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第十一話 (カルバス視点)
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「……っ」
俺の言葉に気圧されたようにソルタスが息をのむ。
しかしそれを無視して俺は続ける。
「本当に愛されていますね、旦那様」
そう、今の状況は全てソルタスのことをカーナリアが思っているが故の状況だった。
本来、これだけ怪しければカーナリアは子爵家に残る話を受けなかっただろう。
その判断ができるからこそ、カーナリアは貴族社会でも一目置かれる存在となったのだ。
しかし、今回カーナリアはその判断を誤った。
ソルタスが怪しいと理解しながら、それでもこの屋敷に残ることを決めてしまったのだ。
それはあの冷静沈着なカーナリアからは考えられない判断で……それはあまりにも大きすぎる隙だった。
「所詮ただの女という訳でしょう。自分が見込んだと思っている男に関して盲目になる。はは」
そういいながら、俺の頭は高速で回転する。
もしカーナリアにソルタスへの情が残っているのだとすれば、この子爵家に縛りつける手段は異常な数ある。
そう、まだカーナリアをここから逃がす訳にはいかないのだ。
──この子爵家が伯爵家となるまでは。
「だとすれば、まずはカーナリアの実家たる伯爵家からか」
「……カルバス、本当にこのまま行って私はいいのか?」
「あ?」
ぽつり、とソルタスが言葉を漏らしたのはその思考のさなかだった。
反射的にソルタスの方へと振り向いた俺の顔に浮かぶのは、隠しきれない嫌悪感だった。
今更、考えを変えようとしているのかという。
そんな俺の表情に気づかず、ソルタスは告げる。
「私のやっていることは本当に合っているのか? 一人で考えていると、どうしてもそう思わずにはいられないのだ。私は……」
「旦那様。──貴方の覚悟はその程度なのですか?」
「……っ」
あえて真っ直ぐと瞳を見つめ、私はそう告げる。
心の底からそう思っている、少しでもそう見せるために。
「何度も言っているでしょう。この子爵家を伯爵家にすることが、唯一の旦那様の目標を達成することなのです」
「だが……」
「私はいいのですよ? 旦那様が目標を達成できないと言っても。その場合はこの家から私はさらせていただきますが」
そういうと、いつものようにソルタスの顔色が変わる。
それを見ながら、私は内心ため息をつく。
ソルタスが反抗する可能性も考えておいた方がよいかもしれないと。
とはいえ、それでも状況が変わることはない。
そう判断し、俺はゆっくりと笑う。
何せ、ソルタスが裏切ったところで話を聞く人間など一人としていない。
その前に、全ての準備を終えてしまえばいいだけなのだから。
俺は笑いながらつぶやく。
「ひとまずは、奥様の実家の伯爵家からですね」
そう考えるその時の俺にはまだ一切の不安はなかった。
俺の言葉に気圧されたようにソルタスが息をのむ。
しかしそれを無視して俺は続ける。
「本当に愛されていますね、旦那様」
そう、今の状況は全てソルタスのことをカーナリアが思っているが故の状況だった。
本来、これだけ怪しければカーナリアは子爵家に残る話を受けなかっただろう。
その判断ができるからこそ、カーナリアは貴族社会でも一目置かれる存在となったのだ。
しかし、今回カーナリアはその判断を誤った。
ソルタスが怪しいと理解しながら、それでもこの屋敷に残ることを決めてしまったのだ。
それはあの冷静沈着なカーナリアからは考えられない判断で……それはあまりにも大きすぎる隙だった。
「所詮ただの女という訳でしょう。自分が見込んだと思っている男に関して盲目になる。はは」
そういいながら、俺の頭は高速で回転する。
もしカーナリアにソルタスへの情が残っているのだとすれば、この子爵家に縛りつける手段は異常な数ある。
そう、まだカーナリアをここから逃がす訳にはいかないのだ。
──この子爵家が伯爵家となるまでは。
「だとすれば、まずはカーナリアの実家たる伯爵家からか」
「……カルバス、本当にこのまま行って私はいいのか?」
「あ?」
ぽつり、とソルタスが言葉を漏らしたのはその思考のさなかだった。
反射的にソルタスの方へと振り向いた俺の顔に浮かぶのは、隠しきれない嫌悪感だった。
今更、考えを変えようとしているのかという。
そんな俺の表情に気づかず、ソルタスは告げる。
「私のやっていることは本当に合っているのか? 一人で考えていると、どうしてもそう思わずにはいられないのだ。私は……」
「旦那様。──貴方の覚悟はその程度なのですか?」
「……っ」
あえて真っ直ぐと瞳を見つめ、私はそう告げる。
心の底からそう思っている、少しでもそう見せるために。
「何度も言っているでしょう。この子爵家を伯爵家にすることが、唯一の旦那様の目標を達成することなのです」
「だが……」
「私はいいのですよ? 旦那様が目標を達成できないと言っても。その場合はこの家から私はさらせていただきますが」
そういうと、いつものようにソルタスの顔色が変わる。
それを見ながら、私は内心ため息をつく。
ソルタスが反抗する可能性も考えておいた方がよいかもしれないと。
とはいえ、それでも状況が変わることはない。
そう判断し、俺はゆっくりと笑う。
何せ、ソルタスが裏切ったところで話を聞く人間など一人としていない。
その前に、全ての準備を終えてしまえばいいだけなのだから。
俺は笑いながらつぶやく。
「ひとまずは、奥様の実家の伯爵家からですね」
そう考えるその時の俺にはまだ一切の不安はなかった。
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