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第3話:「痛み」
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それから康介達は毎朝白い部屋に集まり、作戦を練ってからログインするように決めた。
朝ご飯は常に用意されており、ひさびさに規則正しい生活をしている。
朝は弱かった康介だが、『ゲームを健康に過ごすため』と毎朝アラームまでかけて臨んだ。
朝食を食べた後、大輝達と合流するのはあの酒場。
2回目のログインの時にクエストを依頼された。
この辺りにいるスライムの駆除と、ドロップアイテムの『ねばねばした液体』。
このアイテムを道具屋に持っていくと食料と交換してくれるので、それを納品すれば完了だ。
スライムとの戦闘はスムーズだった。
前衛2人、魔法職と回復職のバランスが取れたパーティでもある。
単体のスライムを囲んで撃破を繰り返すうちに、レベルは3まで上がっていた。
「よーし、こんなもんで十分かな?」
1人3個ずつ『ねばねばした液体』を手に入れると、大輝が声を発した。
成果としては十分だろう。
初戦闘とはいえ、動きは良かったはずだ。
現実世界とはやはり違う。
本来ならここまで動けるわけがないが、そこは完全ダイブ。
自分が思ってるように動くことが出来た。
スキルに関しても、まだ1種類しか使えないが問題はない。
これならこの辺は余裕で倒せるとタカをくくっていた。
スライムを追いかけて少し街から離れて狩りをしていた。
その帰り道、奴に出会ってしまったのだ。
「ゴ、ゴブリンだ……」
この辺にもゴブリンは出るのだろう。
基本的にゲームで出てくるノーマルゴブリンであれば弱い。
ただ、今の疲弊した状態で康介たちは勝てるのだろうか。
ゴブリンのレベルは3。
多分勝てる。
パーティでの連携次第だが、勝てるはずだ。
康介たちは草陰に隠れて、奇襲するタイミングを待った。
「俺が飛び出して注意を引くから、逃したら一気に康介が叩いてくれ」
「おーけー」
大輝が盾を構えてにじり寄っていく。
ゴブリンの手にはナイフが握られており、傷つけられたら痛いどころではなさそうだ。
「今だ!」
ゴブリンが横を向いた一瞬をついて草むらから出る。
大輝が盾を構えて剣を振りかざし、追撃用に康介も一緒に出る。
遥と玲奈は打ち漏らした時用に待機だ。
しかし飛び出しに気付いたゴブリンが、大輝が振り下ろした剣を横に避けた。
あたりはしたが、かすった程度だ。
「えっ!?」
まさか避けられるとは思わなかった。
大輝は振り抜き終わっており、横腹がガラ空きだ。
その脇腹目指してゴブリンのナイフが牙を剥く……
「危ない!」
康介が大輝に体当たりをし、そのダメージを自分に向けさせたのだ。
今回の狩りで、大輝の方がよりモンスターからダメージを受けている。
まだHPに余裕がある康介が受けた方が大事にならない。
ゴブリンを攻撃するより、大輝を助けた方がいい気がしたのだ。
「ゴブ!」
大輝を吹き飛ばした結果、ゴブリンナイフは康介の脇腹に突き刺さった。
ズン!っと体に響く音。
自分の肉体がナイフで貫かれてるのがわかる。
「ぐぉあ!」
ゴブリンの顔面を蹴り飛ばし距離を取らせる。
だがその行為で精一杯になってしまった康介が、そのまま地面に膝をついた。
(いてぇ……声も……でねぇ……)
膝をついてからすぐ頭が地面についた。
痛みは想像以上で、本当に貫かれたかのような痛みだ。
手で傷跡を抑えてはいるが、血が流れ出しているのもわかる。
「康介くん!!い、今手当します!!」
康介が倒れたのを見た玲奈が飛び出してきた。
咄嗟の行動。
その隙だらけの脇をゴブリンが狙い打とうとナイフを構えた。
「玲奈!!勝手に出るんじゃねぇぜ!」
大輝が康介に吹っ飛ばされた後すぐに体制を立て直し、ゴブリンの横から攻撃をする。
しかし踏み込みが甘く、傷が浅い。
「大輝、下がって!ファイアーボール!!」
遥が呪文名を口にすると、小さい炎の玉が生成され、ゴブリンに見事ヒットする。
それが致命傷となったのか、ゴブリンはそのまま燃え尽き霧散した。
「ヒール!」
玲奈が呪文を口にすると、杖から淡い光が溢れてきた。
それが康介を包み込み、傷が塞がっていく。
「あ、みなさんありがとうございます。なんかすみません…」
「いいってことだぜ!」
「康介さんが無事でよかった……」
「うちも魔法打てたし楽しかったよ!」
(……この痛みは本物ではないのか?)
