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本編
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しおりを挟む結局、彼とは気まずいまま過ごすことになる。
学校を卒業後、ギルフォードは海外に旅立った。
そうして数年。
実家とは別に事業を立ち上げた彼は、自力で成功して財を成し遂げたという。
ついでに噂では女性関係も派手になったというが――羽振りの良い男性には付き物な話なのかもしれない。
私はといえば、菓子職人の道を歩んでいた。
仕事は好きだし順調だ。
だが気づけば、結婚適齢期の二十を過ぎていた。
最近、父親の親族である公爵家が心配して、結婚を勧めてくるようになったのだ。仕事場である菓子工房にも現れる始末……。
うんざりして自棄になっていた私は、ある日つい嘘を吐いてしまった。
「お父様、私、仕事を続けたい。それに、好きな人がいるの。彼と愛を育んでいると言って、親族たちからの申し出を全て断ってほしい」
そんなその場しのぎの言葉を放った結果、自宅に帰るなり窮地に陥ってしまった。
普段は温厚な父親フォード侯爵に問い詰められる。
「ルイーズ、いったい相手は誰なんだい? 事と次第では相手に容赦はしないけれど?」
「彼は誠実な男性で、お父様が心配するようなことはありませんから」
父の笑顔には静かな怒りが浮かんでいた。
(困ったわね)
説明の仕方が悪かったのだ。
結果、面倒な事態に陥った。
蝶よ花よと育てた娘の一言に、父は青天の霹靂だったようだ。
「ルイーズ、聞いているのかい? 本当にいるのなら、今すぐ連れて来れるかな?」
にこやかな父の持つカップがみしりと軋んで、心中穏やかではないことが分かる。
なぜか母は、はしゃいでいた。
「ええっと、あの……」
今さら嘘をついたと言える空気が――父からは感じられない。
(すぐに嘘だって言えば良かった)
だらだらと冷や汗が流れる。
狼狽えてはいけない。
だが、内心の焦りはすさまじかった。
(どうしよう)
――白状するか。
きっと温厚な両親達だから、嘘だと知れば許してくれるだろう。
しかしながら、過保護な祖父や叔母たちからの、お見合い猛攻が止むとは思えない。
(これ以上、親戚の皆に「ルイーズちゃんの将来をちゃんと考えて!」とお父様が責められるのにも耐えられない)
ぐっと拳を握る。
(なんとか、この場を乗り切ってみせる。そうよ! 誰かに婚約者役を頼んでみようかしら? 貯金はたくさんあるし……!)
リンリンリン。
その時、助け舟と言わんばかりに――我が家の呼び鈴がなった。
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