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第2話:「パーティ加入」
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酒場の位置はすぐにわかった。
看板にデカデカとビールの絵。
さらに中から賑わっているような声が聞こえてきたのだ。
(おし、誰かいますように……!)
祈るようにドアを開けるとそこには何人かの人影があった。
ほとんどの人が酒を煽りながら雑談をしている。
それ以外にも酒場で座ってるだけの人達もいた。
「あんたも金がない騎士団見習いかい?」
ドアを開け中に入ると恰幅のいいおばちゃんから声をかけられた。
どうやらこの酒場の店員らしい。
「えっと……はい」
「ならあっちのテーブルに行きな。あんたと同じ奴らがいるからね!」
康介が示された方を見ると男女が3人テーブルについていた。
そこまで歩いて行くと、康介に気がついたのか振り向いた。
「もしかしてあんたプレイヤーか?」
茶髪の短い男の子が康介を見ながら口を開いてきた。
茶髪の男の子も康介と同じ麻の服だ。
よく見れば一緒にいる女の子2人も同じ服を着ている。
「あ、あぁそうだよ」
今度は噛まずに言えた。
あくまでもゲームの世界なのにやはり緊張してしまう。
「やっぱりか!俺たちもそうなんだぜ!」
歳は康介と同じ18ぐらいだろうか。
まだ幼さの残る顔をしている。
「あぁすまんすまん。俺の名前は大輝だ」
大輝が立ち上がって握手を求めてきた。
康介もその手を握り返すと、本当に握手してるかのように感じる。
VR空間とはいえ、感触までしっかり再現されている。
「あとこの2人なんだがーー」
「ちゃんと自己紹介するから安心して」
ボーイッシュな女の子が立ち上がり康介を見た。
「うちは遙。今回の治験者だよ!よろしくね」
なかなか美形であり、かっこよさもある女の子だ。
隣に座っているのは黒髪ストレートヘアの女の子だ。
その子が康介をずっと見つめている。
「あっ!も、もしかして……」
「やっぱりですか!?嬉しい!また会えましたね!」
黒髪の女の子はメガネがなかった。
むしろ無い方が可愛い。
バスで見せた笑顔を康介に向けている。
「あっ、あの……」
「あ、ごめんなさい。私は玲奈です。よろしくね、康介さん」
康介がまだ自己紹介していないのに名前で呼ばれ驚いてしまった。
大輝と遙が康介の頭の上を見ている……
そうだ、名前が表示されているのだ。
「あっ俺は康介です。よろしくお願いします」
深々とお辞儀をすると全員にこやかな顔で康介を迎えてくれた。
その時、康介の目の前にウィンドウが勝手に開かれる。
目を丸くしてその文字を読むと、パーティの誘いと書いてあった。
「あの、これって……?」
「あぁ折角だからな!一緒にやろうぜ!」
康介もその誘いを承諾しパーティが結成された。
MMOをやるならパーティ程効率的なものはない。
ソロではどうしても限界を迎えてしまうからだ。
その後も酒場では料理を出してもらい一日中雑談に使ってしまった。
一番驚いたのは、康介とみんなは一度会ったことがあることだ。
以前やっていたMMOで一緒のクランに入っており、その時の名前で盛り上がった。
「まさか康介も『EoF』いたのかよー」
「さらに同じクランのクラマスだなんて思わないよね!」
大輝と遥が嬉しそうに話している。
『EoF』とはVRゲームの1つだ。
そのゲームで康介は『KSK』と名乗っていた。
大輝達も別の名前で稼働しており、一緒のクランで活動していたのだ。
「クラマス急に消えたんだもん。あれは驚きましたよー」
「ははは。ごめん次のゲームしたくなっちゃってさ」
「あの後みんなを纏めるの大変だったんですからねー?」
玲奈が頬を膨らましながら康介を見ている。
その可愛らしさにたじたじになってしまう康介であった。
「まぁこれも何かの縁だな!……玲奈とも相性よさそうだし、康介はこれから『飽きた』禁止な?」
「なななな何をいきなり!?いや俺がこんな面白いゲーム飽きるはずが……」
遥がからかうように康介をニヤニヤ見ている。
康介は自分でも顔が赤くなっているのをわかってしまった。
