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瀬戸
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瀬戸市
愛知県北東部、尾張地方。
面積約111㎢
総人口約120000人
人口密度約1080人/㎢
──────────────
「ラーラーラー♪」
「…どうした西尾…そんなに上機嫌になって…」
食堂で岡崎くんがもっさもっさと飯を食いながら俺に言った。
「いやね、これがさぁ、この前雑用係になったじゃん?」
「うん」
定食の味噌汁をズズズと吸う岡崎くん。
「でもさぁ、奇遇な事に女子でもいたんだよね、雑用係…」
「ほぉ」
「でさぁ、まぁメガネっ娘なんだけどさぁ、これがまた可愛くてね」
「おう」
…俺の話に興味あるのかな…?
「で、つい最近も話したんだけどさぁ、これあるよね…」
「あるって何が?」
「恋だよ、恋。あるよね!付き合えちゃったり?」
あるいは突きあえちゃったり?
「…いやお前、前まで愛西さんがどうとか言ってただろ…」
「まぁ、そうなんだけどね…だけどまぁ愛西さんとは友達じゃん?みたいな」
「ふーん。まぁ、どうでも良いけどね」
「岡崎くんは何か無いの?」
「特に…まぁ、ここで話すような事でもないし…」
確かに食堂で話すような事ではないか。
「あー、俺も腹減ってきたな…何か買おう…」
と、券売機を見て…
「うーん、ま、これでいいか」
その名も、イチゴミルクパフェSP。
初見時は驚いたが、今ではもうこれを買うのが当たり前になってきている。
というか昼飯パフェってどうなんだ?
イチゴミルクパフェSPを買う。
そして、イチゴミルクパフェSPを持ったまま席に着く。
「…よっこいせ」
「…またそれか…」
「あー。言ってるだろう。俺は極度のスイーツ好きだと」
まぁ、某ギャグ漫画の主人公とキャラは被るがね。
「しっかし、お前病気になるぞ…そんなの食ってると、大丈夫か?って昼飯スイーツってどうよ?」
「まぁまぁ。人には好き嫌いがあるじゃん?」
「ふーん。ま、良いけどね。俺は」
「…む?」
ちょっとその言い方は…
「…岡崎くん…」
「んぁ?」
「ちょっと、その言い方はないんじゃない?」
「…何がだよ…」
「まるで自分だけ良ければ良いみたいな物言いじゃないか!」
「っな!俺はお前のことを思ってだな…」
「なにぃ?本当に思ってくれてるのなら俺にパフェを食べさせないんじゃないか?」
「いや、それをお前が好き嫌いがどうとか言ったから…」
「何だとぉ!?」
「むむ…さっきから何か怒ってるが…しょうが無い…俺も言わせて貰う…俺も思ってた事が色々あったんだよ!」
「なんだよ!?」
「この前鼻毛出てた!」
「ぐおっ!岡崎くんはこの前大便に三時間こもっていた!」
「ごふっ!お前は先週、俺パソコン得意なんだよね~と言っておきながら実はそんなに上手じゃなかった!」
「あばふっ!岡崎くんは…」
二人でそんないがみ合いをしている中、一人の女性がすっと俺の横に座った。
「「──!?」」
あ、愛西さん…じゃないか…
「二人ともどうしたの?二人がいがみ合う姿なんて見たくないなー」
「う、それはすまん…」
岡崎くん…
「ほら、西尾くんも」
「あ、ごめんなさい…」
周りの人にも迷惑をかけたので、周りの人にも謝る。
「そうそう、それで良いんだよ」
「お母さんみたいだな」
「そう?全然そう言われないけど…」
「岡崎くん、ちょっと感性がおかしいんじゃない?愛西さんはどっちかというとお姉さんタイプだよ」
「それも言われた事ないけど…」
えぇ…
「…っていうか西尾くん、それパフェ?」
「あ、うん」
「そうなんだー、私もパフェ好きなんだよね…」
「へ、へー」
「ねぇ、西尾くん」
耳に、囁かれる。
「…食べさせてよ…パフェ」
「…え?」
何かなこれは。つまりどういうこと?
