【R18】突然すみません。片思い中の騎士様から惚れ薬を頼まれた魔術師令嬢です。良ければ皆さん、誰に使用するか教えていただけないでしょうか？

本編

17※

「リーリア」

「だけど、アーサー兄さまに伝えておきたいことがあります」

「何を……？」

　アーサー兄さまの揺れ動く瞳をまっすぐに見つめる。
　そうして、一度大きく深呼吸すると宣言した。

「こんなもの使わなくたって……私はアーサー兄さまのことが大好きなんです……！」

　彼はこぼれんばかりに目を見開いた。

「では……」

　私はベッドの上に転がった小瓶を手に取る。
　そうして、蓋に手をかけようとした瞬間――

「待ってくれ、リーリア！」

「――っ……！？」

　アーサー兄さまに手首を掴まれてしまった。
　翠玉の瞳を忙しなく揺れ動かしながら、切迫した様子で問いかけてくる。

「リーリア、お前は……俺のことが好きなのか？」

　あまりにも真摯な眼差しで見つめられると、目が反らせない。

「信じて……くださらないんですか？」

「俺に使用させるのを諦めさせるために、嘘を吐いているんじゃなくて……？」

「違います、私は……私はずっとアーサー兄さまのことを、子どもの頃から、ずっと……！

　思わず感極まって涙が出そうになる。

「アーサー兄さまは、惚れ薬を第二王女様のために使わないといけないのに……」

「俺が第二王女に……？　お前は何を言って……」

　その時、冷静さを取り戻したアーサー兄さまがこちらに向かって問いかけてきた。

「リーリア、ケンダルのことはどうなっている……？」

「ケンダル様とは縁談話が出ていますが直接お会いしたことはありません」

「だったら、さっきまでの……見たことがあるとか、あれは……？」

「見たことがある？」

「特別な体液のくだりだ」

「それは……魔獣たちの話ですよ……？」

　すると……

　アーサー兄さまは金色の髪をくしゃりと掴んだ。

「そうか……俺は……本当にバカだな……色々勘違いして、可愛いリーリアを苦しめてしまった……」

　自嘲気味に笑ったあと、アーサー兄さまが私のはだけた寝間着を整えてきた。

「聞いてくれ……リーリア」

「……兄さま？」

「確かに俺は第二王女との縁談のせいで、急遽惚れ薬を入手しなければならなくなった」

「ええ、第二王女様との縁談を進めるためなんでしょう？」

　すると、アーサー兄さまは首を横に振った。

「だがな、最初から俺が惚れ薬を使いたかったのは……」

　そうして、アーサー兄さまが私の頬を両手で包み込んできた。


「お前にだよ、リーリア」


　まさかそんなことを言われるなんて思ってもみなくて、驚きで視界が揺れる。