「と、とにかく今日はどうしますか?帰るか狩りに行くか!」
話に夢中になっていると、外はもう暗くなっていた。
時刻は夜を迎えているのだろう。
「そろそろ一度現実に戻りませんか?」
玲奈がみんなに発言した。
何もしていないとはいえ、これはゲームであり治験でもある。
初日から長居して、何か影響があって入れなくなるなどあれば困ってしまう。
「んー、そうだな!一回戻ろっか」
大輝が発言すると、同意するように全員で頷き席から立ち上がった。
しかし、ここでの支払いをしていない。
いくらゲームとはいえ、代金を払わずに出るのはいささか身が引ける。
「あの、ここの支払いは……」
康介が慌てたように声を上げると、いつの間にか先程の店員が近くに来ていた。
「あーどうせあんたらお金持ってないんだろ?出世払いでいいよ!その代わりあたしのクエストを今度受けてもらうからね?」
妙にウィンク慣れしているおばちゃんだ。
康介含め全員でお礼を言うとおばちゃんが嬉しそうに笑った。
しばらくはここの酒場が主要拠点になりそうだ。
ゲームからログアウトするにはどうすればいいのだろうか。
先ほどの教官からも教わっていないのだが、大輝達はぐんぐん歩いている。
まるでその場所を知っているかのようなーー
「ほら、ここだよ」
大輝が指差したのは街の中の公園だ。
その中心部に大きいクリスタルが輝いている。
康介はその美しさに一瞬足が止まってしまった。
「康介、チュートリアルは読んだか?」
「え?そんなんあるの?」
大輝が不思議そうな顔をしている康介に話しかけてきた。
ステータス画面の右端に、チュートリアル説明があるボタンが存在しているようだ。
「それね、玲奈がわからなくてまごまごしてたらフルフェィスのおっちゃんが教えてくれたんだよ」
「あ!遥ちゃん言わないでよ!」
まごまごしている玲奈はさぞ可愛いのだろう。
その姿を想像してしまった康介が慌てて首を振った。
玲奈が何かを察して康介を睨んでいる……可愛い。
大輝もその姿に笑いながらさらにせつめいをしてくれた。
チュートリアルには街の地図の見方、ログアウトする方法、スキルの発動方法など基礎的なものがあるらしい。
玲奈が教えてもらってから、あの酒場でずっと確認していたそうだ。
「まーまー、とりあえずこっから出たらあの白い広間に集合ね?」
遥が歩きながら康介達に話しかけた。
そのままクリスタルに触れると目を瞑る。
「セーブ・ログアウト」
目に優しくない強い光が一瞬走ったかと思えば、次の瞬間には消えていた。
先程まで確かにいた遥もいないのだ。
「おー、これはすげーや!次俺な!」
そう言って大輝が遥と同じように呪文を唱えるとまた消えた。
無事にあの建物へと戻っているのだろうか。
「康介くん……また後でね?」
玲奈がにっこり笑顔で康介に話しかけてきた。
康介も笑顔で頷き返すと、玲奈も光に包まれていなくなった。
「やー、本当に凄いぞ!応募してよかったー!!」
康介が誰かに話すわけでもなく呟いた。
みんなと同じようにクリスタルに触れ目を瞑る。
「セーブ・ログアウト」
強い光が康介を襲い、そこで意識が途絶えた。
◇
康介が目を開けるとあの白い部屋にいた。
右手、左手と体をゆっくり動かしてみるが支障はない。
目の前には『Save Completion』と書かれている。
確かに現実世界へと戻ってきたのだ。
被っていた装置を外し、ベットから降りる。
両手を上にあげてゆっくり伸びると、体の軋みが聞こえてきた。
しかし疲れなどは感じない。
ナノマシンの影響だろうか。
「さてと、みんなに会いに広間へ行きますか!」
康介は衣服を少し直したのち、部屋に鍵をかけて建物の広間へと向かった。
康介たちが戻ってくると、広間にはすでに先客がいた。
興奮気味に戦闘時を話しているらしい。
すでに狩場に出ている人もいるのか。
広間の端の席に4人で座り、先ほどの世界について話す。
やはりAIの賢さには全員が驚いていた。
そして今後の戦闘についてだ。
まずはレベル上げが必須だろう。
せっかくのパーティなら連携も確認したいし、何より賞金を持って帰りたい。
治験期間が1年以上伸ばせるなら、これを狙わない理由はない。
康介が3人に家族のことやいつまで参加してるのかを聞いてみた。
