16 / 33
本編
16※
しおりを挟む「落ち着いてください、アーサー兄さま!」
アーサー兄さまの愚行を止めようと初級氷魔法を使った。
「なんだ……!?」
ゴン!
「ぐっ……!」
コントロール下手なので頭二つ分の大きな氷がアーサー兄様の頭に直撃してしまった。
アーサー兄さまの手から小瓶が離れて、ベッドの上に転がる。
同時に、彼の頭が私の胸の谷間に突っ込んできた。
「きゃあっ……! あああ、ごめんなさい、アーサー兄さま、お怪我はないですか!?」
微動だにしなくなったアーサー兄さまの頭を抱きかかえる。
「今のは効いたよ、リーリア……」
先ほどはだけられたため、乳房がまろびでたままだったことも忘れてしまっていた。
いつものような知性を取り戻しはじめたアーサー兄さまに向かって私もまじめに返す。
「……アーサー兄さま、私に惚れ薬を使っても無意味です」
「無意味……?」
「はい、無意味なのです。だから、どうか、第二王女様にお使いください」
そう――惚れ薬の効果を試そうとしたって無駄なのだ。
(だって……惚れ薬を使わなくたって、私はアーサー兄さまのことが好きなんですもの……)
昔から大好きだったお兄様。
どうか周りを見失わずに、本当に好きな女性と幸せになってもらいたい。
けれども、相手は悲しそうに眉を顰めた。
「そうか惚れ薬を使ったところで、俺はお前からすれば恋愛対象外ということなんだな」
「そうではなく……」
「だったら――」
アーサー兄さまの翠玉の瞳には決意の炎が見える。
「尚のこと、お前に惚れ薬を試すしかないだろうさ」
結局堂々巡りになってしまった。
(昔から猪突猛進でちょっと周りが見えなくなるところがあるんだった……!)
「待ってください、兄さま。惚れ薬は一度しか使えないのです、お試しで私に使ってしまっては、本当に使用したい時に使用できなくなります」
まっすぐに見据えた。
「お前に効果がないようなら、そもそも惚れ薬としての意味がないからな……それに、まだ残りもあるだろう、先ほど俺が何度か挑戦したように、お前に何度か挑戦するまでだ」
「それはそうですけれど……」
どうにか説得しなければ……
「そうだ! そもそも私の魔力が高いのだって知っているでしょう? 惚れ薬にだって耐性がある私には使っても意味がないのです」
「お前が生まれた頃から知っているが、耐性があるとかそんな話は今まで一度も聞いたことがない……」
「……っ……」
どうしようもなく伝わらない。
「リーリアが、そんなにまで俺に使われたくないのは分かったよ……」
「そうではなくって……」
(アーサー兄さまにどうしたら伝わるの……? 元々好きな相手に使っても意味がないのに……)
きっと嗅いだところで私に何らかの変化があるはずがないのだ。
あるとしたら、もっと好きになるぐらいでしかない。
こうなったら失恋覚悟で本人に言うしかないのだろうか。
(そうしたら、真面目なアーサー兄さまのことだもの、さすがに諦めてくれるような気がする。それとも、このまま嗅いで、変化がないところを見せたら納得してくれる……?)
そもそも真面目な性格のアーサー兄さまだ。
小瓶を私の許可なく使用するのに戸惑っている。
「わかりました、私に使ってください」
20
あなたにおすすめの小説
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる