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「……んっ……」
椿は、袴の下に差し入れられた指からもたらされる快楽に耐えるべく、再び両脚にぎゅっと力を入れた。
けれども、懸命に掌で声を押し殺す方に集中しようとすれば、今度は下枝に力が入らなくなる。
清一郎は椿の芽を弄るのを止めてはくれない……。
(どうにかしなきゃ……)
与えられる快楽によって朦朧とする意識の中、椿が瞳を潤ませながら清一郎を振り仰ぐと、ちょうど目があった。
とろりと蕩けるような眼差しで見つめられながら、くすりと唇を持ち上げらる。
(私が子どもの頃みたいに……揶揄われている……)
基本的には優しい清一郎だったが、怖い話や冗談を言ってくることがあった。
まだ幼い椿が『アイロンがあたたかくなるのは、屋敷に住む座敷童が念力か何かであたためているからだ』と勘違いしていた時期がある。その頃、清一郎が『純真な椿様、その通りです』と同意してきたがために、尋常小学校に通っていた級友たちに大笑いされた記憶があるのだ。あの頃の椿は、清一郎のことを恨めしく思っていたなと思い出した。
(子どもの頃を思い出して……くすぐられていると思って……)
そう言い聞かせたが、明らかに触れられている箇所が子どもの頃には絶対に触れられない場所なせいで、やはり我慢するのは無理だった。
少しだけ悔しげに清一郎のことを見上げると、彼が優雅に口をパクパクとさせてくる。
『ちゃんとみないとだめだぞ』
(誰のせいで集中出来ないんだと思って……)
ちょっとだけ怒りが沸いてきそうだったが、すぐに快楽の波に流されてしまう。
くちゅりくちゅりと水音がいっそう強く聴こえるようになってきて、周囲の人々に聞かれてやしないかと心配になってきた。
「んんっ……」
硬くなった芽を擦り上げる指の速度が増してきて、ピンと張った爪先まで快感が幾度となく駆け抜けていく。
じわじわと蜜が溢れて止まらず、白襦袢を汚してしまいそうで不安だ。
こんな時だが、彼の色素の薄い髪が、活動写真の光を反射して綺麗だった。
(あ……もうダメ……そろそろ来ちゃう……!)
そう思った途端――。
「あ……」
なんと――。
清一郎が椿の手を引きはがしたのだ。
(そんな……もう限界……!)
喘ぎ声が劇場内に響いてしまうのか――。
だけど耐えられそうにない――一気に快楽がせり上がっていく。
声を上げて絶頂する――。
「……あ――」
そう思った瞬間――。
「んんっ……――」
清一郎の大きな手が椿の口を塞いだため、大きな声をあげずに済んだ。
彼の手に覆われたまま、荒い呼吸を整える。
溢れ出した蜜が彼の指をぐっしょりと濡らすのが分かってしまった。
(私……こんな場所で達してしまうなんて……)
火照った身体では思考もままならない。
恥じらいが強くなっている間に、活動写真は終わりを迎えてしまっていた。
(せっかくだから、ちゃんと観たかったのに……)
幕に映る男女二人が幸せそうに抱きしめ合っている姿が、椿の目に映った。
ふっと影が差したかと思うと、彼の顔が彼女の耳元に近付いている。
「椿様、今度また連れてきますから……」
清一郎は何喰わぬ顔で、ぐったり脱力した椿のことを再び横抱きにすると、劇場から立ち去ったのだった。
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