5 / 11
妖怪王④
しおりを挟む
「さてと、『実行部署』に見せる計画はこれでいいですか…」
吉沢職員は手元にある計画書をもち、『実行部署』へと駆けつけた。
「斎藤さん、例の件です」
「おうよ。ありがとさん」
実行部署長、斎藤は吉沢職員と同期である。
「それでは、ご武運を」
「はは、なあに、大丈夫さ」
そう言うと斎藤職員は資料に目を向け、吉沢職員は署長室から出て行った。
「さてと、アイツにも連絡しにゃああかん…」
◇
「…ん?なんだ…」
花川職員は、電話の鳴る音で目が覚めた。
「ったく、なんなんだ」
少し苛つきながら電話をうけとる。
「はい、こちら花川」
「おう、斎藤だ」
「…っ、斎藤さん!?」
「あぁ、吉沢が計画書をもってきてくれた。ここからは実行部署の力だぜ」
そう言って、斎藤職員は花川職員を署長室へ呼んだ。
「さてと、じゃあまずこの資料を見てくれ」
その資料には人物名とその人物の情報が書かれていた。
─────────
河童の姫(元)
正式名 幸子
河童の元姫であり、元国王の娘。その力は計り知れず天災を起こすほど。
だが人間の男に恋愛感情を抱く。
その原因は人間に化けて街を出歩いていたせいだと思われる。その際にとある男性と恋仲になる。
また河童同士でしか結婚できないという掟に反感を抱いている。相手の恋人にも自分が河童であることを打ち明けている模様。
行きつけの店は《ラ・メーン》
────────
もう一人は…
────────
会社員
福田 永戸。
ただの会社員であったが、河童の元姫である幸子に恋をし、恋仲になる。
また彼女が河童であることを受け入れるなど、異種間の違いを容認する。
幸子と同じく、元王に反感をもつ
───────
「あと、これ写真」
「写真…?」
それは、福田永戸という男が、幸子だけでなく、全く別の女と歩いている写真だった。
「こ、これは…」
花川職員は、その浮気写真と思しきものを見る。
「なるほど、妖怪王が他種族交際を認めない理由が分かりますね…」
「…そうかなぁ…」
「…?」
斎藤職員のその言い方が気になったが、そんなことは些細なことだ。
「計画はなんて?」
「えーと、まずは、人間状態の幸子を、追う。そして一人になったところでこの写真を見せる。それで…いい。だって」
そりゃあそうだろう。この写真を突き出し、浮気写真です!とでも言えば誰だって信じる。
「…それじゃあ決行しますか…?」
◇
雨が降っていた。
その日は雨が降っていた。
私はその日、運命の人と出会った。
あ、この人だ。この人は何て言うか、良い。温かい。
そうして私は永戸さんの恋人となった。
幸せな日々だった。
それはそれは幸せな日々だった。
でも、それは崩れた。
何日か経ったある日、スーツ姿の黒い男が貴女の彼氏は不倫をしていますよ、と言って来たのだ。
そんなわけはない。私は信じ切っていた。
怒り狂った私はその男を捕まえようとしたが、逃げられた。
しかし、どうだろうか。
私は雨に打たれていた。
さっき目の前で見せられたら写真と、今女の人と話している彼を見ると、それは信じることが出来るかも知れなかった。
最近はデートだってすぐに別れたがるしね。
◇
「うわ、雨だ」
花川職員は嫌な顔をした。
「別にこれくらい平気だろ」
斎藤職員は別に何とでもなかった。
「まぁいい。俺は非実体になって見守ってやるから、いいか、花川、巧くやれよ。」
「は、はぁ」
そう言うと斎藤職員はすぅぅと消えていった。
「上手くやれ?」
とりあえず、花川職員は人間界へ出た。
もちろん花川職員も変化が出来る。
街中華やかだった。傘の色が色とりどりだったからだ。
そして、人間の姿となり、幸子と永戸を見つける。
二人は予想通り、行きつけの店である、《ラ・メーン》に入った。
出て来るのを待つ。
「…!」
出て来た。
そして、何かを少し話し、幸子が悲しそうな顔をしたあと、二人が別れた。
(今だっ)
「あのー、すいません…」
「…はい?」
「わたくし、とある調査団のものなのですが、幸子さん、で間違いはありませんね?」
「は、はぁ…」
「こちらの写真をご覧になってください。わかりますか…?」
「…え?」
「これは、あなたの彼氏様の決定的な浮気の瞬間でございます」
「…うそ…」
幸子はもっていた傘を落とす。
「え、ぇぇぇ…」
───!
