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5 4人の邂逅
21 アイザック
しおりを挟む一方、その頃。
愛しいミリーと別れ、アイザックは砦の大門まで足を運んでいた。
木で出来た巨大な橋が朝日に照らされる様子を見ながら、彼は訪ね人を待つ。
(……こんなに緊張するのも久しぶりだ)
風が彼の朱銀の髪を揺らした。
「は……」
朝の冷たい空気を深く吸い込む。
馬の嘶きとともに、ガラガラと遠くから車輪が軋む音が聞こえてきた。音が近づいてきたかと思うと、速度を落としながら馬車が近づいてくる。
到着した馬車の扉が開き、旅人や行商人たちがぞろぞろと降りた。そんな中、外套に身を包む一人の女性が姿を現した。
土埃が舞い、彼女の飴色の緩く長い髪を乱す。彼女は大事そうに何かを抱えているようだ。
「久しぶりね、アイザック……元気そうで良かった。話があるのよ」
「そうか、俺も話があるんだ」
一見するとやつれて見えるマリーン。
緩やかな飴色の髪は少しだけほつれ、頬も少しだけ削がれた気もする。
だけれども、口紅だけがやけに紅く目立っていた。
悠然と微笑む妻は他の男性が見たら綺麗だと思うだろうが――母と言うよりも妖女に見える。
自分の相手への偏見がそう見せているのだろうか。
「子どもが生まれているのは知らなかったよ」
アイザックは妻マリーンに対して務めて冷静に返す。
彼女の抱える赤ん坊は、今はすやすやと眠っているようだった。
その子を見て、可愛いという気持ちよりも、ざわりと肌が粟立つ方が早かった。
――アイザックは男として、本能的な何かを感じ取っていた。
湧き上がる激情を抑え込みながら、彼は笑顔を作る。
「長旅で疲れているだろう。砦の一室を借りてあるんだ。そこで大事な話をしたい」
「アイザック、ありがとう……」
一見すると健気な女性に見える。
だけれど、裏では夫の先輩に体を許すような、そんな女なのだ。
簡単に気を許してはいけない。
こんな時なのに、ふっと頭の中に一人の女性の姿が浮かんだ。
自分が気を許して良いのは――。
柔らかな表情の持ち主の黒髪ポニーテールが風にそよぐ姿が脳裏をよぎる。
(ミリー……)
彼女を堂々と愛するためにも、ここが正念場だ。
アイザックの青金石の瞳に決意の炎が宿る。
そうして――かつて夫婦だった二人は、誰の子とも知れぬ赤ん坊を連れ、砦の中へと姿を消したのだった。
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