御託はいいのでさっさと離縁してください旦那様

影茸

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第33話

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 意識を失い、ピクリともしないサーダンの姿。

 「……これだけで済ませられる訳がない」

 ……けれども、そのサーダンを見つめるマレリアの目からは以前怒りが消えることはなかった。
 いや、それどころか前よりも怒りは増していた。

 「ふぅ……」

 だが、マレリアがその怒りをサーダンへとぶつけることはなかった。
 深呼吸する事でマレリアはサーダンの怒りを一度抑え込む。
 それはまるでサーダンを許すかのようなそんな態度で。

 ーーー けれども、そんなわけがないことを射殺さんばかりの目でサーダンを睨みつけるマレリアの様子が何よりも雄弁に物語っていた。

 「マーサリン」

 マレリアは先ほどよりも幾分か怒りを抑えた声で腹心の部下の名を呼ぶ。

 「はっ!マレリア様のご命令通りに事は推し進めておきました!」

 次の瞬間、どこからともなくマーサリンがマレリアの前へと現れ、跪いた。

 「その子の言う通り、もう城内には生かしておいても革命の邪魔にしかならない屑しか残っておりません」

 そして現れたのはマーサリンだけではなかった。
 人化した聖獣もマーサリンと同じようにどこからともなく現れたのだ。

 「なっ!?」

 その光景にマーリンは思わず驚愕の声を上げる。
 いくらマーリンと言えども、人化した状態の聖獣の正体を見抜くことはできない。
 けれども、その人並み外れた能力がマーリンに見抜けないはずが無く、だからこその驚愕の声だった。

 「よろしい。では、やりますか」


 …………けれども、不幸なことにそのマーリンの声がマレリアの耳に入ることはなかった。

 怒りで支配されたマレリアは愛しの人がすぐ近くにいることを頭から占め出していたのだ。
 ………気づかなかったことに後で、どれ程の後悔することになるか知る由もなく。

 「《強化》」

 マーリンに気づかないまま、マレリアは意識を失ったサーダンの足を掴み、その身体に《強化》の魔術をかける。

 そう、武器として申し分ない強度を得るために。

 次の瞬間、握りごごちを確かめ満足そうに頷いたマレリアはサーダンの身体を頭上へと振り上げて。


 「死に絶えろぉぉぉぉぉぉ!」

 「ぐぼらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ーーーー サーダンの身体を城へと投げ込んだ。


 そしてそのマレリアが投擲したサーダンに耐え切ることが出来ず、轟音が鳴り響き、城が崩れていく。

 ……このサーダンの投擲が、後に新マリフィナ民主国を成立させる革命の中起こった奇跡、剣姫の鉄槌、と呼ばれるようになることをこの時のマレリア達は知る由もなかった。
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