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しおりを挟む「キアナ嬢、悪いが私と婚約破棄してくれ。」
それを聞いて目に涙がたまる。
「それはどうして…。」
彼は目を伏せながらこたえる。
「他に好いている令嬢がいるんだ。君のことは政略の相手としか見れなかった。すまない。」
「わかりました…。父には私から伝えておきます。どうかお幸せに。」
「ああ、頼む。…キアナ嬢も。」
私、リモーツ候爵家のキアナは、婚約者であるライバーン候爵家のリハルト様から婚約破棄されてしまった。
同じ侯爵家と言うこともあり幼馴染として一緒にいることも多く、いつの間にか決まっていた婚約だったが、それなりに仲良くしていたはずだった。
しかし、学園に入学してからリハルト様の態度が激変した。
リハルト様は同じ学園の平民の方を好きになってしまったようだった。
その愛を貫くためには私との婚約は邪魔でしかなく、今回婚約破棄を告げられたようだ。
いても立ってもいられずその場から立ち去った。
淑女としてはあってはならないが、この場合は許してほしい。
だって……だって。
「やったーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
やっと婚約破棄してもらえたのだから。
「婚約者がいるのに他の令嬢に現を抜かす方なんてこっちから願い下げよっ!メラ、お父様にお伝えしてちょうだい。慰謝料たっぷり頂きましょう。」
侍女兼護衛のメラに伝える。
「かしこまりました。旦那様もさぞお喜びになるでしょう。」
「そうね。この日をまだかとずっと待っていらしたものね。」
「しかしお嬢様、涙をうかべながら大喜びで飛び跳ねるのは淑女としていただけません。」
「いいじゃない。今日だけよ。こんなに嬉しい日は人生で初めてだわ。」
そう、私はリハルト様との結婚を全く望んでいなかった。
リハルト様は幼い頃から女性に目がなかった。
私も含め皆が自分のことを好いていると勘違いしていた。
正確に言えば、私以外の女性は確かに彼を好いていたと思う。
顔はまあまあよく、勉強や剣術もそこそこ、なりより侯爵家と言うこともあり令嬢から人気があったからだ。
そんな彼は私がいるにもかかわらず色んな女性たちといることが多かった。
そうなれば私も好きになることはなく、むしろそんな浮気者を夫に持つなど枷でしかない。婚約破棄したいくらいだった。
しかし、両親が私もリハルト様のことが好きだと思って勝手に決めた婚約だったため、こちらから婚約破棄してしまうと角が立ってしまい、その後の婚約者探しも難航してしまうとのことで、相手から婚約破棄してくることを望んでいた。
ついに、このときが来たのだ。
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