驚くことに3人とも康介と同じで両親はいないらしい。
元々施設で育っていたらしく、施設を出た後は3人でルームシェアをしていたそうだ。
「まぁこの治験のために家は解約してきたけどなー」
さすがに1年もの間、家賃を払い続けるのは勿体ない。
賞金さえあれば独立も可能だし、お世話になった施設に寄付もできる。
得意なゲームでお金が稼げるならと3人とも応募したそうだ。
「この会社、前にも募集しててさー。ゲームクリアで報酬が出るとか噂が流れてたんだよね」
遥が最初にネットで見つけた時はまだゲームに自信はなかった。
しかし今は別だ。
『EoF』で康介達とサーバー1位になった実績もある。
「私も!みんなと一緒にいたかったし……」
康介が記憶している限り、大輝は壁役のタンクだった。
遥は広範囲殲滅を得意とするウィザード、玲奈はパーティの要でもあるヒーラー。
康介に劣らず勝らず優秀なプレイヤーだった。
そんな話で盛り上がっていると、建物内に『ピンポンパンポーン』とチャイムが鳴り響いた。
全員で音が鳴ったスピーカーを見る。
「みなさんに残念なお知らせです。『森幹人』さんが戦闘に敗北されたので今回の治験から外れてしまいました。くれぐれも自分の強さを見誤らないよう気をつけてください」
あの白衣を来ていた男の声だ。
やや感情がなさそうに聞こえるが気のせいだろう。
周りの人たちもざわざわしている。
中には死ぬ瞬間を見た人もいるのだろう。
やはり戦闘で死亡すると強制的に排除扱いらしい。
一度だけの命は人生と変わらない。
MMOでレベルを上げるのに、強い狩場に行って1匹ずつ倒したこともある。
だがこれはほぼ現実と同じ。
それなら無理をしてはいけないのだ。
戦闘知識に関しては今までがあるからだいぶ楽に構えられる。
しかも今回はパーティが最初からある。
同じクランでやったことのある経験から、連携も練習すれば上手く行くだろう。
「とりあえず今日は寝てまた明日な」
大輝が解散を告げるとぞろぞろと部屋を出て行く。
男性は右の棟に向かい、女性は反対だ。
康介も自分の部屋に着くと大きく息を吐き出した。
(明日も楽しみだなぁ。とりあえずレベル上げを頑張ろう)
仲間がいるゲームは1人よりも数百倍面白くなる。
明日の楽しみを胸に抱きながら、康介も眠りについた。
看板にデカデカとビールの絵。
さらに中から賑わっているような声が聞こえてきたのだ。
(おし、誰かいますように……!)
祈るようにドアを開けるとそこには何人かの人影があった。
ほとんどの人が酒を煽りながら雑談をしている。
それ以外にも酒場で座ってるだけの人達もいた。
「あんたも金がない騎士団見習いかい?」
ドアを開け中に入ると恰幅のいいおばちゃんから声をかけられた。
どうやらこの酒場の店員らしい。
「えっと……はい」
「ならあっちのテーブルに行きな。あんたと同じ奴らがいるからね!」
康介が示された方を見ると男女が3人テーブルについていた。
そこまで歩いて行くと、康介に気がついたのか振り向いた。
「もしかしてあんたプレイヤーか?」
茶髪の短い男の子が康介を見ながら口を開いてきた。
茶髪の男の子も康介と同じ麻の服だ。
よく見れば一緒にいる女の子2人も同じ服を着ている。
「あ、あぁそうだよ」
今度は噛まずに言えた。
あくまでもゲームの世界なのにやはり緊張してしまう。
「やっぱりか!俺たちもそうなんだぜ!」
歳は康介と同じ18ぐらいだろうか。
まだ幼さの残る顔をしている。
「あぁすまんすまん。俺の名前は大輝だ」
大輝が立ち上がって握手を求めてきた。
康介もその手を握り返すと、本当に握手してるかのように感じる。
VR空間とはいえ、感触までしっかり再現されている。
「あとこの2人なんだがーー」
「ちゃんと自己紹介するから安心して」
ボーイッシュな女の子が立ち上がり康介を見た。
「うちは遙。今回の治験者だよ!よろしくね」
なかなか美形であり、かっこよさもある女の子だ。
隣に座っているのは黒髪ストレートヘアの女の子だ。
その子が康介をずっと見つめている。
「あっ!も、もしかして……」
「やっぱりですか!?嬉しい!また会えましたね!」
黒髪の女の子はメガネがなかった。
むしろ無い方が可愛い。
バスで見せた笑顔を康介に向けている。
