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後日談 クリスマス〜日本とドイツ〜
2-1 恭司side
しおりを挟むドイツ。
恭司は橋の上でぼんやり過ごしていた。
大学時代の恩師が死んだのだ。
(いよいよ死んだんだな)
恭司の恩師……日本人とドイツ人の混血の女性だった。渡独して医師として活躍していた。どうやら生涯独身との話だったが、日本に子どもを残してきているという噂があった。しかしながら、本人の口からそのことが語られることはなかった。
『恭司、日本にはミカゲという名字が多いのかい?』
本当に偶然だった。
新宮家の本家でたまたま会った黒猫のような少女が持っていた絵本――ドイツの古城のような場所が描かれていて、少女に読み聞かせしていた時に、ふとドイツに向かおうと思ったのだ。
『この絵本、たまたま近くにいたおねえさんが、××にわたしてきたの』
少女の名前は猫のような名前だと思った記憶はあるが、前後で新宮の親戚たちに建物の屋上に閉じ込められたりしていたので、イマイチ記憶が残っていなくて歯がゆさが残る。
(おそらく、あの子どもに絵本を渡してきたのは、恩師だったんだろう)
決して恩師が名乗りをあげることはなかったけれど、誰よりも厳しく、時に優しく接してくれた。
『恭司、私は貴方はこの職業に向いていると思っているけれど……もしも、別に理由があって選んでいるのだったら……例えば、母親が医師だったと父親から聞いたからだとか、そんな理由なら……後から苦しくなるかもしれない。何に縛られることなく自由に生きなさい』
そうして……。
『子どもを日本に置いてきたの。けれど会わせる顔はない、自分が母だと名乗るつもりもない』
ある意味で、自分が恭司の母親だと名乗っているようなものだったけれど……。
そんなある日、恩師から連絡が来た。
まだ六十手前と若いのに大病を患ったのだという。
最後に一目会いたいと珍しく気弱な内容のメールだった。
会いに行ったら、ひどくやつれていた。
『恭司、貴方を子どものように可愛がってきたけれど……ひとめ会いたかっただけよ。最後まで看取る必要はないわ』
『子どもを不幸にしたのに母を名乗れるはずがない』
『親友の婚約者のことを好きになってしまった。うすうす気づいていたのよ。けれども、私は親友を裏切ってまで恋人をとることができなかっただけ。強くなかったのよ』
『子どもは酷い目にあったらしい。なのに、名乗れるはずがない』
まるで独白のような呟きを漏らしていた。
恭司は一言だけ返事をした。
『先生の息子はきっと今頃幸せに生きているさ』
――新宮家への復讐に燃えていることなど悟られたくはなかった。
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