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帰国
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「ヴィオレット様、御髪を整えますね。」
マリアが素早くおくれ髪を整えてくれる。
馬車は、もう間もなく王宮に着く。
少しすると馬の歩みが速度を落として、そうしてゆっくりと停まった。
御者が扉を開くと先にマリアが降りる。
それから手を引いてもらいステップを降りる。
迎えの侍従と侍女、近衛らが礼をとって侍っていた。
「迎えを有難うございます。面を上げて下さい。」
礼を述べて案内を待つつもりだった。
「ヴィオレット王女殿下。」
声を掛けられて、一瞬呼吸が止まったらしい。少しして小さく息を吐く。
最前列で傅いていた近衛がひとり、姿勢を直して私と向き合う。
燦めくシトリンの瞳。
白銀に見える薄い金の髪。見覚えのある、私と同じ色。
ああ、頬が僅かに引き攣るのを、どうか誰にも気付かれません様に。
低く響く艶のある声。
長く伸びたのを背で結わえた髪。
広い肩幅に大きな体躯。
私に差し出された掌は、手袋で見えなくとも厚みがあるのが見て取れる。
私の知らない貴方。
私のよく知る貴方。
貴方は私の事など忘れていたでしょう?
私は貴方を忘れようとしていたわ。
「長のご遊学、お疲れ様で御座居ます。」
差し出された掌にそっと手を乗せる。
貴方のエスコートを、生まれて初めて受ける。
マリアが素早くおくれ髪を整えてくれる。
馬車は、もう間もなく王宮に着く。
少しすると馬の歩みが速度を落として、そうしてゆっくりと停まった。
御者が扉を開くと先にマリアが降りる。
それから手を引いてもらいステップを降りる。
迎えの侍従と侍女、近衛らが礼をとって侍っていた。
「迎えを有難うございます。面を上げて下さい。」
礼を述べて案内を待つつもりだった。
「ヴィオレット王女殿下。」
声を掛けられて、一瞬呼吸が止まったらしい。少しして小さく息を吐く。
最前列で傅いていた近衛がひとり、姿勢を直して私と向き合う。
燦めくシトリンの瞳。
白銀に見える薄い金の髪。見覚えのある、私と同じ色。
ああ、頬が僅かに引き攣るのを、どうか誰にも気付かれません様に。
低く響く艶のある声。
長く伸びたのを背で結わえた髪。
広い肩幅に大きな体躯。
私に差し出された掌は、手袋で見えなくとも厚みがあるのが見て取れる。
私の知らない貴方。
私のよく知る貴方。
貴方は私の事など忘れていたでしょう?
私は貴方を忘れようとしていたわ。
「長のご遊学、お疲れ様で御座居ます。」
差し出された掌にそっと手を乗せる。
貴方のエスコートを、生まれて初めて受ける。
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