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しおりを挟む次に気づいた時、見知らぬ場所にいた。
というか牢屋だ。だけど、不思議とかび臭くない。
スレートグレイの岩肌の隙間からは、じわじわと水が溢れている。
背に石を感じて、ひんやりと冷たかった。
(腕が痛い……。それよりも確か……私は天使に水をもらって……?)
手足を動かすと、じゃらりと音が鳴った。
(金属音……?)
はっとして、のろのろと頭上を見上げる。
気づけば、両手を鎖で縛られて吊るされているではないか。
どうりで腕が痛いわけである。重力で死にそうだ。
ご丁寧に足枷まで装着されている所存である。
唐突な出来事に当惑を隠せない。
「あ、サンディ嬢、目が覚めたの?」
ギギギと重厚な扉の音が聴こえたかと思うと、涼し気な声が聴こえる。
仮面を装着した金髪青眼の美青年魔術師の姿があった。
「貴方は……! どうして私にこんな真似を……!? 私を縛っても良いことはありませんよ!」
「サンディ、自分から被験体になると仰っていなかったかな?」
「ええっ……? 言われてみれば……!? じゃあ、本当に私は被験体になるんですか!? 魔術の!?」
「そうそう。自分から望んでくれて良かった」
相手がにっこりと口の端を上げる。
少しずつ酔いが醒めつつある頭を働かせた。
暗がりの中、彼が仮面を外した。
甘い顔立ちに、まるで宝石のように煌めく瞳と老若男女を蕩かしてしまいそうな笑顔。
(青い瞳……)
初恋の王子の瞳を思い出させる彼に、もう全てを委ねてしまおう。
覚悟を決めて、私は叫んだ。
「もう誰の役にも立てない命です、どうぞ勝手にお使いください! 周囲に流されるまま生きてきた私ですが、貴方の被験体になる覚悟を決めました!! さっそく私はいったい何をしたら良いんですか!?」
にこにこ微笑みながら彼が答える。
「痛みを緩和して快楽を強くする魔術を考案したんだ。それで効果を見たいのだけれど……どうかな?」
「痛くないなら大歓迎です!」
「本当? ありがとう。昔から素直で好きだけど……」
彼の声音が低くなる。
「僕以外の男と付き合おうとしたのは許せないなぁ……」
背筋がぞくりと震えた。
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