチャンスをあっさりと諦めることが出来るわけがなかった。
だからマレリアはマーリンが来る前に聖マリフィナ王国を後にすることを決意した。
そして聖マリフィナ王国外でマーリンを見つけ、追い出されて来た風を装いセルシフォアに戻る。
「………何としてでも、マーリン様を聖マリフィナ王国から遠ざけないとーーそう、物理を使ってでも」
セルシフォア王女マレリア。
彼女は政略結婚に出されたほどなのだから、決して要領は悪くはない。
しかし要領は悪くないだけの、ただの馬鹿である。
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