みんながわいわいしているが、やはり先程の痛みが気になる。
もしゲームなら、この痛みは軽減されてもおかしくない。
リアル志向なのかもしれないが、言葉が出なくなるほどの痛みを与えるだろうか。
「ねぇみんな……街に帰ったら少し話があるんだ」
康介はこの事をしっかりと話さなければならない。
そう思い、街についてからこの事を議題にあげようと誓った。
◇
「はぁ?この世界が現実とリンクしてる!?」
「そんな大きな声出さないでよ」
康介たちはクエストを終わらせ、またいつもの酒場に来た。
ここは康介たち以外にもプレイヤーがいるのか、情報量が多い。
さらに飯も美味いので、ここが拠点となっていた。
「だってよー、そんな事言われても全く思えねぇぜ」
先程の大声は大輝だ。
現実とリンクしていると聞いてもいきなりは信じられないだろう。
「いやぁ、あの痛みは本物だよ。絶対に気をつけた方がいい」
「康介さんが言うんですから……ね?気をつけませんか?」
玲奈がフォローしてくれている。
むしろあの痛みがゲームだけど証明されることの方が嬉しいが……
「わかった。うちは康介を信じるよ。だから大輝もな?」
「おーけー!わかったよ」
なんとか信じてくれることになったらしい。
この事態については不安が多い。
世界初のMMOなのだから、何か不具合があってもおかしくない。
それゆえもっと情報が欲しい。
「今日も夜になったら戻るでしょ?そしたら他のプレイヤーにも聞いてみたいんだよね」
「そうだな。それがいいかもしれない」
他のプレイヤーでも怪我をしている人はいるだろう。
それなら康介と同じ思いをした人がいるかもしれない。
それからその日はすぐにログアウトして情報を集めるために広間に集合した。
しかし、そんな日に限って人はあまり来ない。
なんとか捕まえた人に話を聞いてもはぐらかせるだけだ。
何か勘ぐられているのだろうか。
「まぁ延長出来るとはいえ、この情報は不安にさせる方が強いからな。話は聞いてくれないかもしれない」
大輝の言う通り、この治験は賞金がかかっている。
もしかしたら康介の話を、不安にさせて攻略を遅くさせる罠だと思われたのかもしれない。
「うーん、そんなことないんだけどなぁ……」
疑心暗鬼になれば話は聞いてもらえない。
それならもう少し様子を見てからまた話してもいいだろう。
まだまだゲームは始まったばかりなのだ。
康介たちも、その日はそれでお終いにしてまた明日に備えた。
明日からはもっと安全に動きたい。
連携もだが、装備などの見直しも必要だろう。
今後はもっと鋭い攻撃や、魔法で燃やされたり凍らされたりする可能性もある。
慣れるのは難しくても、軽減させるための何かはあるはずだ。
考えれば考えるほどやりたいことが増えてくる。
こんな面白いゲーム……いや人生は初めてだ。
そう思いながら康介は眠りについたのであった。
◇
それからも毎日狩りとクエストをこなす日々だった。
全員が皮の鎧などを装備出来るぐらいにはお金を稼ぐことも出来た。
そろそろ初心者の街を出てもいい頃かもしれない。
酒場でそんな話をしていると、1人の老人が話しかけて来た。
「お主らはここを出て行くのか?」
「え?あ、はい」
急に話しかけられたものだから康介が少し驚きながら返事をする。
ここのAIは盗み聞きまでするのだろうか。
「それならここから森を抜けて行くがいい。嘆きの森と呼ばれておるが、お主達のレベルなら突破も可能だろう」
(強制イベントか?)
