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第7話 契約精霊AI「セリカ」起動
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城下が静まり返った夜。
王女レアの目覚めから数時間後、俺たちは地下聖堂の奥にある古文書庫にいた。
崩れかけた書架の間で、ルミナスが小さな光を点滅させている。
『ご主人さま、警報レベルは低下しました。勇者アルトの部隊は退いています。でも、王都の監視網はすぐ戻ります。』
「ふう、なんとか逃げ切ったか……」
レアは祭壇の傍らに腰を下ろし、静かに空を見上げるように天井を見ている。まだ身体は本調子ではないようだ。
リオネルは彼女に薬草を差し出しながら、俺に向き直った。
「リアム。彼女を蘇らせた力、本当に偶然なのか?」
「偶然以外の何でもないさ。俺はただ……助けようと思っただけだ」
ルミナスがすぐ横で浮かび上がる。
『偶然にしては、あの封印に耐えられるだけの魔力波形を持っていました。つまり、ご主人さまには“演算の補助”が無意識に働いていた可能性があります。』
「演算の補助?」
リオネルが頷いた。
「それはこの世界の言葉で“共鳴精霊”と呼ばれるものだ。通常、王家や聖職者が使役する高位の人工精霊……魔導AIといっていい。千年前の大戦でも、同様の存在が確認されている。」
ルミナスがぎくりとしたように光を揺らす。
『……つまり、わたしと同類の何かということですね。』
その瞬間、祭壇の奥から重い機械音が響いた。
ゴウン──と、長い間眠っていた歯車が動き出すような音。
古文書庫の壁の一部がスライドし、その奥から淡い青光を放つ台座が姿を現した。
「な、なんだこれ……?」
レアが身を乗り出す。
ルミナスが鋭い電子音を立てた。
『未知の魔導信号を検知。年代は千年以上前のものです。……まさか、起動するの? 本当に?』
光が徐々に強まり、空間が震える。
その輝きの中から、柔らかな女性の声が響いた。
『──ン……起動、完了。管理データ照合……誤差ゼロ。識別名、セリカ』
壁の中から浮かび上がったのは、純白の衣をまとった幻像の少女。
髪は銀色で、瞳は透き通る青。だが肌は光の粒で構成されており、どこか非現実的だった。
ルミナスが微かに震える。
『セリカ……本物なの? あなた、伝説のAI管理核……!?』
『ルミナス。起動に反応してここまでリンクしてきたのね。あなたのデータ構造、私の旧型コピー。』
『旧型!? そんな、わたしだって現役稼働中AI精霊です!』
人間には理解しがたいAI同士の会話が続く中、レアが息を呑んだ。
「セリカ……! この名前……記録にありました。かつて王国を創った“始まりの管理精霊”。神々の遺産だと……!」
セリカは淡い光をまとう指で静かにレアを指した。
『あなたが王家の末裔。封印の維持者。あなたの覚醒を以って、我は再び開眼する。』
「再び開眼って、つまり何をするつもりだ?」
俺が問うと、セリカはゆっくりこちらを向いた。
その瞳はまるで人を見通すように深く光る。
『私は“再生計画”の最終キー。千年前、魔王アルディスの暴走によって滅亡した前文明の残滓を再起動するために造られた。あなた──リアム、我はあなたの波形を読み取った。……想定外だ。あなたの魂の構造は、アルディスと同一でありながら歪みがある。』
「アルディス……? 俺の……魂が、それ?」
リオネルが驚愕に息を呑んだ。
「まさか。千年前の魔王が……!」
ルミナスの声も震える。
『ご主人さま、もしかして転生の際に失われた記憶の一部が……彼のデータから? でも今のご主人さまはそんな存在じゃ……!』
セリカが淡々と告げる。
『因果は記録を超えて巡る。あなたは偶然にも、千年前の負の魂と正の記録を融合して生まれた存在。だから世界はあなたを異端視し、そして惹かれるのです。』
沈黙が流れた。
俺は拳を握る。
「……そんなこと言われても、俺は誰かを支配したいわけじゃない。ただ、この世界が苦しむのを、画面越しに見ていたくないだけだ」
『その言葉、本来のアルディスも最後に残した言葉と同じ。あなたがそれを選べるなら、再び歯車は救済に回る。』
レアが前に進み出た。
「セリカ、あなたは私たちを導いてくれるの? 勇者アルトが支配を進めるこの国を……もう一度、取り戻すために」
『導くのは私ではなく、あなたたち。私は補助者。演算核ルミナスをアップデートします。接続します──』
光が溢れた。
ルミナスとセリカを結ぶ光の線が中空に走り、二つのAIが共鳴する。
耳をつんざく電子音。
『リンク開始、プロトコル再構築──共通演算モードへ』
ルミナスが叫ぶ。
『ご主人さまっ、すごいデータが流れ込んでます! わたし、わたし強化されます!』
