御託はいいのでさっさと離縁してください旦那様

影茸

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第16話

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 「つまり、聖マリフィナ国王は私を殺すつもりであると」

 「はい!」

 ……マーゼブルの作業から少しして、暗闇の中二人の人間が密かに言葉を交わしていた。
 その二人組はは言うまでもなくマレリアとマーサリンだった。
 そしてその二人は怒気を隠そうともせず情報を交換していく。

 「……幾ら何でも暗殺にまで手を伸ばそうとするなんて。………早めに決着をつけないと」

 「ええ。もう国王達は手段を選ぼうとはしないでしょう」

 ……その暗殺ということが勘違いであることを知らず、マレリアとマーサリンの話は進んでいく。

 「と言うわけで貴方の要望はある程度叶えてあげることにするわ」

 そしてマレリアがまるでこの場にいない人間に語りかけるように告げた瞬間、その空間が震撼する。

 「有難きお言葉。貴女様の慈悲に感謝を」

 「っ!?」

 ーーー 次の瞬間その場に現れたのは輝かんばかりの美形を有した一人の男だった。

 そしてその男の出現にマーサリンは思わず目を見開く。
 何故ならその男はある程度の実力を有するはずのマーサリンに全く気付かれることなくこの場所に現れたのだから。

 「気にしないで。ただの偶然だから」

 けれどもその男が突然現れたこと、または男の人間離れした美貌にマレリアは一切驚きを漏らすことはなかった。
 そう、まるで男がこの場にいたのを知っていたかのように。

 「それに聖マリフィナ王国の聖獣をセルシフォアに引き抜けることを考えれば大したことではないわ」

 「せ、聖獣!?」

 そして次の瞬間、マレリアの漏らした言葉にマーサリンは思わずそんな叫び声を漏らしていた。
 聖マリフィナ王国の人間は聖獣のことを聖マリフィナ王国の守護神だと神聖視しており、だからこそマーサリンはマレリアに教えてもらうまでその聖獣を見たどころか封印されていることさえ知らなかった。

 「はは。主人様はご冗談がお好きなようで。貴女に完膚なきまでに負けてしまった私にそんな価値などありませんよ」

 マーサリンはマレリアが異常に聖獣に詳しいことから、ある程度関わりがあるのかもしれないと感じていた。
 それは聖マリフィナ王国の人間でさえ考えられないことだが、マレリアなら出来そうな気がしていたのである。
 ……けれどもどうやら自分の主はその聖獣と関わりがあるどころか、勝負した挙句従属させていたらしい。
 そのことを理解した瞬間、マーサリンは思わずといった様子で言葉を漏らしていた。

 「……聖マリフィナ王国終わりましたね」

 ……聖マリフィナ王国滅亡の時はすぐそこまで迫っていた。
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