丁度いい、と花川職員は思った。
「…あれをご覧になってください」
「…?…!」
それは、永戸が他の女とどこかへ行く瞬間だった。
「…そんな、いや…」
花川職員は、ふぅ、良くやった、と思っ────
「いやぁぁぁぁあ!!!」
「ううっ」
花川職員は耳を押さえる。
なんていう咆哮だろうか。
河童の姿に戻っている。
「ユルサナイ、ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!」
だめだ!壊れている!
「っち、離れるか…」
──天狗の翼で飛び立とうとしたが、
ピュン、と幸子の口からレーザーのような水がとばされる。
「っは!?」
水が翼を貫通する。
「──────!?幸子さん!?」
そこに何故か永戸が来た。
「幸子さん!大丈夫ですか!?」
「…お前が、お前がうわきしてるんだろぅが!」
「…浮気…?」
「とぼけるな!さっきの女は──」
「さっきの女性は僕の知人ですよ」
「…え?」
花川職員は驚愕する。まぁ、それが事実なら、だが。
「…それが事実であるという証拠はどこにある!!」
「…じ、実は彼女は僕に協力してくれたんですね…」
協力…?
「渡したいものがあったんです。はい」
それは、黒い傘であった。
それは、日傘だった。
「これがあれば日中でも簡単に動けるでしょう?」
…この人間は、怖くないのか?
河童の姿をしたこいつが…
「あと、はい、これ花です…花束…どれにした方が喜ぶかなぁと、色々教えて貰って店をまわっていたんです…」
「え、永戸くん…」
だんだん人間の姿にもどっていく河童の幸子。
「…そして、もう一つ、大事な話があります」
大事な話───…!
永戸はポケットから黒い箱を取り出し、パカッと空けた。
「僕と結婚してください」
「…!はい」
「…っぇえええええええええ!!!」
花川職員は驚くことしかできなかった。
吉沢職員は手元にある計画書をもち、『実行部署』へと駆けつけた。
「斎藤さん、例の件です」
「おうよ。ありがとさん」
実行部署長、斎藤は吉沢職員と同期である。
「それでは、ご武運を」
「はは、なあに、大丈夫さ」
そう言うと斎藤職員は資料に目を向け、吉沢職員は署長室から出て行った。
「さてと、アイツにも連絡しにゃああかん…」
◇
「…ん?なんだ…」
花川職員は、電話の鳴る音で目が覚めた。
「ったく、なんなんだ」
少し苛つきながら電話をうけとる。
「はい、こちら花川」
「おう、斎藤だ」
「…っ、斎藤さん!?」
「あぁ、吉沢が計画書をもってきてくれた。ここからは実行部署の力だぜ」
そう言って、斎藤職員は花川職員を署長室へ呼んだ。
「さてと、じゃあまずこの資料を見てくれ」
その資料には人物名とその人物の情報が書かれていた。
─────────
河童の姫(元)
正式名 幸子
河童の元姫であり、元国王の娘。その力は計り知れず天災を起こすほど。
だが人間の男に恋愛感情を抱く。
その原因は人間に化けて街を出歩いていたせいだと思われる。その際にとある男性と恋仲になる。
また河童同士でしか結婚できないという掟に反感を抱いている。相手の恋人にも自分が河童であることを打ち明けている模様。
行きつけの店は《ラ・メーン》
────────
もう一人は…
────────
会社員
福田 永戸。
ただの会社員であったが、河童の元姫である幸子に恋をし、恋仲になる。
また彼女が河童であることを受け入れるなど、異種間の違いを容認する。
幸子と同じく、元王に反感をもつ
───────
「あと、これ写真」
「写真…?」
それは、福田永戸という男が、幸子だけでなく、全く別の女と歩いている写真だった。
「こ、これは…」
花川職員は、その浮気写真と思しきものを見る。
「なるほど、妖怪王が他種族交際を認めない理由が分かりますね…」
「…そうかなぁ…」
「…?」
斎藤職員のその言い方が気になったが、そんなことは些細なことだ。
「計画はなんて?」
「えーと、まずは、人間状態の幸子を、追う。そして一人になったところでこの写真を見せる。それで…いい。だって」