「あっ、あの……」
「あ、ごめんなさい。私は玲奈です。よろしくね、康介さん」
康介がまだ自己紹介していないのに名前で呼ばれ驚いてしまった。
大輝と遙が康介の頭の上を見ている……
そうだ、名前が表示されているのだ。
「あっ俺は康介です。よろしくお願いします」
深々とお辞儀をすると全員にこやかな顔で康介を迎えてくれた。
その時、康介の目の前にウィンドウが勝手に開かれる。
目を丸くしてその文字を読むと、パーティの誘いと書いてあった。
「あの、これって……?」
「あぁ折角だからな!一緒にやろうぜ!」
康介もその誘いを承諾しパーティが結成された。
MMOをやるならパーティ程効率的なものはない。
ソロではどうしても限界を迎えてしまうからだ。
その後も酒場では料理を出してもらい一日中雑談に使ってしまった。
一番驚いたのは、康介とみんなは一度会ったことがあることだ。
以前やっていたMMOで一緒のクランに入っており、その時の名前で盛り上がった。
「まさか康介も『EoF』いたのかよー」
「さらに同じクランのクラマスだなんて思わないよね!」
大輝と遥が嬉しそうに話している。
『EoF』とはVRゲームの1つだ。
そのゲームで康介は『KSK』と名乗っていた。
大輝達も別の名前で稼働しており、一緒のクランで活動していたのだ。
「クラマス急に消えたんだもん。あれは驚きましたよー」
「ははは。ごめん次のゲームしたくなっちゃってさ」
「あの後みんなを纏めるの大変だったんですからねー?」
玲奈が頬を膨らましながら康介を見ている。
その可愛らしさにたじたじになってしまう康介であった。
「まぁこれも何かの縁だな!……玲奈とも相性よさそうだし、康介はこれから『飽きた』禁止な?」
「なななな何をいきなり!?いや俺がこんな面白いゲーム飽きるはずが……」
遥がからかうように康介をニヤニヤ見ている。
康介は自分でも顔が赤くなっているのをわかってしまった。
「と、とにかく今日はどうしますか?帰るか狩りに行くか!」
話に夢中になっていると、外はもう暗くなっていた。
時刻は夜を迎えているのだろう。
「そろそろ一度現実に戻りませんか?」
玲奈がみんなに発言した。
何もしていないとはいえ、これはゲームであり治験でもある。
初日から長居して、何か影響があって入れなくなるなどあれば困ってしまう。
「んー、そうだな!一回戻ろっか」
大輝が発言すると、同意するように全員で頷き席から立ち上がった。
しかし、ここでの支払いをしていない。
いくらゲームとはいえ、代金を払わずに出るのはいささか身が引ける。
「あの、ここの支払いは……」
康介が慌てたように声を上げると、いつの間にか先程の店員が近くに来ていた。
「あーどうせあんたらお金持ってないんだろ?出世払いでいいよ!その代わりあたしのクエストを今度受けてもらうからね?」
妙にウィンク慣れしているおばちゃんだ。
康介含め全員でお礼を言うとおばちゃんが嬉しそうに笑った。
しばらくはここの酒場が主要拠点になりそうだ。
ゲームからログアウトするにはどうすればいいのだろうか。
先ほどの教官からも教わっていないのだが、大輝達はぐんぐん歩いている。
まるでその場所を知っているかのようなーー
「ほら、ここだよ」
大輝が指差したのは街の中の公園だ。
その中心部に大きいクリスタルが輝いている。
康介はその美しさに一瞬足が止まってしまった。
「康介、チュートリアルは読んだか?」
「え?そんなんあるの?」
大輝が不思議そうな顔をしている康介に話しかけてきた。
ステータス画面の右端に、チュートリアル説明があるボタンが存在しているようだ。
「それね、玲奈がわからなくてまごまごしてたらフルフェィスのおっちゃんが教えてくれたんだよ」
「あ!遥ちゃん言わないでよ!」
まごまごしている玲奈はさぞ可愛いのだろう。
その姿を想像してしまった康介が慌てて首を振った。
玲奈が何かを察して康介を睨んでいる……可愛い。
大輝もその姿に笑いながらさらにせつめいをしてくれた。
チュートリアルには街の地図の見方、ログアウトする方法、スキルの発動方法など基礎的なものがあるらしい。
玲奈が教えてもらってから、あの酒場でずっと確認していたそうだ。