「はい、あーん」
愛西さんは、口を開けた。
「あ、あーん」
い、いれれば良いのだろう。パフェを掬いそして口の中に入れれば──
「なーんて、冗談よ…じゃあね」
「あ…」
そうして、愛西さんは去って行った。
「…何がしたかったんだろう…」
「…じー」
「なっ、何だよ岡崎くん…」
「いや、俺も今日から食べようかな~、と」
「何を?」
「イチゴミルクパフェSP」
「あっそう」
ぱく、と口の中にパフェを一口いれた。
味は冷たくて甘くて、苺の香りがした。
「あ、西尾…」
「ん?」
「さっき言ってた雑用係の話、それ瀬戸だろ?」
「え。何で分かったの?」
「…だって」
──だってあいつ、いじめられっ子だもん。
◇
放課後、人のいなくなった教室で愚痴をこぼす。
「ったく、今日も雑用か…」
「えー、私は別に嫌いじゃないけどな」
瀬戸さんはそう言った。
…瀬戸さんは、いじめられているのだろうか。
花の水やりは園芸部がやれば良いのに…
本の移動なんて、文芸部がやれば良い。
その他諸々、適材適所があるだろう…
まぁ、これが雑用か…
「ん」
俺は急に催した。
「どうしたの?」
「いや、ちょっとトイレ」
トイレに行った。
ジー…
ジョロロロロ…
「…ふぅ。しかし、大変だな、高校は」
想像の六十八倍は大変だぞ。
「…」
トイレを済まして、雑用へ戻る。
今日は、窓ガラスの掃除だったっけ。
「…ぅ~」
「…?」
これは、うなり声…
まさか、瀬戸さんが──ッッ!
ガラガラッ、と教室の扉を開け──
「うなぎ~うなぎ~うなぎは美味しいわ~♪ふんふんうなぎは美味しいよ~瀬戸市のうなぎは本当に美味しいよ~♪」
モップを持ちながら歌う瀬戸さんの姿があった。
「…」
「うなぎはおいし──あ………」
「………俺は何も見てません、そして何も聞いてません」
「…」
瀬戸さんは、顔から火が出る思いだったと思う。
「瀬戸さん…」
「…?」
うって変わって、真剣な表情。
「瀬戸さん、いじめられてる?」
──俺は、問いかけた。
そして、これからの戦いへ身を切り出した。
愛知県北東部、尾張地方。
面積約111㎢
総人口約120000人
人口密度約1080人/㎢
──────────────
「ラーラーラー♪」
「…どうした西尾…そんなに上機嫌になって…」
食堂で岡崎くんがもっさもっさと飯を食いながら俺に言った。
「いやね、これがさぁ、この前雑用係になったじゃん?」
「うん」
定食の味噌汁をズズズと吸う岡崎くん。
「でもさぁ、奇遇な事に女子でもいたんだよね、雑用係…」
「ほぉ」
「でさぁ、まぁメガネっ娘なんだけどさぁ、これがまた可愛くてね」
「おう」
…俺の話に興味あるのかな…?
「で、つい最近も話したんだけどさぁ、これあるよね…」
「あるって何が?」
「恋だよ、恋。あるよね!付き合えちゃったり?」
あるいは突きあえちゃったり?
「…いやお前、前まで愛西さんがどうとか言ってただろ…」
「まぁ、そうなんだけどね…だけどまぁ愛西さんとは友達じゃん?みたいな」
「ふーん。まぁ、どうでも良いけどね」
「岡崎くんは何か無いの?」
「特に…まぁ、ここで話すような事でもないし…」
確かに食堂で話すような事ではないか。
「あー、俺も腹減ってきたな…何か買おう…」
と、券売機を見て…
「うーん、ま、これでいいか」
その名も、イチゴミルクパフェSP。
初見時は驚いたが、今ではもうこれを買うのが当たり前になってきている。
というか昼飯パフェってどうなんだ?
