【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者

おうぎまちこ(あきたこまち)

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本編

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「あ……」

 彼の端正な顔が間近になる。
 しばらく二人で見つめ合う格好になった。
 彼の青い瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
 ギルフォードの節だった指が、私のブラウンの髪を梳いてくる。
 そうして、いつになく真面目な顔で告げてきた。

「――本当に、ちゃんと分かって俺に頼んでいるのか? お前の両親は、さほど気にしないだろうが、お前は俺に婚約破棄か婚約解消された不名誉を負うぞ……」

 心臓がおかしな音を立てはじめる。

「そんなの分かってるに決まって――んっ……」

 ぐいっと腰を引き寄せられ、抱きしめられてしまった。
 首筋に彼の顔が埋まってくる。
 柔らかい唇が、ちゅっちゅっと肌を這ってきた。
 ちょっとだけ覚悟はしていた。
 だけど、馬車の中。
 あまりに性急な行為に動揺が激しい。

「きゃっ……ギル、何する……んんっ……」

 突然、彼に唇を塞がれてしまう。
 ぬるりと舌が絡んできた。
 くちゅくちゅと水音が耳に聴こえてくる。

「ちょっと、やめっ……待って……ここは……」

 なんとか離れた際に、抗議するが――。

「黙ってないと、舌ぁ、噛むぞ」

「んんっ……」

 再び口づけられてしまった。
 子どもの時と違って、力強くなってしまった彼を引き離すことが出来ない。
 どんどんと硬い胸板を叩いて抗議する。
 だが、引きはがせない。

「は……」

 彼に口づけられながら、ドレスのリボンをしゅるしゅる解かれていく。

「やっ……――」

「ほら、ちゃんと恋人同士に見えるように演技しないと――」

 ――演技を頼んだのは自分の方だというのに――。

 彼の指が鎖骨をなぞってくる。

「……あっ……」

 何度も口づけの角度を変えられた。
 甘美な疼きと未知の恐怖が同時に襲ってくる。
 彼の手がドレスに侵入してきた。

(私、このまま――)

 ――混乱で頭がおかしくなりそうだ。

 その時――。


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