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後日談
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国王陛下に挨拶にいってすぐ、アーサー兄さまと婚約する運びとなった。
とある早朝、塔の前。
「リーリア、じゃあ行ってくるよ」
「アーサー兄さま、行ってらっしゃいませ」
お互いにほっぺにキスを交わし合った後、ちゅっと軽く口づけ合う。
毎朝の儀式である。
「そうだ、王都に通常とは違う行動をとる獣が出るという話だったから、リーリアも結界の外を歩く時は気をつけておくんだぞ」
「通常とは違う行動……?」
「そうだ。王都の話ではあるし、塔の周囲はお前が結界を張っているから魔獣は近づけないだろうが、とにかく結界の外を歩く時は気をつけておけ」
「分かったわ」
それだけ言い残すと、アーサー兄さまは白馬に乗って、騎士団長としての仕事に向かっていった。
(通常とは違う行動をとる獣、気になる……)
魔獣研究者の一人としては好奇心が勝りかけたが、アーサー兄さまに釘を刺されたので、単独で行動するのは止めようと決意する。
それにしても、最近塔の中にこもりっぱなしだった。
「今日は実験はやめにして、塔の周囲を散策をしようかしら?」
そろそろ多種多様なキノコが群生しはじめる季節だ。
木網のカゴを抱えて塔の周辺でキノコ散策をおこなう。
「あったわ、ええっと、テングタケ、イッポンシメジ、カラハツタケ、ヒダハタケ……」
猛毒のキノコをあえてチョイスする。
なぜならば、地下に飼っている魔獣たちの好物だからだ。
そうして、森でキノコ狩りをしていた時――
「……っ……!?」
結界に何者かが侵入してくる気配があった。
「何者なの……!?」
そもそもこの森は「魔女の住む森」と評判の場所であり、普通の人間は近づいてこない場所だというのに。
何者かの気配を感じて振り返る。
「誰!?」
そこには――緑のローブをかぶった魔術師が立っていた。オレンジ色の髪に肌にそばかすのある男性だ。
彼の後ろには、ごろつきのような風体の男たちが数人、黄金色の犬型の愛らしい魔獣が十匹近く並んでいる。穏やかな気性の魔獣だというのに、やけにいきり立っており、酔っぱらったかのように、ゆらゆらと不思議な動きをしていた。
(もしかして、アーサー兄さまが話していた……?)
とある早朝、塔の前。
「リーリア、じゃあ行ってくるよ」
「アーサー兄さま、行ってらっしゃいませ」
お互いにほっぺにキスを交わし合った後、ちゅっと軽く口づけ合う。
毎朝の儀式である。
「そうだ、王都に通常とは違う行動をとる獣が出るという話だったから、リーリアも結界の外を歩く時は気をつけておくんだぞ」
「通常とは違う行動……?」
「そうだ。王都の話ではあるし、塔の周囲はお前が結界を張っているから魔獣は近づけないだろうが、とにかく結界の外を歩く時は気をつけておけ」
「分かったわ」
それだけ言い残すと、アーサー兄さまは白馬に乗って、騎士団長としての仕事に向かっていった。
(通常とは違う行動をとる獣、気になる……)
魔獣研究者の一人としては好奇心が勝りかけたが、アーサー兄さまに釘を刺されたので、単独で行動するのは止めようと決意する。
それにしても、最近塔の中にこもりっぱなしだった。
「今日は実験はやめにして、塔の周囲を散策をしようかしら?」
そろそろ多種多様なキノコが群生しはじめる季節だ。
木網のカゴを抱えて塔の周辺でキノコ散策をおこなう。
「あったわ、ええっと、テングタケ、イッポンシメジ、カラハツタケ、ヒダハタケ……」
猛毒のキノコをあえてチョイスする。
なぜならば、地下に飼っている魔獣たちの好物だからだ。
そうして、森でキノコ狩りをしていた時――
「……っ……!?」
結界に何者かが侵入してくる気配があった。
「何者なの……!?」
そもそもこの森は「魔女の住む森」と評判の場所であり、普通の人間は近づいてこない場所だというのに。
何者かの気配を感じて振り返る。
「誰!?」
そこには――緑のローブをかぶった魔術師が立っていた。オレンジ色の髪に肌にそばかすのある男性だ。
彼の後ろには、ごろつきのような風体の男たちが数人、黄金色の犬型の愛らしい魔獣が十匹近く並んでいる。穏やかな気性の魔獣だというのに、やけにいきり立っており、酔っぱらったかのように、ゆらゆらと不思議な動きをしていた。
(もしかして、アーサー兄さまが話していた……?)
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