康介が黙って聞いていると、大輝が口を開いた。
「じぃちゃんありがとな。次の街はどんな街だい?」
「森を抜ければ王都じゃ。お主達の希望する『銀翼の騎士団』もそこで入隊が出来る」
銀翼の騎士団……このゲームの騎士団の名前か。
そこに入隊するのが次のクエストらしい。
早速行きたいが、まだまだ森の情報も少なく危険だ。
まずは情報集めが先決だろう。
「お爺さん、親切にありがとうございます」
「なぁに。最近は地力もつけずに走る若者が多いからのぉ。少しばかりのお節介じゃよ」
玲奈が丁寧にお礼を言うと、老人は手をひらひらさせながら照れ始めた。
本物の人間と間違えるほどに精巧だ。
康介達もお礼を言うと早速街に出て情報集めに入った。
「よーし、んじゃ俺と康介でこっちをあたる。遥と玲奈はそっち方面を頼むわ」
「おっけー!んじゃまた1時間後にここで!」
二手に別れて情報を集めに行く。
康介は元々NPCには誰でも話しかけるタイプだ。
MMOではあまり重要ではないかもしれないが、意外なところに意外な情報が落ちていることも多い。
そしてこのゲームでは、クエストがある人物の頭上には【!】が付いている。
プレイヤーに何か伝えたい人物の頭上には【?】が付いている。
康介は空き時間を利用して【?】は全部潰したはずだったが、今は軽く4人以上に付いているのが見えた。
先ほどに老人がクエストのフラグだったのだろうか。
「大輝、結構マーク出てる人多いね」
「あぁ、まるで俺たちを待っているかのようだな」
2人でその情報を逃さぬよう一人一人慎重に聞いて行く。
1時間もしないうちに全員に話を聴き終わったので酒場へと向かった。
「そっちはどうだった?」
遥が見るからにうずうずしている。
自分達の集めた情報を話したくて仕方ないのだろう。
「俺たちはかなり有意義だったぜ?」
大輝もニヤニヤしながらそれに答えた。
康介と玲奈はそんな2人を見ながら苦笑いを浮かべている。
「よーし、どっちが有力か勝負だな!」
「俺に勝とうなんて10年早いぜ?」
2人がお互いに話をして行く。
面白いことに、話の内容は全く同じだった。
初心者救済用に、同じことを話すNPCを置いてあるのだろうか。
その話でわかったことは全部で六つ
①嘆きの森に生息するモンスターはこちらに襲いかかってくる。
②平均レベルは4-5。
③毒を吐いてくる敵がいる。
④一番大きい道を行くだけだが、途中の分かれ道には宝箱があるかもしれない。
⑤森を守るボスがいることがある。
⑥ボスのレベルは康介達より高い。
これなら何度か森とこの街を往復してレベル上げにしてもいいだろう。
そして毒が一番怖い。
歩くだけでダメージとか、具合が悪くなって動けなくなったりしたら格好の餌食になってしまう。
康介達はもう少しレベルを上げることで同意した。
やはり康介の痛みが気になるし、万が一ボスに遭遇して全滅などはしたくない。
レベル5になり新しいスキルを試したいのもあった。
「よぉし、次はレベル上げて王都だ!」
「「「おー!」」」
朝ご飯は常に用意されており、ひさびさに規則正しい生活をしている。
朝は弱かった康介だが、『ゲームを健康に過ごすため』と毎朝アラームまでかけて臨んだ。
朝食を食べた後、大輝達と合流するのはあの酒場。
2回目のログインの時にクエストを依頼された。
この辺りにいるスライムの駆除と、ドロップアイテムの『ねばねばした液体』。
このアイテムを道具屋に持っていくと食料と交換してくれるので、それを納品すれば完了だ。
スライムとの戦闘はスムーズだった。
前衛2人、魔法職と回復職のバランスが取れたパーティでもある。
単体のスライムを囲んで撃破を繰り返すうちに、レベルは3まで上がっていた。
「よーし、こんなもんで十分かな?」
1人3個ずつ『ねばねばした液体』を手に入れると、大輝が声を発した。
成果としては十分だろう。
初戦闘とはいえ、動きは良かったはずだ。
現実世界とはやはり違う。
本来ならここまで動けるわけがないが、そこは完全ダイブ。
自分が思ってるように動くことが出来た。
スキルに関しても、まだ1種類しか使えないが問題はない。
これならこの辺は余裕で倒せるとタカをくくっていた。
スライムを追いかけて少し街から離れて狩りをしていた。
その帰り道、奴に出会ってしまったのだ。
「ゴ、ゴブリンだ……」
この辺にもゴブリンは出るのだろう。
基本的にゲームで出てくるノーマルゴブリンであれば弱い。
ただ、今の疲弊した状態で康介たちは勝てるのだろうか。
ゴブリンのレベルは3。
多分勝てる。
