悪役令嬢の妹は復讐を誓う

影茸

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復讐《中》

 私に話しかけてくる目の前の王子を見て思い出す記憶、それは姉に向かって怒鳴っているものだった。
 その内容は何処かの令嬢を貶めただったか詳しくは覚えていない。
 
 ーーーけれども、その後泣きながら帰ってきた姉の姿だけは忘れることができなかった。

 姉は本当に優しい人だった。
 人を貶めるなどできないくらいに。
 そして本当に王子に恋をしていた。
 王子はそんな姉の心を裏切ったのだ。
 
 何故裏切ったのか、そしてあの美しい姉と何故別れようと思ったのかを私は知らない。
 
 けれども目の前の王子を絶対に許すわけにはいかない。
 
 「あ、すまないお茶が切れていたね」

 「えっ?」

 その時、私に王子が声をかけてきて、思考に耽っていた私は思わず驚く。

 「いえ!アレス様にそんなことを……」

 だが、直ぐにさも嬉しそうな作り笑いをして、断ろうとする。
 正直本音では王子に入れてもらったお茶など飲みたくもない。

 「気にしないで」

 しかしその私の思いが王子に届くことはなかった。
 
 ー ありがた迷惑。

 私は心の中でそう呟き、王子から顔を自然に背け顰めてみせる。
 そもそも私はあまりお茶は苦くて好きではない。
 折角飲み干したのにまた入れられるなんて嫌がらせとしか思えない。
 
 「えっ?」

 「どうした?」

 だが顔の位置を戻し、テーブルの上を見た私は思わず声を上げてしまった。
 何故ならばテーブルの上にはいつ間にか砂糖、それもお茶によくあうので私が好んで使っているものが置かれていたのだ。
 しかしそれはお母様に行儀が悪いと言われてからは1人の時にしかしていない飲み方。
 おそらく知っているのは私の従者ぐらいだろう。
 なのにどうやって目の前の王子がこの方法を知ったのか分からず私は思わず動揺を漏らしてしまう。
 
 「いえ、砂糖が置かれていたのに驚いてしまって……」

 そして私が正直にそう告げると、王子は照れたように笑った。

 「実は今日お茶会があるって聞いて君の従者に教えて貰ったんだ。ただ、実は先程まで手配できなくて……」

 王子の一言に私は先程王子の従者がこの部屋に入ってきたことを思い出す。
 確かにあの時何かを置いた気がしたのだが、それはこの砂糖だったのか。

 「ここにいるのは私と君だけだ。飲み方を咎める者なんていない。好きに飲んでくれ」

 そしてそう私に告げる王子からは本当に私を気遣う気持ちが見えて、私はさらに驚く。
 正直、この王子とは付き合って時間が経って行くたびにどんどん印象が変わって行く。
 最初は本当に親の仇のように憎んでいたはずがこれまでの付き合いで少しづつ絆されている気もする。
 確かにこんな人間であれば姉も本気で恋に落ちるのかもしれない。

 だが、だからこそ何故姉に冤罪をかけたのか私は分からなかった。

 もしかすれば仲良くなってから裏切ると言うことに快感を覚える変態なのだろうか?
 それとも……
 
 と、私はそこまでで考えるのをやめた。 
 もしかしたら王子は私の思っているような人間ではないかも知れない。
 けれども、もう私にはそんなことは関係なかった。
 ただ1つ重要なことはこの王子は姉を悲しめたと言うこと。
 だとすれば私はこの王子の弱みを何としてでも掴み、名誉をボロボロにしなければならない。
 逆にこの王子に罵られた姉の名誉を回復するために。

 ーーー それこそが、自分が恋した人間に出来る唯一の献身なのだから。

 「お姉様への想いが叶わないことぐらい分かってる……」

 だが、それでも私は止まることが出来ない。
 自分の代わりに寵愛を得ていながら姉を裏切った王子を許すことは私には出来ないだろうから………
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