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一章

第3話

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 次に私が向かったのはアストレッド当主であり、私の養父にあたるカールマン・アストレッドの元に行くことだった。
 精霊の契約者である、そのことをカールマンに明かしてしまえば彼は私がアストレッド家のものであることを盾に、飼い殺そうとするだろう。
 そう、政権争いの道具にするために。
 そしてそのことを避けるために私はいち早くアストレッド家を後にする必要があり、私は未だ力がバレていないこの時期にカールマンを説得する必要があったのだ。

 「……どうしよう」

 けれども、以前通り眼鏡とかつらを装着し、屋敷へと走る私にはカールマンを説得できる自信はなかった。
 いや、出来るだろうがその場合は精霊に洗脳させて強引に書類を書かせるなどの、後で禍根を残しそうなものばかりなのだ。
 その場合、絶対に後で覚えていないと騒ぎになるのは確実だ。
 ………しかし他の案は思い付かない。

 「はぁ……」

 私はあまりにも行き当たりばったりな自分に思わず溜め息を漏らす。
 けれどもここで諦めることが出来るわけがなく。

 「失礼します」

 私は覚悟を決めてカールマンの書斎の扉を開いた………




◇◆◇





 「………婚約破棄された人間がよくこの場所に現れることが出来たな。お前は勘当させてもらう!」

 私は扉を開くまでノープランであることに震えていた。

 「………え」

………だがその心配は無用のもので敷かなかった。

 ーーー この日私は生涯ではじめて、カールマンの愚かさに感謝を捧げることとなった。

 広場でのカランの言葉では、もうすでに私の婚約破棄の件について話終わっており、カールマンが婚約破棄の件を理解していないはずがない。
 なのにカールマンはまるで今婚約破棄を知ったように振るまい、私を勘当した。
 それはカールマンが前々から私を婚約破棄で勘当しようとしていた何よりの証拠だ。

 けれどもそんなこと今は私にとつて心のそこからどうでも良かった。

 ただ早く勘当の書類を渡せと念じる。

 「さぁ、早く出ていけ!もうすでに勘当の処理は済ましてある!」

 「っ!」

 そしてその私の願いがつうじたかのようにカールマンは私へと書類を投げつける。
 その書類は貴族が勘当する時、最後のステップとなるもので、これさえ発行してくれればもう勘当が覆ることはない。
 だから、宙をまう書類に私の口に笑みが浮かび………

 「カールマン卿、お願いが……サーマリア!?」

 ………次の瞬間、突然ノックもなしに部屋に入ってきたカランの姿にひきつることとなった。
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