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第2章 同居人との距離――咬――
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しおりを挟む『そこの女、甘くて良い香りがする――』
妖は、ちろちろとした舌を覗かせながら、蘭花を見ている。
「また妖……!」
蘭花の金の瞳が揺れる。
瞬きをする暇もなく――。
――疾風のごとく、蛇のような形をした顔が迫る。
「きゃっ……!!」
ぬるりぬめりと長い身体は、藍色の裳をすり抜けた。
柳のようにしなやかな彼女の右脚にねっとりと絡みつく。
「きゃっ……!」
『すべすべとした滑らかな肌触りだ……』
あやかしはぬめぬめとうごめきながら、そう呟いた。
ぞぞぞと蘭花は総毛だった。
(なんなの、この蛇みたいなやつ、天狼よりも気持ち悪いんだけど――!)
蛇は脚にからみついたまま、鎌首をもたげる。
蘭花の右足も高く持ち上げられた。
「ちょっと……! やめなさいよ!!」
着ていた裳が滑り落ち、彼女の美しい肢体が露わになった。
肌をぞわぞわとした感覚が襲ってくる。
蛇のような生き物は脚をぬめりと這い続けた。
「っやあっ……! 離れて……!」
ぬめりぬめりと妖の蠢く感覚があまりにも気持ち悪く、彼女の背筋を冷たくした。
『甘美な蜜の匂い……こちらかな……?』
蛇の双眸が、彼女の脚の間――下着で隠された秘部を見つめる。
(やっ……まさか蜜って……!)
蛇の赤い舌がちろちろと動く。
『さて――では私もこちらを飲ませていただこうか?』
そのまま、にゅるにゅると、蛇の頭が蜜口に迫る。
「やだっ……! 来ないで……!」
恐怖で蘭花は総毛だった。
蛇のような妖が、肌を這いずりまわる感覚に怖気がたつ。
絶体絶命の時、蘭花の脳裏に浮かんだのは――。
(天狼……!)
――紫がかった黒髪に、碧玉の瞳の美青年。
全身をガタガタと震わせながら、なんとか彼女は声を振り絞った。
「天狼――――! 助けて――――!」
妖が秘部を舐め回そうとしてきた、その瞬間――。
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