イチゴミルクパフェSPを買う。
そして、イチゴミルクパフェSPを持ったまま席に着く。
「…よっこいせ」
「…またそれか…」
「あー。言ってるだろう。俺は極度のスイーツ好きだと」
まぁ、某ギャグ漫画の主人公とキャラは被るがね。
「しっかし、お前病気になるぞ…そんなの食ってると、大丈夫か?って昼飯スイーツってどうよ?」
「まぁまぁ。人には好き嫌いがあるじゃん?」
「ふーん。ま、良いけどね。俺は」
「…む?」
ちょっとその言い方は…
「…岡崎くん…」
「んぁ?」
「ちょっと、その言い方はないんじゃない?」
「…何がだよ…」
「まるで自分だけ良ければ良いみたいな物言いじゃないか!」
「っな!俺はお前のことを思ってだな…」
「なにぃ?本当に思ってくれてるのなら俺にパフェを食べさせないんじゃないか?」
「いや、それをお前が好き嫌いがどうとか言ったから…」
「何だとぉ!?」
「むむ…さっきから何か怒ってるが…しょうが無い…俺も言わせて貰う…俺も思ってた事が色々あったんだよ!」
「なんだよ!?」
「この前鼻毛出てた!」
「ぐおっ!岡崎くんはこの前大便に三時間こもっていた!」
「ごふっ!お前は先週、俺パソコン得意なんだよね~と言っておきながら実はそんなに上手じゃなかった!」
「あばふっ!岡崎くんは…」
二人でそんないがみ合いをしている中、一人の女性がすっと俺の横に座った。
「「──!?」」
あ、愛西さん…じゃないか…
「二人ともどうしたの?二人がいがみ合う姿なんて見たくないなー」
「う、それはすまん…」
岡崎くん…
「ほら、西尾くんも」
「あ、ごめんなさい…」
周りの人にも迷惑をかけたので、周りの人にも謝る。
「そうそう、それで良いんだよ」
「お母さんみたいだな」
「そう?全然そう言われないけど…」
「岡崎くん、ちょっと感性がおかしいんじゃない?愛西さんはどっちかというとお姉さんタイプだよ」
「それも言われた事ないけど…」
えぇ…
「…っていうか西尾くん、それパフェ?」
「あ、うん」
「そうなんだー、私もパフェ好きなんだよね…」
「へ、へー」
「ねぇ、西尾くん」
耳に、囁かれる。
「…食べさせてよ…パフェ」
「…え?」
何かなこれは。つまりどういうこと?
「はい、あーん」
愛西さんは、口を開けた。
「あ、あーん」
い、いれれば良いのだろう。パフェを掬いそして口の中に入れれば──
「なーんて、冗談よ…じゃあね」
「あ…」
そうして、愛西さんは去って行った。
「…何がしたかったんだろう…」
「…じー」
「なっ、何だよ岡崎くん…」
「いや、俺も今日から食べようかな~、と」
「何を?」
「イチゴミルクパフェSP」
「あっそう」
ぱく、と口の中にパフェを一口いれた。
味は冷たくて甘くて、苺の香りがした。
「あ、西尾…」
「ん?」
「さっき言ってた雑用係の話、それ瀬戸だろ?」
「え。何で分かったの?」
「…だって」
──だってあいつ、いじめられっ子だもん。
◇
放課後、人のいなくなった教室で愚痴をこぼす。
「ったく、今日も雑用か…」
「えー、私は別に嫌いじゃないけどな」
瀬戸さんはそう言った。
…瀬戸さんは、いじめられているのだろうか。
花の水やりは園芸部がやれば良いのに…
本の移動なんて、文芸部がやれば良い。
その他諸々、適材適所があるだろう…
まぁ、これが雑用か…
「ん」
俺は急に催した。
「どうしたの?」
「いや、ちょっとトイレ」
トイレに行った。
ジー…
ジョロロロロ…
「…ふぅ。しかし、大変だな、高校は」
想像の六十八倍は大変だぞ。
「…」
トイレを済まして、雑用へ戻る。
今日は、窓ガラスの掃除だったっけ。
「…ぅ~」
「…?」
これは、うなり声…
まさか、瀬戸さんが──ッッ!
ガラガラッ、と教室の扉を開け──
「うなぎ~うなぎ~うなぎは美味しいわ~♪ふんふんうなぎは美味しいよ~瀬戸市のうなぎは本当に美味しいよ~♪」
モップを持ちながら歌う瀬戸さんの姿があった。
「…」
「うなぎはおいし──あ………」
「………俺は何も見てません、そして何も聞いてません」
「…」
瀬戸さんは、顔から火が出る思いだったと思う。
「瀬戸さん…」
「…?」
うって変わって、真剣な表情。
「瀬戸さん、いじめられてる?」
──俺は、問いかけた。
そして、これからの戦いへ身を切り出した。
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