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第3章 別れと旅立ち――白豚と龍帝――
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しおりを挟む翌朝、天狼に純潔を捧げて疲れて眠ってしまっていた蘭花は、服をまとった状態のまま、ぼろ小屋の中で目を覚ました。
彼女の隣に、彼の姿はなかった。
(天狼がいない……)
国に帰らないといけないと言っていた天狼。
(まさか、何も言わずに帰ったの――?)
龍が出たと、村の中では騒ぎになっていた。
※※※
そうして数日が経った。
結局、蘭花の父が抱えていた借金と言うのは、地方領主である桂香の父が、息子可愛さに企てた嘘だったということが判明した。
龍の騒ぎを聞きつけた、中央の役人が現れて取り調べをした結果、分かったことだった。
賄賂の受け取りなどをしていた桂香の父は捕らえられてしまい、領民に対して横暴な振る舞いをしたということで桂香本人も刑に処されることになったのだ。
「桂香のお父さんも桂香も、妖に憑りつかれてさえいなければ……」
結局憑りつかれたのだとしても、跳ねのけるだけの心の強い持ち主たちもいる。心の弱さが仇になっただけだ。そういう者達は、妖に憑りつかれようが憑りつかれまいが、いずれは悪に手を染める……。
幼い頃の桂香は、ただただ弱弱しい少年だった。
自信のなさが仇になったのは、可哀想だと蘭花は漠然と思う。
いつかは更生して立ち直ってくれるだろうか。
※※※
そうして、蘭花はと言えば――。
父の借金を気にする必要もなく、平和な日々が戻ってくることになった。
天狼の説明通り、彼に純潔を捧げたからか、今となっては妖が下僕のように従ってくれている。
だけど、彼女の隣に同居人の姿はない。
そんな中、愛猫の娘々が声をかけてきた。
「龍の妃たる蘭花様に対し、ずっと黙ったままで申し訳ございませんでした」
真の姿は龍たる皇帝――龍帝である天狼に従う聖獣だということが判明した。
以前現れた女性の正体も、彼女だったらしい。
「いいえ、どうせ喋れるなら、もっと早く話し相手になってほしくはあったけれど、気にしないでちょうだい」
「そう言っていただけると嬉しく思います」
喜ぶ彼女に問いかける。
「ねえ、娘々、天狼の行き先を知っている?」
「天狼様のですか? 申し訳ございません、分からず……」
「そう……」
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