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後日談 俺様CEOと社内で××したのは極秘です
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耳にクラシック音楽が届く。
(ん? 私は……)
桃花が目覚めると、真っ白な雲と青空とが視界に入ってきた。
ガラス越しに景色がどんどん移っていくので、今自分がいる場所が車内だということが分かった。
(もしかして車の中にいるの……?)
ぼんやりしていると、青空の下、車がゆっくりと停車する。
「私……!」
桃花はガバリと身体を起こす。
シートベルトがぎゅっと上半身を抑えつけてきた。
どうやら助手席に座っているようだ。
「ああ、桃花ちゃん、目が覚めたの。今から家に連れて行こうと思っていたから、寝たままで良かったのに」
運転席に座る総悟がシートベルトを外しながら桃花に向かって声をかけてきた。
「社長、私は……」
そこでハッとする。
(私、洋服がものすごく開けたままだ!)
スーツの白シャツがはだけて胸元が露出した状態だった。
「だ、誰かに見られた……!?」
社長室は高層ビルのほぼ最上階にある。
桃花は誰かに見られてしまったのではないかと心配していたのだが、総悟があっさりと続けた。
「地下の駐車場まで『専用』にして降りたから、誰にも会ってないよ」
「他の人が乗れない機能があるんですね」
桃花はホッとした。
総悟が続ける。
「乱れて色っぽい桃花ちゃんの姿を他の誰かに見せるわけないじゃん。車だって覗き防止をつけてあるから、外からは全然見えないよ」
「そうなんですね」
けれども、桃花はどうして車の中にいるのか皆目見当もつかなかった。
「社長! そういえば、午後からの予定は!?」
すると、総悟があっけらかんと告げた。
「年休消化が足りてないからって、俺と桃花ちゃんは休みにしたんだ。竹芝が社長代行してくれているから、安心してほしい」
桃花はホッとすると、自身の胸の前で両手を重ね合わせる。
(良かった、総悟さんが無責任な男性じゃなくて)
その時、総悟の左手が桃花の黒髪をひと房手に取った。
「ねえ、桃花ちゃん、もうお仕事終わったんだし、俺のことを社長じゃなくてちゃんと名前で呼んで欲しいんだけど?」
総悟はといえば、桃花に縋るような眼差しを向けてきている。
ちょっと甘えたような雰囲気を出されると、どうしても母性本能をくすぐられてしまう。
「総悟、さん……?」
桃花はなんとなく照れてしまって相手のことを真っすぐに見れなかったが、総悟の雰囲気がぱあっと明るくなるのが気配で分かった。
「そういえば、もう会社であんなことしないでくださいね」
すると……
「あんなことって何のこと?」
総悟が飄々とした調子で問い返してきたため、桃花は思わず相手の顔へと視線を移してしまった。
見れば、彼は口の端を吊り上げて、したり顔である。
「もう、総悟さん、とぼけないでください!」
「え? だってさ、桃花ちゃんを揶揄うと可愛いんだもん」
「まったく」
桃花は頬を膨らませてシートベルトを緩めると、チラリと腕時計に目をやった。
(獅童のお迎えまで、あと一時間半ぐらいあるわね)
会社で色々あって、汗がびっしょりになってしまったので、獅童の迎えに行く前にシャワーを浴びたい。
それにしたって、どうしてだか総悟が車から降りてはくれずに、ニコニコとこちらを眺めてきているだけだ。
(総悟さんのことは置いていきましょう)
「それでは、シャワーを浴びたいので、先に降りますね」
桃花は相手にきっぱりと告げると、車のドアハンドルに手をかけたのだが……
ガチャン。
なぜかドアの鍵が閉まる音が聴こえた。
(ん? 私は……)
桃花が目覚めると、真っ白な雲と青空とが視界に入ってきた。
ガラス越しに景色がどんどん移っていくので、今自分がいる場所が車内だということが分かった。
(もしかして車の中にいるの……?)
ぼんやりしていると、青空の下、車がゆっくりと停車する。
「私……!」
桃花はガバリと身体を起こす。
シートベルトがぎゅっと上半身を抑えつけてきた。
どうやら助手席に座っているようだ。
「ああ、桃花ちゃん、目が覚めたの。今から家に連れて行こうと思っていたから、寝たままで良かったのに」
運転席に座る総悟がシートベルトを外しながら桃花に向かって声をかけてきた。
「社長、私は……」
そこでハッとする。
(私、洋服がものすごく開けたままだ!)
スーツの白シャツがはだけて胸元が露出した状態だった。
「だ、誰かに見られた……!?」
社長室は高層ビルのほぼ最上階にある。
桃花は誰かに見られてしまったのではないかと心配していたのだが、総悟があっさりと続けた。
「地下の駐車場まで『専用』にして降りたから、誰にも会ってないよ」
「他の人が乗れない機能があるんですね」
桃花はホッとした。
総悟が続ける。
「乱れて色っぽい桃花ちゃんの姿を他の誰かに見せるわけないじゃん。車だって覗き防止をつけてあるから、外からは全然見えないよ」
「そうなんですね」
けれども、桃花はどうして車の中にいるのか皆目見当もつかなかった。
「社長! そういえば、午後からの予定は!?」
すると、総悟があっけらかんと告げた。
「年休消化が足りてないからって、俺と桃花ちゃんは休みにしたんだ。竹芝が社長代行してくれているから、安心してほしい」
桃花はホッとすると、自身の胸の前で両手を重ね合わせる。
(良かった、総悟さんが無責任な男性じゃなくて)
その時、総悟の左手が桃花の黒髪をひと房手に取った。
「ねえ、桃花ちゃん、もうお仕事終わったんだし、俺のことを社長じゃなくてちゃんと名前で呼んで欲しいんだけど?」
総悟はといえば、桃花に縋るような眼差しを向けてきている。
ちょっと甘えたような雰囲気を出されると、どうしても母性本能をくすぐられてしまう。
「総悟、さん……?」
桃花はなんとなく照れてしまって相手のことを真っすぐに見れなかったが、総悟の雰囲気がぱあっと明るくなるのが気配で分かった。
「そういえば、もう会社であんなことしないでくださいね」
すると……
「あんなことって何のこと?」
総悟が飄々とした調子で問い返してきたため、桃花は思わず相手の顔へと視線を移してしまった。
見れば、彼は口の端を吊り上げて、したり顔である。
「もう、総悟さん、とぼけないでください!」
「え? だってさ、桃花ちゃんを揶揄うと可愛いんだもん」
「まったく」
桃花は頬を膨らませてシートベルトを緩めると、チラリと腕時計に目をやった。
(獅童のお迎えまで、あと一時間半ぐらいあるわね)
会社で色々あって、汗がびっしょりになってしまったので、獅童の迎えに行く前にシャワーを浴びたい。
それにしたって、どうしてだか総悟が車から降りてはくれずに、ニコニコとこちらを眺めてきているだけだ。
(総悟さんのことは置いていきましょう)
「それでは、シャワーを浴びたいので、先に降りますね」
桃花は相手にきっぱりと告げると、車のドアハンドルに手をかけたのだが……
ガチャン。
なぜかドアの鍵が閉まる音が聴こえた。
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