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本編
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しおりを挟むそうして、まさか宮殿に迎え入れられると、盛大に使用人たちが出迎えてくれた。
陛下から離される部屋に向かうと、今まで身につけたこともないようなドレスに着替えさせられる。
煌びやかな調度で飾られた晩餐の間に連れて行かれると、清潔感のある白いテーブルの上には、豪華な料理が所狭しと並べられていた。
芳醇に使用されたスパイスの香りを嗅いで、思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。
「マリー嬢、誕生日と俺の側妃になってくれた御礼だよ」
たらふく食べさせられたら、ひどく幸せな心地になった。
最後、ふんわり蕩けるくちどけのムースを頬張っていると、陛下が指を鳴らす。
「贈り物だ」
執事の一人が私に何かを掲げてくる。
コロンと小さな指輪が、白磁の器に載っていた。
「俺は、わりと人を束縛する厄介な性質でさ、瞳の色に合わせてみたよ。もう結婚しちゃった後での婚約指輪になっちゃうけどさ」
彼の言うように、菫青石がのった婚約指輪だ。
いつの間にか席を立っていた陛下が私のそばに来ていた。
そっと私の左手をとったかと思うと、流れるような動きで薬指に指輪を嵌められた。
「俺の見立て通り、ジャストサイズだな――成人おめでとう。俺の初めての奥方」
ちゅっと指に口づけを落とされる。
「わあ! ありがとうございます!」
思わず歓喜の声を上げてしまう。
なんだかロマンス小説のヒロインになったようだ。
ウルフ陛下はにやにや――もとい、にこにこ微笑んでいる。
(は! いけない! 喜んじゃっ……! 騙されてはいけないわ!)
浮かれた気持ちを抑えつけ、幼馴染のお姉様を護るために後宮にいるのだと、自分に言い聞かせた。
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