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しおりを挟む「もう嫌! もう頑張れない! キツイぃ! 仕事も恋もしたくない! 死んだ方がマシぃ……!!」
度数のキツイ酒や油料理の匂いが充満した酒場。
ガヤガヤと人がさざめく隅っこで、私はヤケになって強い酒を何杯も飲み干していた。
近くに放られていたグラスがキラリと光る。乱れたサフランイエローの髪に落ち窪んだ黒瞳をした自分の姿を鈍く反射していた。
(まさにジャックオーランタンみたいな見た目だわ……! いいえ、むしろ魔女。って、私は女騎士ですけど! こんな姿、初恋の青い瞳の王子様が見たらドン引きね!)
騎士になって数年が経つ。その間、初恋の王子様だと思って交際にこぎつけた相手が不幸になる事件が続いた。
だがしかし、ついに……!
なんと最近イケメン騎士――蒼い瞳のレイン――おそらく初恋の彼に間違いないだろう相手と婚約にこぎつけることに成功した!
けれども悲劇が起こる。
数ヶ月前に彼が性犯罪者として捕縛され、婚約解消することになったのだ。
そもそも、めちゃめちゃに女性と遊んでいた相手が、私と婚約しているつもりがあったのかどうか……彼が牢屋に入れられた今となっては真相は藪の中である。
「皆に白い目で見られて……男を顔だけで――瞳の色だけで選んだから……レインが私の初恋の王子様だったのかなと思い込んで浮かれたから……こんな目にあったんだわ」
酒を煽る。
「ちゃんと周りの友達の助言は聞くべきだった。私の憧れの女騎士エレナ先輩に手を出そうとしたというし……。もう先輩に合わせる顔もないわ! このまま酒に吞まれて死にたい!! でも後輩に引継ぎも何もしてない!」
だいぶ女性の地位も向上してきたとはいえ、性犯罪者と婚約解消した女騎士だなんて……!
自暴自棄で暴走しつつ、わたしはグラスに入ったウィスキーを口の中にぶち込んだ。
喉が灼けるようだったが、それよりも心がジクジク痛んでしょうがなかった。
「もう二度と誰も嫁にもらってなんてくれないわ。もう何もしたくない! 誰かに介護してもらいたい!! いっそ死んでしまいたい! でも死ねない! ああああ……!!」
さっと頭上に影が差した。
「サンディ嬢、飲み過ぎで身体を壊しますよ?」
「わたしのことなんて放っておいてください! 良いんです、もう私なんて! いっそ死にたいんです! 憧れの騎士になったけど大変で……イケメンのレインに声をかけられて、これで仕事をやめて幸せになれるって、はしゃいでいたのも事実なんです! ああ、あげく見る目のない自分がいよいよ馬鹿オブ馬鹿で、もう自分で自分が無理です!」
「見る目がなかったんですか?」
「ええ! そもそも軽い気持ちでこの職業を選んだ私がダメ女の極みなんです! 仕事に誇りも持てないクズ女なんです! 全てから解放されたくて、男を頼った私が馬鹿だったんです!!!」
「変な男に捕まりましたね」
「ああああ、もう私の中の世界の終わりが近い。でも何もせずに死ぬのはいやああああ。 ぐえええ、世の中のために立って死にたいいいい!せめて献体になって死にたいいいい。いっそ誰かの実験体になりたいぃぃぃっ!!!」
「酔いが回り過ぎているようですね……。それなら、ちょうど良かった。僕の被験体になりませんか?」
「ふぁい!!!?」
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