「まーまー、とりあえずこっから出たらあの白い広間に集合ね?」
遥が歩きながら康介達に話しかけた。
そのままクリスタルに触れると目を瞑る。
「セーブ・ログアウト」
目に優しくない強い光が一瞬走ったかと思えば、次の瞬間には消えていた。
先程まで確かにいた遥もいないのだ。
「おー、これはすげーや!次俺な!」
そう言って大輝が遥と同じように呪文を唱えるとまた消えた。
無事にあの建物へと戻っているのだろうか。
「康介くん……また後でね?」
玲奈がにっこり笑顔で康介に話しかけてきた。
康介も笑顔で頷き返すと、玲奈も光に包まれていなくなった。
「やー、本当に凄いぞ!応募してよかったー!!」
康介が誰かに話すわけでもなく呟いた。
みんなと同じようにクリスタルに触れ目を瞑る。
「セーブ・ログアウト」
強い光が康介を襲い、そこで意識が途絶えた。
◇
康介が目を開けるとあの白い部屋にいた。
右手、左手と体をゆっくり動かしてみるが支障はない。
目の前には『Save Completion』と書かれている。
確かに現実世界へと戻ってきたのだ。
被っていた装置を外し、ベットから降りる。
両手を上にあげてゆっくり伸びると、体の軋みが聞こえてきた。
しかし疲れなどは感じない。
ナノマシンの影響だろうか。
「さてと、みんなに会いに広間へ行きますか!」
康介は衣服を少し直したのち、部屋に鍵をかけて建物の広間へと向かった。
康介たちが戻ってくると、広間にはすでに先客がいた。
興奮気味に戦闘時を話しているらしい。
すでに狩場に出ている人もいるのか。
広間の端の席に4人で座り、先ほどの世界について話す。
やはりAIの賢さには全員が驚いていた。
そして今後の戦闘についてだ。
まずはレベル上げが必須だろう。
せっかくのパーティなら連携も確認したいし、何より賞金を持って帰りたい。
治験期間が1年以上伸ばせるなら、これを狙わない理由はない。
康介が3人に家族のことやいつまで参加してるのかを聞いてみた。
驚くことに3人とも康介と同じで両親はいないらしい。
元々施設で育っていたらしく、施設を出た後は3人でルームシェアをしていたそうだ。
「まぁこの治験のために家は解約してきたけどなー」
さすがに1年もの間、家賃を払い続けるのは勿体ない。
賞金さえあれば独立も可能だし、お世話になった施設に寄付もできる。
得意なゲームでお金が稼げるならと3人とも応募したそうだ。
「この会社、前にも募集しててさー。ゲームクリアで報酬が出るとか噂が流れてたんだよね」
遥が最初にネットで見つけた時はまだゲームに自信はなかった。
しかし今は別だ。
『EoF』で康介達とサーバー1位になった実績もある。
「私も!みんなと一緒にいたかったし……」
康介が記憶している限り、大輝は壁役のタンクだった。
遥は広範囲殲滅を得意とするウィザード、玲奈はパーティの要でもあるヒーラー。
康介に劣らず勝らず優秀なプレイヤーだった。
そんな話で盛り上がっていると、建物内に『ピンポンパンポーン』とチャイムが鳴り響いた。
全員で音が鳴ったスピーカーを見る。
「みなさんに残念なお知らせです。『森幹人』さんが戦闘に敗北されたので今回の治験から外れてしまいました。くれぐれも自分の強さを見誤らないよう気をつけてください」
あの白衣を来ていた男の声だ。
やや感情がなさそうに聞こえるが気のせいだろう。
周りの人たちもざわざわしている。
中には死ぬ瞬間を見た人もいるのだろう。
やはり戦闘で死亡すると強制的に排除扱いらしい。
一度だけの命は人生と変わらない。
MMOでレベルを上げるのに、強い狩場に行って1匹ずつ倒したこともある。
だがこれはほぼ現実と同じ。
それなら無理をしてはいけないのだ。
戦闘知識に関しては今までがあるからだいぶ楽に構えられる。
しかも今回はパーティが最初からある。
同じクランでやったことのある経験から、連携も練習すれば上手く行くだろう。
「とりあえず今日は寝てまた明日な」
大輝が解散を告げるとぞろぞろと部屋を出て行く。
男性は右の棟に向かい、女性は反対だ。
康介も自分の部屋に着くと大きく息を吐き出した。
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