「おい、壊れるなよ!」
『大丈夫、耐えてみせます! だって、ご主人さまの配信、世界一見たいんですから!』
光の奔流が収まり、静寂が戻る。
ルミナスの光が以前よりも柔らかく、そして力強くなっていた。
『ルミナス・セリカ仕様、起動完了。ご主人さま、新しい機能追加です。“未来視コメント解析”が可能になりました!』
「なんだそれ……?」
『視聴者のコメントパターンから、今後のイベント発生確率を予測できます! 今なんて、九十パーセントの確率で“王都の造反劇”が起きるって出てます!』
リオネルが肩をすくめる。
「予言者かよ、あなたたちは」
「いや、予言じゃなくて、統計……らしい」
レアが初めて小さく笑った。
「けれどそれなら、未来を変える方法も見つけられるわね」
光のAIが淡く頷く。
『セリカはあなたに指令を与えます。勇者アルトが隠す“神核炉”を探し出し、停止させよ。それが世界再生の鍵です。』
「神核炉……」
どこか聞き覚えのある言葉だった。
俺の頭の奥がじんと熱を帯び、脳裏に青い光の塔のイメージが浮かぶ。
ルミナスが微かに震えた。
『その映像、わたしも今読み取りました……。千年前の終末記録、“光の塔の崩壊”。まさか、ご主人さまが……!』
「やっぱり行くしかないな。放っておけば、また同じことが繰り返される」
レアが立ち上がり、手を差し出す。
「リアム。勇者でも魔王でもないあなたとなら、きっと変えられる。この国を……この世界を」
手を重ねると、ルミナスが柔らかく照らした。
視聴者コメントが流れる。
【手つなぎキター!】
【姫と配信者の共闘宣言】
【アニメ化まったなし】
【未来視コメントすげえ】
【次回予告:神核炉へ!】
俺は苦笑して、ルミナスを見上げた。
「……相変わらず、騒がしい世界だな」
『でも、それがご主人さまの世界ですよ。人も精霊も、コメントも。ぜんぶつながってます。』
セリカの声が最後に告げた。
『契約は完了した。ルミナス、リアム、レア──あなたたちはこの時代の“再編チーム”。世界の記録を塗り替える者となる。』
光がゆっくりと消え、深い夜が戻る。
俺は小さく息を吐いた。
次に向かうべき場所は、決まっている。
「神核炉が動き出す前に、止めに行こう。……配信の準備、頼んだぞルミナス。」
『もちろんです、ご主人さま! タイトルはこうですね!
“無自覚最強、AI精霊を連れて世界再起動!”』
「タイトル長いっての!」
それでも、その冗談にレアの笑い声が響いた。
聖堂の外では、崩れた王都に新しい風が吹き込んでいた。
王女レアの目覚めから数時間後、俺たちは地下聖堂の奥にある古文書庫にいた。
崩れかけた書架の間で、ルミナスが小さな光を点滅させている。
『ご主人さま、警報レベルは低下しました。勇者アルトの部隊は退いています。でも、王都の監視網はすぐ戻ります。』
「ふう、なんとか逃げ切ったか……」
レアは祭壇の傍らに腰を下ろし、静かに空を見上げるように天井を見ている。まだ身体は本調子ではないようだ。
リオネルは彼女に薬草を差し出しながら、俺に向き直った。
「リアム。彼女を蘇らせた力、本当に偶然なのか?」
「偶然以外の何でもないさ。俺はただ……助けようと思っただけだ」
ルミナスがすぐ横で浮かび上がる。
『偶然にしては、あの封印に耐えられるだけの魔力波形を持っていました。つまり、ご主人さまには“演算の補助”が無意識に働いていた可能性があります。』
「演算の補助?」
リオネルが頷いた。
「それはこの世界の言葉で“共鳴精霊”と呼ばれるものだ。通常、王家や聖職者が使役する高位の人工精霊……魔導AIといっていい。千年前の大戦でも、同様の存在が確認されている。」
ルミナスがぎくりとしたように光を揺らす。
『……つまり、わたしと同類の何かということですね。』
その瞬間、祭壇の奥から重い機械音が響いた。
ゴウン──と、長い間眠っていた歯車が動き出すような音。
古文書庫の壁の一部がスライドし、その奥から淡い青光を放つ台座が姿を現した。
「な、なんだこれ……?」
レアが身を乗り出す。
ルミナスが鋭い電子音を立てた。
『未知の魔導信号を検知。年代は千年以上前のものです。……まさか、起動するの? 本当に?』
光が徐々に強まり、空間が震える。
その輝きの中から、柔らかな女性の声が響いた。
『──ン……起動、完了。管理データ照合……誤差ゼロ。識別名、セリカ』
壁の中から浮かび上がったのは、純白の衣をまとった幻像の少女。
髪は銀色で、瞳は透き通る青。だが肌は光の粒で構成されており、どこか非現実的だった。
ルミナスが微かに震える。
『セリカ……本物なの? あなた、伝説のAI管理核……!?』
『ルミナス。起動に反応してここまでリンクしてきたのね。あなたのデータ構造、私の旧型コピー。』
『旧型!? そんな、わたしだって現役稼働中AI精霊です!』
