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第5章 罠にかかる二人
第16話 よそよそしくなったレードヴァルド➁
しおりを挟む(やっぱりレードヴァルド様の調子がおかしい気がする)
イリスは洗濯物を畳みながら考え事をしていた。
先ほど朝食をレードヴァルドに出したのだが、普段は喜々として大盛りのバゲットのお代わりまで欲しがるので、たくさん準備しないと足りないぐらいなのだが……
『あまり食欲がわかないんだ』
朝食をほとんど口にすることがなかったのだ。
(体調が悪いんじゃないかなって心配したけれど、そうではないと仰っていたわ。だけど、昼食も必要ないと話していたし……)
明らかにレードヴァルドの様子はおかしかった。
けれども、真相を語ろうとはしてくれない。
イリスに心配をかけまいと無理しているのだろうか?
「レードヴァルド様、いったいどうしてしまったの?」
イリスは溜息を吐いた。
日々の習慣というものは恐ろしいもので、悩んでいる間にも手は勝手に洗濯物を畳んでおり、気付いたら全て片付いてしまっていた。
洗濯物を仕舞っていたら、ちょうどガチャリと音がドアノブから聴こえた。
「レードヴァルド様!」
イリスが喜々として扉の前に立つレードヴァルドの元へと向かう。
「ああ……」
けれども、彼の口からは歯切れの悪い返事があっただけだった。やはり何らかの病に罹ったのではないかと、イリスは心配になってしまった。
「レードヴァルド様、お加減が優れないようでしたら、どうかお休みになってくださいませ」
けれども、彼からの反応がない。
「レードヴァルド様?」
イリスが尋ねると、レードヴァルドが口を開いた。
「イリス殿……いいや、貴女に尋ねたいことがある」
「尋ねたいこと、ですか?」
彼は神妙な面持ちをしている。
イリスの心臓が嫌な音を立てた。
そうして、レードヴァルドが重々しく口を開く。
「昨日、貴女の火傷を見た」
「え?」
イリスは考えあぐねる。
確かに、彼女の首の付け根の辺りから肩甲骨付近にかけて火傷痕が存在する。
「はい、昔から火傷痕があります。だけど、お義母様に尋ねてもどこで負った火傷なのかは教えてもらえず……」
「火傷の中に紛れて痣があることは?」
「痣ですか……? 確かに観ようによっては花の形に見える痣がございますね」
「その痣、何か気になったことはないのか?」
「痣に?」
レードヴァルドの問いかけの意味が分からずに戸惑ってしまう。
「気になったことは特別にはございませんが……」
「そうか、分かった、失礼する」
それだけ言い残すとレードヴァルドはまたしても部屋の外へと出て行った。
「いったいどうしたの……?」
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