30 / 33
後日談

8※

しおりを挟む

「きゃっ……!」

 私はアーサー兄さまにお姫様抱っこされてしまった。
 ガラリとガラス扉を開くと、浴室の中に連れて行かれる。
 そっと据え置きの椅子に座らされると、アーサー兄さまが浴槽から湯を桶で組んでかけてくれた。

「ああ、こうやって湯を流していたら、まるで昔に戻ったみたいだな……」

「そうですね……」

 汗をかいて帰ってきたのは、アーサー兄さまの方だったというのに、私の方が先に湯を浴びることになった。
 当時とは違って気恥ずかしくて仕方がないが、あまり足に力が入らないので仕方がない。

「ほら、リーリア」

「あ……」

 アーサー兄さまが準備していたのは石鹸の泡だ。
 泡立てた泡で肌に触れられると、ピクンと身体が跳ね上がった。

「あ、お兄様、泡は自分でできますから……」

「力が入らないんだろう?」

「だけど……あっ……」

 全身を泡で覆われていく。
 敏感な部分に触れられるたびに、身体がびくんびくと跳ね上がった。

「ひゃんっ……!」

「ほら、あまり動くな、おかしな場所まで洗ってしまうぞ」

 全身泡だらけにされた後、湯で流されるとさっぱり肌が綺麗になった。

「じゃあ、先に入っておいてくれ」

 そうして、湯船の中に入った私は、ぶくぶく泡を立てながら相手を待つ。

(脱ぐだけでも恥ずかしかったのに、身体の隅々まで洗われたあげく、一緒にお風呂に入ることになるなんて……)

 ドキドキドキドキ落ち着かない。
 大人になってからは別々に入っていたので、本当に久しぶりだ。
 子どもの時とは明らかに違う入浴に動揺しっぱなしである。
 声をかけられる。

「リーリア、大丈夫か?」

「は、はい……」

 湯気でチラチラと相手の裸が見える。
 鍛えた体が目に入って、ドキドキと心臓が跳ね上がった。
 アーサー兄さまが、しばらく湯で汗を流した後、ざぱりと湯船の中に入ってくる。

(いよいよ一緒に入浴……!)

 真っ赤になっていると、彼がそっと近づいてきた。

「リーリア」

 湯船の中、再び背後から抱きしめられると、背中に兄さまの厚くて硬い胸板が密着する格好となった。
 ますますドキドキと落ち着かない。
 湯気にまぎれて相手の吐息が耳元にかかるのも、気持ちを落ち着かなくさせた。

「リーリア……ああ、子どもの頃みたいに背中をお前に流してもらえば良かったな……」

「え? あ! ごめんなさい、気が利かないで……」

「いいや、今度の楽しみにとっておくよ」

 クスリと笑われる。

「分かりました、だったら今度またぜひ……」

「そうしてほしい……仕事終わりにお前に背を流してもらえるんだと思えば、今まで以上に精が出そうだ」

「兄さまったら……」

「俺の可愛いリーリア……」

 ふたたび抱き寄せられると、背後から頬ずりさせてしまって、どんどん恥ずかしさが増していく。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

処理中です...