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本編
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しおりを挟むなんて幸運なのだろうか。
「私、お客様の対応をしてくるわ!」
「ルイーズ! 待ちなさい! 使用人に任せて良いから!」
九死に一生とはこのことだ。
話し合いの場から慌てて飛び出た。
玄関を抜けると、心地よい風が吹いてくる。秋も近いからだろう。
ドレスの裾がまとわりついてくるのも他所に、庭を駆けた。
門扉前に訪問者の姿が見える。
「お待たせいたしました、どちら様ですか?」
金髪碧眼の青年のようだ。
甘やかな香りが鼻腔をついてくる。
「貴族のご令嬢直々にお迎えか……お転婆は変わらないみたいだな、ルイーズ」
聞き覚えのある低い声。
さあっと血の気が引いた。
目の前に立っていたのは――顔を合わせる度に喧嘩ばかりしていた幼馴染。
「な、なんで……」
なぜか――大輪の紅い薔薇を抱えている。
甘い美貌の持ち主は、いかにも意地悪そうに碧の瞳を歪めている。
「なんで、ギルが私の屋敷に……!?」
立っていたのは幼馴染のギルフォード。
なぜ海外で事業を立ち上げていたはずの彼が、こんなところにいるのだろうか。
さらりとした金の髪をかき上げながら、彼が告げる。
「ルイーズ、お前に話があって――」
「ルイーズ!」
父の声が遠くから聴こえる。
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