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第1章 婚礼の儀
第3話 無垢な花嫁は、青焔の騎士の手で女になる(前編)2
しおりを挟む「あの――」
「そうだお前――」
二人の声が重なった。
「あ、あの、どうぞ――」
「姫さんから、先に良いぞ」
彼に先を譲られ、またもやフィオーレの心臓が大きく跳ねる。
(やっぱり、ただの偉そうな人ではないのかも……)
彼女は、デュランダルに視線をまっすぐに向ける。
「あ、あの、儀式の最後に怪我をされていましたよね? 大丈夫ですか?」
「あぁ? 適当に水で洗っておいたから大丈夫だろう」
「見せてください」
そういうと、フィオーレはデュランダルの日に焼けた右腕を手にとった。
「咬傷、これなら跡には残らなさそうですね」
彼の噛み傷を見て、彼女は安堵した。
(私の純潔が失われたと思わせるために、わざと怪我をしたのよね……)
彼の傷を見ていると、なんだか彼女の胸がぎゅっと苦しくなった。
「お前、俺におびえてたのかと思えば、わりと大胆だな」
「あ――急にごめんなさい」
デュランダルに声をかけられ、彼の腕から手を離した。
「こんなの傷の一つにも入らねぇよ、気にするな」
彼はふいと、彼女から視線をはずす。
「――まさか、俺の怪我の心配をされるとは思ってなかった」
どんどんデュランダルの声が小さくなっていった。
(――私、またこの人を怒らせてしまったかしら)
少し心配になったが、また話題を転換しようと、フィオーレはデュランダルに声をかける。
「あの、あなたは、先ほど私に何を言おうとしたのですか?」
「ああ――」
彼がまた彼女の方を振り向いた。
そうしたところ、彼女は想像だにしなかった言葉を受けることになる――。
「その汚れたドレスを脱げ」
「――!!?」
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