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生意気な辺境伯は赤ずきんちゃんがお好き――追放されたら、狼じゃなくて悪魔伯に溺愛されました――
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しおりを挟む村のはずれにある廃城。
昔は女性の死体が並んでいたという城の中には、今は人をいたぶる拷問器具が立ち並んでいるそうだ。
城の主は、悪魔に魂を売ったという噂のある辺境伯。
その場所には誰も近づかない。
伯爵が何をしているのかも分からない禁断の場所。
※※※
廃城のように見える城の前。
「へぇ、それで? 俺に助けてほしいわけ、赤ずきんちゃん」
城門の前に現れた外套を着た男が私に向かって、そう声をかけてきた。
栗色の髪をまとめ、赤いずきんを被って出てきたから、彼は私を赤ずきんと呼んだのだろう。
(顔が見えない……魔術師……?)
顔の見えない男からは、なんとなく浮世離れした雰囲気を感じた。
ぷるぷると震える両手をぎゅっと握りしめながら、掠れた声で返答する。
「は、はい」
「それで? 事情はどうなってるの?」
外套の男は、気だるそうな口調で声をかけてきた。
「今日も、義理のお母さんから、かぼちゃを持っていくようにって……おつかいを頼まれたんです……だけど、頼まれた山小屋には、狼男みたいな髭面のおじいさんがいて、『来たか、儂の妻よ。お前は売られたのだ』って言われてしまって……」
「よくある話じゃん。継母が子ども売り払ったりさ。それで? 帰る場所がないから、思い切って、この廃城に来たってわけ? なんか噂では、俺って、悪魔か何かって言われてなかった? 俺に殺されるかもよ? 狼に嫁いだ方が、数万倍ましだったかも」
「その噂も知ってはいましたが……」
かちかちと唇が震え、歯の根が合わない。
(どうしよう……だけど……)
「まあ、気持ち悪い男に嫁がされるぐらいなら、悪魔に魂喰われた方がましって思考? おどおどしてるわりに大胆じゃん。そういうの、わりと嫌いじゃないや。ほら、入りな」
そうして、男に城の中へと招かれたのだった。
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