3 / 6
3
しおりを挟むこの国の王太子であるハリオルドは、幼少期にあったキアナに一目惚れした。
その後、彼女の自由を愛する心に憧れを持ち、より惹かれていった。
しかし、すでにリハルトと婚約していた彼女を王家の権力で横取りするわけには行かなかった。
だったら、婚約破棄させればいい。
幸いキアナはこの婚約に前向きではない。
この国の王太子は成人である18歳に婚約者を公に発表するしきたりで、それまでは婚約者候補として何人かの令嬢が選ばれている。
これは、幼い頃から決められた婚約者を有力貴族が自分の娘を王太子妃にするため暗殺が行われる可能性を消すためであった。
実際は一人に内定されているのだが、内定している令嬢以外の令嬢たちにも知らされず、発表のときにわかる手筈となっている。
選ばれなかった令嬢にはより良い嫁ぎ先を王家から選出するため候補になるだけでも素晴らしい名誉となっていた。
そんな理由で、婚約解消ではまた別の誰かに横取りされるかもしれない。
それに比べて破棄ならば彼女の性格から誰とも婚約せず修道院にでも行くだろう。
その隙を自分が埋めればいい。
そう考えたハリオルドは今回の計画を持ち込んだのだ。
そして候爵に婚約破棄をしたら、キアナを自分の婚約者にとお願いしていた。
候爵は娘を思い、もしリハルトから婚約破棄を告げられたら、キアナに口説く権利を与え、キアナが納得し、ハリオルドに好意を持てば婚約を承諾すると約束した。
そうして、ハリオルドはキアナとリハルトの婚約を破棄させるために動いたのであった。
「あぁ、やっと堂々と君を口説くことができるんだ。覚悟しててね、キアナ。」
ハリオルドが黒い笑みを浮かべてそう呟いた。
一方、キアナはというと、自室で優雅にお茶を楽しんでいた。
「今頃お父様は喜んでいるかしら。」
「どうでしょう。王太子殿下もいらっしゃったのでそうもいかないかと。」
「あら、それはどうして?」
「婚約破棄よりも大変なことが待ち受けているからです。」
「大変なこと?…それよりもこれからは自由ね。お父様に頼んで少しだけ別荘に行って休日を楽しもうかしら。それから旅に出るのも遅くないと思うの。」
キアナは、いくら相手の不義からでも婚約破棄すれば社交界でも笑いものになり、嫁ぎ先がなくなることを感じていた。
だから、旅に出ようと思っていたのだ。
これは父からも
「行けるのであれば行きなさい。行けるのであれば…。」
というよくわからないが了承を得たのでそのことに夢中であった。
その言葉にメラは、
「そうなることを願っております。」
「メラ、さっきからどうしたのよ?よくわからないわ。」
「私はお嬢様の幸せをずっと願っております。そしてどこまでもお嬢様についてまいります。」
「ええ、これからは自由の身になって世界中を旅したいわ!」
そう言いながらこれからのことについてゆっくり考えようと思っていたのである。
魔の手はすぐそこまで迫っているとは露知らず。
20
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる