王妃の手習い

桃井すもも

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王太子との時間

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アンドリューが良いというので、オフィーリアは読書をする事とした。

何故そうなったのか、あれから王太子・アンドリューとの会合はアンドリューの休憩時間となった。

テラスでも東屋でもなく、応接室という壁のある空間は、外からの目が届かない。

王太子が婚約者に膝枕されて居眠りしているなど、誰がわかるか。

侍従と侍女と護衛、そしてオフィーリア以外に。

針を使う刺繍は憚られて、小さな本を持ち込む事とした。

オフィーリアは耳が良い。
その為か、外国語を聴き分ける能力が人より高く、語学を学ぶ事が好きである。

交易のオールブランスらしく、幼い頃より数ヶ国の言語を学んでいる。

教師にも恵まれた。

オフィーリア様のお耳は宝ですな。大切になさいませ。と老教師が褒めて下さった事は励みであった。

こればかりは王家へ感謝せねばなるまい。

アンドリューの居眠りタイムにも語学の書物を読む。

大陸に共通の言語はあれど、国の数も多い。繁栄を誇る帝国の言語は難解である。

そんな難解言語もオフィーリアにとっては楽しい学びで、帝国に駐留している大使が定期帰国する際には、帝国語での挨拶を交わしている。

オフィーリア嬢の発音は美しいですな。と、褒めてくれる大使はオフィーリアにとって株爆上がりの紳士である。


「.....」声に出さず単語を諳んじていたオフィーリアの唇に、そっと指先が触れる。

「!」

眠っていた筈のアンドリューがこちらを見上げオフィーリアの唇に触れていた。


「帝国語かな?」
聡明なアンドリューには声に出さずとも何を諳んじているのかが解ったらしい。

まさか、と驚いていると、

「背表紙が帝国語だからね」と事もなげに告げられて騙された気持ちになると同時に、唇に触れる指先に頬が茹で上がる。

もうもう、この方は一体何を考えているの?
こんな方だったなんて!

王太子以外、侍従も侍女も護衛達も、勿論オフィーリアも固まってしまった。



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