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第44話
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ライルハート様を前にして、私は呆然と口を動かしていた。
「なんでここに………」
「攫われた大切な人間を助けに来るのに理由はあるか?」
ライルハート様は、照れたように笑いながら、けれどもはっきりとそう口にした。
そのライルハート様の姿に、頭の中これは夢なんじゃないか。そんな思いが胸の中浮かぶ。
ライルハート様がこんな場所に私を助けにやってきてくれたこと。
ライルハート様が私に告げてくれた言葉。
その全てが、私の心から望んでいたものだった。
だから、私はこれが現実なのか判断できなかった。
あまりにも自分が望んだようにことが運びすぎて、今目の前にいるライルハート様が、自分の心が作り出した妄想のように感じるのを止めることが出来なかった。
ライルハート様に向かって呆然と、口を動かす。
「これは、夢じゃ…………っ!」
──下から、荒々しい足音が聞こえてきたのは、その時だった。
「なんの音だ!確かめてこい」
「分かりましたよ」
苛立ちを含んだ父の声と、それに応える柄の悪い男の声。
想像以上に近くから聞こえた声に、今になって父達が離れで自分を監視していたことに気づく。が、動揺を露わにする私に対し、ライルハート様は冷静そのものだった。
「気づかれたか」
小さくライルハート様が漏らした声には、隠す気のない怒気が込められていた。
「アイリスに手を出しておいて、俺が大人しくしていると思ってんのかね?」
獰猛に吐き捨てたライルハート様は、牢屋の柵を掴む。
次の瞬間、柵は異常な力で歪み、ライルハート様が通るのにまるで支障のない大きさの隙間が生まれる。
柄の悪い男達が、部屋の中に入ってきたのは丁度その時だった。
「なっ!?」
ライルハート様と、歪められた柵を見て最初に入ってきた男は、動揺の声を漏らす。
私が男の声を聞いたのは、それが最後だった。
動揺を隙と判断したライルハート様に殴られ、声を出す暇もなく男は意識を失う。
いや、もしかしたら男は、意識を失う前に何かを言っていたかもしれない。がそれは、次に部屋にたどり着いた複数人の男達の声にかき消されることとなった。
「なんだよ、これ!」
「おい、何が起きている?」
「もしかしてお前がやったのか!」
扉の外、そう話しながら男達は部屋の中へと入ってくる。
その顔には、先ほどの男達と違い余裕があった。
自分達がライルハート様よりも多い人数であること、一見ライルハート様が細身で戦えるように見えないこと。
その余裕は、それらの要素を考慮した上での判断で、油断ではなかったかもしれない。
だがそれは、ライルハート様を相手にする上で、何の手助けにもならなかった。
それ程に、男達とライルハート様の間には実力差が開いていた。
煩わしそうにライルハート様がそう吐き捨てた瞬間、男達は無言でその場に崩れ落ちた。
「邪魔だ」
魔術を使えない私には詳細はわからない。けれど、ライルハート様が魔術で何かをしたのだけは確実だろう。
それ以上、柄の悪い男達がライルハート様の近くの扉から入ってくることはなかった。
が、その代わりとでも言いたげに、この部屋の奥にある、もう一つの扉が開かれた。
次の瞬間、そこから顔を出したのは、その顔に苛立ちを浮かべた父の姿だった。
「なんでここに………」
「攫われた大切な人間を助けに来るのに理由はあるか?」
ライルハート様は、照れたように笑いながら、けれどもはっきりとそう口にした。
そのライルハート様の姿に、頭の中これは夢なんじゃないか。そんな思いが胸の中浮かぶ。
ライルハート様がこんな場所に私を助けにやってきてくれたこと。
ライルハート様が私に告げてくれた言葉。
その全てが、私の心から望んでいたものだった。
だから、私はこれが現実なのか判断できなかった。
あまりにも自分が望んだようにことが運びすぎて、今目の前にいるライルハート様が、自分の心が作り出した妄想のように感じるのを止めることが出来なかった。
ライルハート様に向かって呆然と、口を動かす。
「これは、夢じゃ…………っ!」
──下から、荒々しい足音が聞こえてきたのは、その時だった。
「なんの音だ!確かめてこい」
「分かりましたよ」
苛立ちを含んだ父の声と、それに応える柄の悪い男の声。
想像以上に近くから聞こえた声に、今になって父達が離れで自分を監視していたことに気づく。が、動揺を露わにする私に対し、ライルハート様は冷静そのものだった。
「気づかれたか」
小さくライルハート様が漏らした声には、隠す気のない怒気が込められていた。
「アイリスに手を出しておいて、俺が大人しくしていると思ってんのかね?」
獰猛に吐き捨てたライルハート様は、牢屋の柵を掴む。
次の瞬間、柵は異常な力で歪み、ライルハート様が通るのにまるで支障のない大きさの隙間が生まれる。
柄の悪い男達が、部屋の中に入ってきたのは丁度その時だった。
「なっ!?」
ライルハート様と、歪められた柵を見て最初に入ってきた男は、動揺の声を漏らす。
私が男の声を聞いたのは、それが最後だった。
動揺を隙と判断したライルハート様に殴られ、声を出す暇もなく男は意識を失う。
いや、もしかしたら男は、意識を失う前に何かを言っていたかもしれない。がそれは、次に部屋にたどり着いた複数人の男達の声にかき消されることとなった。
「なんだよ、これ!」
「おい、何が起きている?」
「もしかしてお前がやったのか!」
扉の外、そう話しながら男達は部屋の中へと入ってくる。
その顔には、先ほどの男達と違い余裕があった。
自分達がライルハート様よりも多い人数であること、一見ライルハート様が細身で戦えるように見えないこと。
その余裕は、それらの要素を考慮した上での判断で、油断ではなかったかもしれない。
だがそれは、ライルハート様を相手にする上で、何の手助けにもならなかった。
それ程に、男達とライルハート様の間には実力差が開いていた。
煩わしそうにライルハート様がそう吐き捨てた瞬間、男達は無言でその場に崩れ落ちた。
「邪魔だ」
魔術を使えない私には詳細はわからない。けれど、ライルハート様が魔術で何かをしたのだけは確実だろう。
それ以上、柄の悪い男達がライルハート様の近くの扉から入ってくることはなかった。
が、その代わりとでも言いたげに、この部屋の奥にある、もう一つの扉が開かれた。
次の瞬間、そこから顔を出したのは、その顔に苛立ちを浮かべた父の姿だった。
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