パーティでの連携次第だが、勝てるはずだ。
康介たちは草陰に隠れて、奇襲するタイミングを待った。
「俺が飛び出して注意を引くから、逃したら一気に康介が叩いてくれ」
「おーけー」
大輝が盾を構えてにじり寄っていく。
ゴブリンの手にはナイフが握られており、傷つけられたら痛いどころではなさそうだ。
「今だ!」
ゴブリンが横を向いた一瞬をついて草むらから出る。
大輝が盾を構えて剣を振りかざし、追撃用に康介も一緒に出る。
遥と玲奈は打ち漏らした時用に待機だ。
しかし飛び出しに気付いたゴブリンが、大輝が振り下ろした剣を横に避けた。
あたりはしたが、かすった程度だ。
「えっ!?」
まさか避けられるとは思わなかった。
大輝は振り抜き終わっており、横腹がガラ空きだ。
その脇腹目指してゴブリンのナイフが牙を剥く……
「危ない!」
康介が大輝に体当たりをし、そのダメージを自分に向けさせたのだ。
今回の狩りで、大輝の方がよりモンスターからダメージを受けている。
まだHPに余裕がある康介が受けた方が大事にならない。
ゴブリンを攻撃するより、大輝を助けた方がいい気がしたのだ。
「ゴブ!」
大輝を吹き飛ばした結果、ゴブリンナイフは康介の脇腹に突き刺さった。
ズン!っと体に響く音。
自分の肉体がナイフで貫かれてるのがわかる。
「ぐぉあ!」
ゴブリンの顔面を蹴り飛ばし距離を取らせる。
だがその行為で精一杯になってしまった康介が、そのまま地面に膝をついた。
(いてぇ……声も……でねぇ……)
膝をついてからすぐ頭が地面についた。
痛みは想像以上で、本当に貫かれたかのような痛みだ。
手で傷跡を抑えてはいるが、血が流れ出しているのもわかる。
「康介くん!!い、今手当します!!」
康介が倒れたのを見た玲奈が飛び出してきた。
咄嗟の行動。
その隙だらけの脇をゴブリンが狙い打とうとナイフを構えた。
「玲奈!!勝手に出るんじゃねぇぜ!」
大輝が康介に吹っ飛ばされた後すぐに体制を立て直し、ゴブリンの横から攻撃をする。
しかし踏み込みが甘く、傷が浅い。
「大輝、下がって!ファイアーボール!!」
遥が呪文名を口にすると、小さい炎の玉が生成され、ゴブリンに見事ヒットする。
それが致命傷となったのか、ゴブリンはそのまま燃え尽き霧散した。
「ヒール!」
玲奈が呪文を口にすると、杖から淡い光が溢れてきた。
それが康介を包み込み、傷が塞がっていく。
「あ、みなさんありがとうございます。なんかすみません…」
「いいってことだぜ!」
「康介さんが無事でよかった……」
「うちも魔法打てたし楽しかったよ!」
(……この痛みは本物ではないのか?)
みんながわいわいしているが、やはり先程の痛みが気になる。
もしゲームなら、この痛みは軽減されてもおかしくない。
リアル志向なのかもしれないが、言葉が出なくなるほどの痛みを与えるだろうか。
「ねぇみんな……街に帰ったら少し話があるんだ」
康介はこの事をしっかりと話さなければならない。
そう思い、街についてからこの事を議題にあげようと誓った。
◇
「はぁ?この世界が現実とリンクしてる!?」
「そんな大きな声出さないでよ」
康介たちはクエストを終わらせ、またいつもの酒場に来た。
ここは康介たち以外にもプレイヤーがいるのか、情報量が多い。
さらに飯も美味いので、ここが拠点となっていた。
「だってよー、そんな事言われても全く思えねぇぜ」
先程の大声は大輝だ。
現実とリンクしていると聞いてもいきなりは信じられないだろう。
「いやぁ、あの痛みは本物だよ。絶対に気をつけた方がいい」
「康介さんが言うんですから……ね?気をつけませんか?」
玲奈がフォローしてくれている。
むしろあの痛みがゲームだけど証明されることの方が嬉しいが……
「わかった。うちは康介を信じるよ。だから大輝もな?」
「おーけー!わかったよ」
なんとか信じてくれることになったらしい。
この事態については不安が多い。
世界初のMMOなのだから、何か不具合があってもおかしくない。
それゆえもっと情報が欲しい。
「今日も夜になったら戻るでしょ?そしたら他のプレイヤーにも聞いてみたいんだよね」
「そうだな。それがいいかもしれない」
他のプレイヤーでも怪我をしている人はいるだろう。
それなら康介と同じ思いをした人がいるかもしれない。
それからその日はすぐにログアウトして情報を集めるために広間に集合した。
しかし、そんな日に限って人はあまり来ない。
なんとか捕まえた人に話を聞いてもはぐらかせるだけだ。
何か勘ぐられているのだろうか。
