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しおりを挟むー王宮にてー
「…ついにこのときが来たか…。」
キアナの父であるリモーツ候爵はキアナの侍女からの通知にため息をつく。
するとそばにいた青年が声をかける。
「ため息なんてついてどうしたんですか?」
「…誰のせいだと思っているんですか。」
「おや、キアナ嬢が婚約破棄されたのは私にあると?彼が独断で決めたことでしょう。」
「…いえ、そうですね。」
はぁ………。
リモーツ候爵は頭を抱える。
キアナがリハルトと婚約破棄したいというのはずっと知っていた。
はじめて会ったときのキアナとリハルトを見て、お互い好きあっているのだとおもった。
その勘違いで婚約を決めたのは悪かったと思っている。
だから、早々に婚約を解消する手筈だったのだ。
そして、次の婚約者探しをしようと考えていたのだ。
それでもリハルトと婚約していたのには明確な理由がある。
「彼が平民の女子生徒に惚れこんでキアナ嬢に婚約破棄を告げたそうではないですか。ライバーン候爵の承諾も得ずに。慰謝料がたくさん貰えて良かったですね。」
「……どの口がそんなことを。」
「なにか?」
「…いえ。」
「ライバーン候爵令息の目はやはり曇っていたのですね。キアナ嬢と婚約破棄するなど社交界から消えたいのでしょうか。」
「それに関しては同意しますが、彼は何も考えてないでしょうね。」
たった今娘の専属侍女から来た知らせをなぜ目の前のこの男が事細かに知っているか。
全てはこの男が仕組んだからであるほかない。
彼はリハルトに自分に迫ってきた平民の女子生徒を紹介し、まんまと惚れさせ、娘との婚約破棄まで持ち込んだ。
自分と彼女の邪魔になる存在を一気に消したのだ。
自分は気づいてないが、キアナは美しい顔と誰にでも手を差し伸べる、淑女に相応しい振る舞いで社交界の妖精と呼ばれ、とても人気があった。
そんな彼女を自身の浮気で婚約破棄するなど社交界から抹殺されるだろう。
それがこの男による策略だと気づかずにいることに、候爵はリハルトにもほんの少しだけ同情した。
それ以上に娘に傷をつけたという怒りはあったが。
「では、私に彼女を口説く権利を与えてくれますね?未来のお父上。」
「…そういう契約ですからね。あとまだ違いますのでそれはやめてください。」
「絶対に彼女を私の妻にしますので難しいかと。」
「…ですがお約束どおり娘が貴方を拒絶したら潔く引いてくださいね。」
「わかっております。まあそんなことはできないと思いますが。その前に彼女に惚れてもらうまでです。」
「娘には誠実にお願いします…ハリオルド殿下。」
「もちろん。彼女に嘘はつきません。家名と剣に誓ってね。」
そう笑顔で言うこの国の王太子に、娘もとんでもない方に目をつけられたものだと候爵は思う。
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