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第2章 王都での蜜月
第10話―6
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「……っ……」
硬直したまま赤面していた。
私は相手の顔を見ることができない。
「そもそも、だって、この部屋は貴方の寝室なのでしょう?」
イクシオンが正気に返った様子で告げてくる。
「ああ、それはそうなんですが……そうなると、俺は違う意味でまずいというか……」
「違う意味、ですか?」
見上げると、彼は真っ赤になる。
「そうそう、そうなんですよ! 色々とまずいんです!」
「そうですか、ごめんなさい、おかしなことを言って」
私がしゅんと落ち込んでいると、イクシオンがフォローをはじめる。
「ええっと、姫様、俺としては嬉しいんですよ? 嬉しいんですけど……」
「気になさらないでください、それでは、また明日」
私が踵を返そうとすると、彼から手首を掴まれた。
「分かりました! 俺も覚悟を決めました! しばらく休暇なので、徹夜を数日する覚悟は決めましたから! そんなに落ち込まないでください」
「あ、あの……きゃっ……!」
すると、彼に横抱きに抱えられ、寝室のベッドに運ばれた。
(そんなに落ち込んでいたかしら?)
私は壊れ物のようにそっとシーツの上に横たえられると、隣でイクシオンが背を向けて寝転がる。
「ポムウルフを数えるから、うるさくて早朝に覚醒するのも覚悟しておいてくださいね。じゃあ、おやすみなさい」
それだけ話すと、彼は何も喋らなくなる。
(……シオン)
今日も色々なことがあって疲労が強かった。
いつの間にか、瞼がとろりと重くなる。
彼の背にそっと手を添わせた。
「ありがとうございます、イクシオン将軍」
特に何も返事はない。
まだまだイクシオンの問題解決の糸口は掴めないものの、なんだか幸せな気持ちのまま、その日は眠りにつくことが出来た。
ところが、この毎日近くで眠るようになったことで、新たな問題が浮上してしまうとは考えてもいなかった。
(自分もだが、主にイクシオン側に)
そうして、新月の夜近くに城の舞踏会に向かった際に、二人の関係が思いがけず進展してしまうのだった。
硬直したまま赤面していた。
私は相手の顔を見ることができない。
「そもそも、だって、この部屋は貴方の寝室なのでしょう?」
イクシオンが正気に返った様子で告げてくる。
「ああ、それはそうなんですが……そうなると、俺は違う意味でまずいというか……」
「違う意味、ですか?」
見上げると、彼は真っ赤になる。
「そうそう、そうなんですよ! 色々とまずいんです!」
「そうですか、ごめんなさい、おかしなことを言って」
私がしゅんと落ち込んでいると、イクシオンがフォローをはじめる。
「ええっと、姫様、俺としては嬉しいんですよ? 嬉しいんですけど……」
「気になさらないでください、それでは、また明日」
私が踵を返そうとすると、彼から手首を掴まれた。
「分かりました! 俺も覚悟を決めました! しばらく休暇なので、徹夜を数日する覚悟は決めましたから! そんなに落ち込まないでください」
「あ、あの……きゃっ……!」
すると、彼に横抱きに抱えられ、寝室のベッドに運ばれた。
(そんなに落ち込んでいたかしら?)
私は壊れ物のようにそっとシーツの上に横たえられると、隣でイクシオンが背を向けて寝転がる。
「ポムウルフを数えるから、うるさくて早朝に覚醒するのも覚悟しておいてくださいね。じゃあ、おやすみなさい」
それだけ話すと、彼は何も喋らなくなる。
(……シオン)
今日も色々なことがあって疲労が強かった。
いつの間にか、瞼がとろりと重くなる。
彼の背にそっと手を添わせた。
「ありがとうございます、イクシオン将軍」
特に何も返事はない。
まだまだイクシオンの問題解決の糸口は掴めないものの、なんだか幸せな気持ちのまま、その日は眠りにつくことが出来た。
ところが、この毎日近くで眠るようになったことで、新たな問題が浮上してしまうとは考えてもいなかった。
(自分もだが、主にイクシオン側に)
そうして、新月の夜近くに城の舞踏会に向かった際に、二人の関係が思いがけず進展してしまうのだった。
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