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ままならないのが恋心
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トーマスは誠実な男性であったと思う。
同い年の二人は、十四歳の時に婚約した。
共に伯爵家の子息令嬢で、家柄の釣り合いも問題ない。
互いの母も茶会などで面識があり、父親同士も社交の場でしばしば言葉を交わしていた。
領地もそれ程離れておらず、王都のタウンハウスも程近い。
良縁であった。
遮るものなど何もない。
思春期に入りかけた二人も、最初こそぎこち無い交流であったものの、互いに穏やかな気質が合ったようで、ゆっくり心を通わせて行った。
と、ミレーユは思っていた。
けれども、トーマスはそうではなかったらしい。
十五歳で共に王都の学園に入学すると、ミレーユは気が付いた。
トーマスの心が離れた事を。
もしかしたら、最初から心など寄せられていなかったのかもしれない。
物静かなトーマスの熱量のある感情になど、それまで触れた事がなかった。
だから、学園で目配せし合う二人にも直ぐに気が付いた。
マリエル嬢は、柔らかくうねる金の髪に青い瞳の、愛らしい令嬢だ。
領地を持たない中央貴族の伯爵家の次女で、父親は王城に出仕している文官職にある。
生まれも育ちも王都にあって、洗練された物腰に教養の備わった可憐な令嬢であった。
芽生えてしまった恋心を、誰が責められようか。
誠実であるが為に、表面上では何も変わらぬ風を見せるトーマスに、何を言えばよいのだろう。
不実を責めても、心は変えることなど出来ないのだから。
自分の中にも確かにある恋心を、ミレーユは可哀想だと思った。
ミレーユの存在を知らながら、トーマスと愛を分け合うマリエルを、瞳に映したくなかった。
二人向き合い何事かを囁やき合う姿から、そっと視線を外す。
見なければ、それ以上心が泣くことはない筈。
決してそんなことは無いのだけれど。
ままならないのが恋心なのだわ。
私も貴方も彼の令嬢も。
同い年の二人は、十四歳の時に婚約した。
共に伯爵家の子息令嬢で、家柄の釣り合いも問題ない。
互いの母も茶会などで面識があり、父親同士も社交の場でしばしば言葉を交わしていた。
領地もそれ程離れておらず、王都のタウンハウスも程近い。
良縁であった。
遮るものなど何もない。
思春期に入りかけた二人も、最初こそぎこち無い交流であったものの、互いに穏やかな気質が合ったようで、ゆっくり心を通わせて行った。
と、ミレーユは思っていた。
けれども、トーマスはそうではなかったらしい。
十五歳で共に王都の学園に入学すると、ミレーユは気が付いた。
トーマスの心が離れた事を。
もしかしたら、最初から心など寄せられていなかったのかもしれない。
物静かなトーマスの熱量のある感情になど、それまで触れた事がなかった。
だから、学園で目配せし合う二人にも直ぐに気が付いた。
マリエル嬢は、柔らかくうねる金の髪に青い瞳の、愛らしい令嬢だ。
領地を持たない中央貴族の伯爵家の次女で、父親は王城に出仕している文官職にある。
生まれも育ちも王都にあって、洗練された物腰に教養の備わった可憐な令嬢であった。
芽生えてしまった恋心を、誰が責められようか。
誠実であるが為に、表面上では何も変わらぬ風を見せるトーマスに、何を言えばよいのだろう。
不実を責めても、心は変えることなど出来ないのだから。
自分の中にも確かにある恋心を、ミレーユは可哀想だと思った。
ミレーユの存在を知らながら、トーマスと愛を分け合うマリエルを、瞳に映したくなかった。
二人向き合い何事かを囁やき合う姿から、そっと視線を外す。
見なければ、それ以上心が泣くことはない筈。
決してそんなことは無いのだけれど。
ままならないのが恋心なのだわ。
私も貴方も彼の令嬢も。
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