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本編
最終回 ジュリーside
しおりを挟む時間は少しだけ遡る。
宰相の娘であるジュリーは、国王陛下であるウルフィウスと対峙していた。
「ウルフィウス、こちらをどうぞ。宰相の不正の証拠を揃えておりますわ」
「ありがとうな、ジュリー。お前が婚前にお妃教育と気づかないように妃教育をしてくれたおかげで、マリーは後宮で侍女たちと楽しくやれてるよ。あと、あいつの刺繍の才能のおかげで面倒だった外務大臣も制覇出来たしな――ちょうど良い輸出品になるって」
「うふふ、そうでしょう? わたくしのマリーは完ぺきだったでしょう?」
実はジュディとウルフィウス王子は従兄弟同士なんかではない。血の繋がった姉弟だ。
けれども、彼女は公爵家の出身ということになっている。
姉弟で好みが良く似たようだ。弟もマリーと交流を果たし、彼女を愛してしまった。
「本当に育ての親を売っても大丈夫か?」
「ええ、別に愛情なんて欠片もありませんから。わたくしは、これで、マリーの幸せだけを祈って、ずっと過ごすことが出来る……ウルフィウス、あの娘を大事にしないと……分かっておりますね?」
「分かっているよ、ジュリー。女性は敵に回すと怖いな。うかうか寝首をかかれないようにしないと」
そう言うと、弟は去って行った。
「マリー……私の最愛の……」
恋だとか、そんな浮ついた気持ちではない。
本当は王女だというのに、ジュリーは公爵家に預けられ、あまつさえ義理の両親に虐げられた。
こんなことも出来ないのかと、裁縫道具や布地を投げつけてくるような愚かな義母だった。
忌み子だと悟られないような措置だったため、本当は王女だとか周囲に気づかれることはなかった。だけど、庇ってくれるものもいなかった。
そんな中、傷をわかちあったマリー。
誰もかばってくれない環境下で、母から庇ってもくれた優しい彼女。
いつもそばでケガの手当てをしてくれた。
本当は不器用なジュリーに、誰よりも優しく刺繍を教えてくれたことは忘れない。
「マリーを手籠めにしようとした宰相なんて父ではない……」
彼女を不幸にするものは何人たりとも許さない。
彼女を護るために、弟であるウルフィウスと契約を交わし、彼の影として生きて行くことを誓った。
そう――ジュリーは――。
愛しい彼女のためならば、悪女にだってなってみせるのだ。
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