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一章

第17話

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 母が亡くなってからアルセラーンの力が完全になるまでの5年間。
 その間、私はアルセラーンの力が完全なものになるのを待っているだけではなかった。

 その5年間、私は大精霊であるアルセラーンに師事し、魔術師としての実力を伸ばしていたのだ。

 人間の扱うものと精霊の魔術は決して同じものでは無い。
 だが本質的なところから見れば決して大きな違いがあるわけでは無い。
 それにアルセラーンはその長い生の中で人間の扱う魔術も知識としては習得していた。
 だから私はアルセラーンに指示をもらい、誰にも見つからない場所で反復練習を続けるというやり方で魔術を修練し続けてきた。

 その結果、私は現在人間の中でもトップクラスにやや劣るか程度の実力はあるとアルセラーンにお墨付きを頂ける程度には魔術を修めていた。


 「私は多分かなり強いよ」

 ーーー そしてその魔術を現在、私は王座の間の中最も分かりやすい形、球体として顕現していた。

 それは魔力を単純に球体として凝縮する、言わば魔術の基礎ともいえるもの。
 だからこそその球体には、魔術師の実力がはっきりと示されるのだ。

 「っ!?何だあの魔力は!」

 衛兵の後ろに守られるように立っていた宮廷魔術師達は私の手に存在する雷の球体を見てその顔を驚愕に染める。

 「早く!結界を!」

 けれども一人の宮廷魔術師がそう叫びながら結界を展開したことで、周囲の魔術師たちも我に返り私の球体を防ぐために結界を重ね始める。
 そしてその宮廷魔術師の行動を見ながら、私はぼんやりとこれは止められるな、と考えていた。
 正直、目の前で結界を展開する宮廷魔術師達の実力は想像以上に低いものだった。
 けれども今の私は別に宮廷魔術師を倒すことは目的では無い。
 私の目的は、自分が王族の結界に関係なく力を振ることのできる魔術師であることを示すことで、王族に私達を敵対してはならない存在だと理解させることだけ。

 「なっ!?さ、サーマリア貴様魔術師だったのか!?」

 そして私は驚愕をもう隠せない国王の様子に自分の目的は十分に果たせられたと判断する。 

 「それ」

 だから私は止められることを分かりながら、気の抜けた声で球体を宮廷魔術師の結界に正面からぶつけさせて。

 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 「………え?」

 ……次の瞬間、1秒も持つことなくあっさりと球体に押し負け消え去った宮廷魔術師の結界に言葉を失うこととなった。
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