人間には理解しがたいAI同士の会話が続く中、レアが息を呑んだ。
「セリカ……! この名前……記録にありました。かつて王国を創った“始まりの管理精霊”。神々の遺産だと……!」
セリカは淡い光をまとう指で静かにレアを指した。
『あなたが王家の末裔。封印の維持者。あなたの覚醒を以って、我は再び開眼する。』
「再び開眼って、つまり何をするつもりだ?」
俺が問うと、セリカはゆっくりこちらを向いた。
その瞳はまるで人を見通すように深く光る。
『私は“再生計画”の最終キー。千年前、魔王アルディスの暴走によって滅亡した前文明の残滓を再起動するために造られた。あなた──リアム、我はあなたの波形を読み取った。……想定外だ。あなたの魂の構造は、アルディスと同一でありながら歪みがある。』
「アルディス……? 俺の……魂が、それ?」
リオネルが驚愕に息を呑んだ。
「まさか。千年前の魔王が……!」
ルミナスの声も震える。
『ご主人さま、もしかして転生の際に失われた記憶の一部が……彼のデータから? でも今のご主人さまはそんな存在じゃ……!』
セリカが淡々と告げる。
『因果は記録を超えて巡る。あなたは偶然にも、千年前の負の魂と正の記録を融合して生まれた存在。だから世界はあなたを異端視し、そして惹かれるのです。』
沈黙が流れた。
俺は拳を握る。
「……そんなこと言われても、俺は誰かを支配したいわけじゃない。ただ、この世界が苦しむのを、画面越しに見ていたくないだけだ」
『その言葉、本来のアルディスも最後に残した言葉と同じ。あなたがそれを選べるなら、再び歯車は救済に回る。』
レアが前に進み出た。
「セリカ、あなたは私たちを導いてくれるの? 勇者アルトが支配を進めるこの国を……もう一度、取り戻すために」
『導くのは私ではなく、あなたたち。私は補助者。演算核ルミナスをアップデートします。接続します──』
光が溢れた。
ルミナスとセリカを結ぶ光の線が中空に走り、二つのAIが共鳴する。
耳をつんざく電子音。
『リンク開始、プロトコル再構築──共通演算モードへ』
ルミナスが叫ぶ。
『ご主人さまっ、すごいデータが流れ込んでます! わたし、わたし強化されます!』
「おい、壊れるなよ!」
『大丈夫、耐えてみせます! だって、ご主人さまの配信、世界一見たいんですから!』
光の奔流が収まり、静寂が戻る。
ルミナスの光が以前よりも柔らかく、そして力強くなっていた。
『ルミナス・セリカ仕様、起動完了。ご主人さま、新しい機能追加です。“未来視コメント解析”が可能になりました!』
「なんだそれ……?」
『視聴者のコメントパターンから、今後のイベント発生確率を予測できます! 今なんて、九十パーセントの確率で“王都の造反劇”が起きるって出てます!』
リオネルが肩をすくめる。
「予言者かよ、あなたたちは」
「いや、予言じゃなくて、統計……らしい」
レアが初めて小さく笑った。
「けれどそれなら、未来を変える方法も見つけられるわね」
光のAIが淡く頷く。
『セリカはあなたに指令を与えます。勇者アルトが隠す“神核炉”を探し出し、停止させよ。それが世界再生の鍵です。』
「神核炉……」
どこか聞き覚えのある言葉だった。
俺の頭の奥がじんと熱を帯び、脳裏に青い光の塔のイメージが浮かぶ。
ルミナスが微かに震えた。
『その映像、わたしも今読み取りました……。千年前の終末記録、“光の塔の崩壊”。まさか、ご主人さまが……!』
「やっぱり行くしかないな。放っておけば、また同じことが繰り返される」
レアが立ち上がり、手を差し出す。
「リアム。勇者でも魔王でもないあなたとなら、きっと変えられる。この国を……この世界を」
手を重ねると、ルミナスが柔らかく照らした。
視聴者コメントが流れる。
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【アニメ化まったなし】
【未来視コメントすげえ】
【次回予告:神核炉へ!】
俺は苦笑して、ルミナスを見上げた。
「……相変わらず、騒がしい世界だな」
『でも、それがご主人さまの世界ですよ。人も精霊も、コメントも。ぜんぶつながってます。』
セリカの声が最後に告げた。
『契約は完了した。ルミナス、リアム、レア──あなたたちはこの時代の“再編チーム”。世界の記録を塗り替える者となる。』
光がゆっくりと消え、深い夜が戻る。
俺は小さく息を吐いた。
次に向かうべき場所は、決まっている。
「神核炉が動き出す前に、止めに行こう。……配信の準備、頼んだぞルミナス。」
『もちろんです、ご主人さま! タイトルはこうですね!
“無自覚最強、AI精霊を連れて世界再起動!”』
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