「まぁ延長出来るとはいえ、この情報は不安にさせる方が強いからな。話は聞いてくれないかもしれない」
大輝の言う通り、この治験は賞金がかかっている。
もしかしたら康介の話を、不安にさせて攻略を遅くさせる罠だと思われたのかもしれない。
「うーん、そんなことないんだけどなぁ……」
疑心暗鬼になれば話は聞いてもらえない。
それならもう少し様子を見てからまた話してもいいだろう。
まだまだゲームは始まったばかりなのだ。
康介たちも、その日はそれでお終いにしてまた明日に備えた。
明日からはもっと安全に動きたい。
連携もだが、装備などの見直しも必要だろう。
今後はもっと鋭い攻撃や、魔法で燃やされたり凍らされたりする可能性もある。
慣れるのは難しくても、軽減させるための何かはあるはずだ。
考えれば考えるほどやりたいことが増えてくる。
こんな面白いゲーム……いや人生は初めてだ。
そう思いながら康介は眠りについたのであった。
◇
それからも毎日狩りとクエストをこなす日々だった。
全員が皮の鎧などを装備出来るぐらいにはお金を稼ぐことも出来た。
そろそろ初心者の街を出てもいい頃かもしれない。
酒場でそんな話をしていると、1人の老人が話しかけて来た。
「お主らはここを出て行くのか?」
「え?あ、はい」
急に話しかけられたものだから康介が少し驚きながら返事をする。
ここのAIは盗み聞きまでするのだろうか。
「それならここから森を抜けて行くがいい。嘆きの森と呼ばれておるが、お主達のレベルなら突破も可能だろう」
(強制イベントか?)
康介が黙って聞いていると、大輝が口を開いた。
「じぃちゃんありがとな。次の街はどんな街だい?」
「森を抜ければ王都じゃ。お主達の希望する『銀翼の騎士団』もそこで入隊が出来る」
銀翼の騎士団……このゲームの騎士団の名前か。
そこに入隊するのが次のクエストらしい。
早速行きたいが、まだまだ森の情報も少なく危険だ。
まずは情報集めが先決だろう。
「お爺さん、親切にありがとうございます」
「なぁに。最近は地力もつけずに走る若者が多いからのぉ。少しばかりのお節介じゃよ」
玲奈が丁寧にお礼を言うと、老人は手をひらひらさせながら照れ始めた。
本物の人間と間違えるほどに精巧だ。
康介達もお礼を言うと早速街に出て情報集めに入った。
「よーし、んじゃ俺と康介でこっちをあたる。遥と玲奈はそっち方面を頼むわ」
「おっけー!んじゃまた1時間後にここで!」
二手に別れて情報を集めに行く。
康介は元々NPCには誰でも話しかけるタイプだ。
MMOではあまり重要ではないかもしれないが、意外なところに意外な情報が落ちていることも多い。
そしてこのゲームでは、クエストがある人物の頭上には【!】が付いている。
プレイヤーに何か伝えたい人物の頭上には【?】が付いている。
康介は空き時間を利用して【?】は全部潰したはずだったが、今は軽く4人以上に付いているのが見えた。
先ほどに老人がクエストのフラグだったのだろうか。
「大輝、結構マーク出てる人多いね」
「あぁ、まるで俺たちを待っているかのようだな」
2人でその情報を逃さぬよう一人一人慎重に聞いて行く。
1時間もしないうちに全員に話を聴き終わったので酒場へと向かった。
「そっちはどうだった?」
遥が見るからにうずうずしている。
自分達の集めた情報を話したくて仕方ないのだろう。
「俺たちはかなり有意義だったぜ?」
大輝もニヤニヤしながらそれに答えた。
康介と玲奈はそんな2人を見ながら苦笑いを浮かべている。
「よーし、どっちが有力か勝負だな!」
「俺に勝とうなんて10年早いぜ?」
2人がお互いに話をして行く。
面白いことに、話の内容は全く同じだった。
初心者救済用に、同じことを話すNPCを置いてあるのだろうか。
その話でわかったことは全部で六つ
①嘆きの森に生息するモンスターはこちらに襲いかかってくる。
②平均レベルは4-5。
③毒を吐いてくる敵がいる。
④一番大きい道を行くだけだが、途中の分かれ道には宝箱があるかもしれない。
⑤森を守るボスがいることがある。
⑥ボスのレベルは康介達より高い。
これなら何度か森とこの街を往復してレベル上げにしてもいいだろう。
そして毒が一番怖い。
歩くだけでダメージとか、具合が悪くなって動けなくなったりしたら格好の餌食になってしまう。
康介達はもう少しレベルを上げることで同意した。
やはり康介の痛みが気になるし、万が一ボスに遭遇して全滅などはしたくない。
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