5 / 28
5※
しおりを挟む
勝手に書類を見てしまったのは、よくなかった。
ちょうど、近くに彼の書斎机があって、書類の束が見える。
(わざわざ彼を糾弾して追い詰めるつもりはありません。)
机の上の書類の束の前へと向かう。
高く積み上げられた書類を見て、私は嘆息する。
(きっと婚約を破棄するための手順が書かれたものなのでしょうね)
そうして、懐に忍ばせていた紙を取り出し、束に返そうとしていると――
「何をしている! その書類はダメだ!」
「きゃっ……!」
今しがた風に当たってくると言っていたはずの彼が戻ってきて、勢いよく書類を奪われてしまった。
「まさか、これを見たのか!?」
先ほどまでとは違ってものすごい剣幕で驚いて足がすくむ。
「ごめんなさい、のぞき見するつもりはなくて……」
「一枚目がないと思っていたら、メイベル、まさかお前が持っていたなんて……見たのか?」
見ていないと言えば嘘になってしまう。
覚悟を決めて、コクリと頷く。
すると、何かに耐え忍ぶかのように瞼を閉じていたギアスだったが、瞼を持ち上げると、まっすぐに、こちらを見てくる。
「だったら俺も覚悟を決めよう」
「え?」
婚約破棄のことだろうか――?
そんな風に考えることが出来たのは、一瞬だった。
「きゃっ……!」
今まで手さえ繋いでこなかったギアスが私の腰に手を回して、抱き寄せてきた。
身体が密着して、衣服越しに相手の熱が伝わってきて落ち着かない。
「あれを見られたからには、このままお前を部屋から帰すわけにはいかない」
「何を……言って……」
そこでハッとなる。
まさか、国家機密に当たる文書か何かだったというのだろうか――?
ギアスの表情はこれまでに見たことがないぐらいに険しいものであり、そうなのだと直感的に理解する。
「待ってください、ギアス、私は本当に何も見ていなくて……んんっ……!」
相手が何を言っているのか全然分からないまま、私はギアスに唇を奪われ、執務机の上に押し倒されてしまったのだった。
ちょうど、近くに彼の書斎机があって、書類の束が見える。
(わざわざ彼を糾弾して追い詰めるつもりはありません。)
机の上の書類の束の前へと向かう。
高く積み上げられた書類を見て、私は嘆息する。
(きっと婚約を破棄するための手順が書かれたものなのでしょうね)
そうして、懐に忍ばせていた紙を取り出し、束に返そうとしていると――
「何をしている! その書類はダメだ!」
「きゃっ……!」
今しがた風に当たってくると言っていたはずの彼が戻ってきて、勢いよく書類を奪われてしまった。
「まさか、これを見たのか!?」
先ほどまでとは違ってものすごい剣幕で驚いて足がすくむ。
「ごめんなさい、のぞき見するつもりはなくて……」
「一枚目がないと思っていたら、メイベル、まさかお前が持っていたなんて……見たのか?」
見ていないと言えば嘘になってしまう。
覚悟を決めて、コクリと頷く。
すると、何かに耐え忍ぶかのように瞼を閉じていたギアスだったが、瞼を持ち上げると、まっすぐに、こちらを見てくる。
「だったら俺も覚悟を決めよう」
「え?」
婚約破棄のことだろうか――?
そんな風に考えることが出来たのは、一瞬だった。
「きゃっ……!」
今まで手さえ繋いでこなかったギアスが私の腰に手を回して、抱き寄せてきた。
身体が密着して、衣服越しに相手の熱が伝わってきて落ち着かない。
「あれを見られたからには、このままお前を部屋から帰すわけにはいかない」
「何を……言って……」
そこでハッとなる。
まさか、国家機密に当たる文書か何かだったというのだろうか――?
ギアスの表情はこれまでに見たことがないぐらいに険しいものであり、そうなのだと直感的に理解する。
「待ってください、ギアス、私は本当に何も見ていなくて……んんっ……!」
相手が何を言っているのか全然分からないまま、私はギアスに唇を奪われ、執務机の上に押し倒されてしまったのだった。
89
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる