【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者

おうぎまちこ(あきたこまち)

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本編

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 結局、彼とは気まずいまま過ごすことになる。
 学校を卒業後、ギルフォードは海外に旅立った。

 そうして数年。

 実家とは別に事業を立ち上げた彼は、自力で成功して財を成し遂げたという。
 ついでに噂では女性関係も派手になったというが――羽振りの良い男性には付き物な話なのかもしれない。

 私はといえば、菓子職人の道を歩んでいた。
 仕事は好きだし順調だ。
 だが気づけば、結婚適齢期の二十を過ぎていた。
 最近、父親の親族である公爵家が心配して、結婚を勧めてくるようになったのだ。仕事場である菓子工房にも現れる始末……。

 うんざりして自棄になっていた私は、ある日つい嘘を吐いてしまった。


「お父様、私、仕事を続けたい。それに、好きな人がいるの。彼と愛を育んでいると言って、親族たちからの申し出を全て断ってほしい」


 そんなその場しのぎの言葉を放った結果、自宅に帰るなり窮地に陥ってしまった。
 普段は温厚な父親フォード侯爵に問い詰められる。

「ルイーズ、いったい相手は誰なんだい? 事と次第では相手に容赦はしないけれど?」

「彼は誠実な男性で、お父様が心配するようなことはありませんから」

 父の笑顔には静かな怒りが浮かんでいた。

(困ったわね)

 説明の仕方が悪かったのだ。
 結果、面倒な事態に陥った。
 蝶よ花よと育てた娘の一言に、父は青天の霹靂だったようだ。

「ルイーズ、聞いているのかい? 本当にいるのなら、今すぐ連れて来れるかな?」

 にこやかな父の持つカップがみしりと軋んで、心中穏やかではないことが分かる。
 なぜか母は、はしゃいでいた。

「ええっと、あの……」

 今さら嘘をついたと言える空気が――父からは感じられない。

(すぐに嘘だって言えば良かった)

 だらだらと冷や汗が流れる。
 狼狽えてはいけない。
 だが、内心の焦りはすさまじかった。

(どうしよう)

 ――白状するか。
 きっと温厚な両親達だから、嘘だと知れば許してくれるだろう。
 しかしながら、過保護な祖父や叔母たちからの、お見合い猛攻が止むとは思えない。

(これ以上、親戚の皆に「ルイーズちゃんの将来をちゃんと考えて!」とお父様が責められるのにも耐えられない)

 ぐっと拳を握る。

(なんとか、この場を乗り切ってみせる。そうよ! 誰かに婚約者役を頼んでみようかしら? 貯金はたくさんあるし……!)

 リンリンリン。

 その時、助け舟と言わんばかりに――我が家の呼び鈴がなった。

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