そりゃあそうだろう。この写真を突き出し、浮気写真です!とでも言えば誰だって信じる。
「…それじゃあ決行しますか…?」
◇
雨が降っていた。
その日は雨が降っていた。
私はその日、運命の人と出会った。
あ、この人だ。この人は何て言うか、良い。温かい。
そうして私は永戸さんの恋人となった。
幸せな日々だった。
それはそれは幸せな日々だった。
でも、それは崩れた。
何日か経ったある日、スーツ姿の黒い男が貴女の彼氏は不倫をしていますよ、と言って来たのだ。
そんなわけはない。私は信じ切っていた。
怒り狂った私はその男を捕まえようとしたが、逃げられた。
しかし、どうだろうか。
私は雨に打たれていた。
さっき目の前で見せられたら写真と、今女の人と話している彼を見ると、それは信じることが出来るかも知れなかった。
最近はデートだってすぐに別れたがるしね。
◇
「うわ、雨だ」
花川職員は嫌な顔をした。
「別にこれくらい平気だろ」
斎藤職員は別に何とでもなかった。
「まぁいい。俺は非実体になって見守ってやるから、いいか、花川、巧くやれよ。」
「は、はぁ」
そう言うと斎藤職員はすぅぅと消えていった。
「上手くやれ?」
とりあえず、花川職員は人間界へ出た。
もちろん花川職員も変化が出来る。
街中華やかだった。傘の色が色とりどりだったからだ。
そして、人間の姿となり、幸子と永戸を見つける。
二人は予想通り、行きつけの店である、《ラ・メーン》に入った。
出て来るのを待つ。
「…!」
出て来た。
そして、何かを少し話し、幸子が悲しそうな顔をしたあと、二人が別れた。
(今だっ)
「あのー、すいません…」
「…はい?」
「わたくし、とある調査団のものなのですが、幸子さん、で間違いはありませんね?」
「は、はぁ…」
「こちらの写真をご覧になってください。わかりますか…?」
「…え?」
「これは、あなたの彼氏様の決定的な浮気の瞬間でございます」
「…うそ…」
幸子はもっていた傘を落とす。
「え、ぇぇぇ…」
───!
丁度いい、と花川職員は思った。
「…あれをご覧になってください」
「…?…!」
それは、永戸が他の女とどこかへ行く瞬間だった。
「…そんな、いや…」
花川職員は、ふぅ、良くやった、と思っ────
「いやぁぁぁぁあ!!!」
「ううっ」
花川職員は耳を押さえる。
なんていう咆哮だろうか。
河童の姿に戻っている。
「ユルサナイ、ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!」
だめだ!壊れている!
「っち、離れるか…」
──天狗の翼で飛び立とうとしたが、
ピュン、と幸子の口からレーザーのような水がとばされる。
「っは!?」
水が翼を貫通する。
「──────!?幸子さん!?」
そこに何故か永戸が来た。
「幸子さん!大丈夫ですか!?」
「…お前が、お前がうわきしてるんだろぅが!」
「…浮気…?」
「とぼけるな!さっきの女は──」
「さっきの女性は僕の知人ですよ」
「…え?」
花川職員は驚愕する。まぁ、それが事実なら、だが。
「…それが事実であるという証拠はどこにある!!」
「…じ、実は彼女は僕に協力してくれたんですね…」
協力…?
「渡したいものがあったんです。はい」
それは、黒い傘であった。
それは、日傘だった。
「これがあれば日中でも簡単に動けるでしょう?」
…この人間は、怖くないのか?
河童の姿をしたこいつが…
「あと、はい、これ花です…花束…どれにした方が喜ぶかなぁと、色々教えて貰って店をまわっていたんです…」
「え、永戸くん…」
だんだん人間の姿にもどっていく河童の幸子。
「…そして、もう一つ、大事な話があります」
大事な話───…!
永戸はポケットから黒い箱を取り出し、パカッと空けた。
「僕と結婚してください」
「…!はい」
「…っぇえええええええええ!!!」
花川職員は驚くことしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる