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あらま。
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「ハイ、氷です。これで項を冷やして下さい。」
「あ、どうも…」
店のマスターが氷の入った袋を洋一に手渡し
洋一はソレを噛まれて未だにジンジンと熱を持ち、疼(うずく)く項へと当てる
「くぅ~…浸みるぅ~…」
店の床に座ったまま
氷袋を項に当て、項垂れながら洋一が呟く
αに大分強く噛まれた洋一の項には
赤黒く変色してしまっている歯形がクッキリと残され、かなり痛々しい…
「…医者に診てもらった方が良いんじゃね?ソレ…かなり酷いぞ…」
浩介がαを押えたまま、心配そうに洋一に尋ねる
「大丈夫、大丈夫w血は出て無いっぽいし…」
洋一が俯いたまま浩介の方を見て、ヘラヘラと笑いながら片手を振る
そこへ
「う”ぅ…は、なせ…っ、もう…大丈夫…だから…」
浩介に押さえつけられているαが呻きながら口を開き
ソレを聞いた浩介が怪訝そうな表情で尋ね返す
「…本当に?」
「ああ…あのΩのフェロモンの匂いも大分薄まってきたからな…
もう…離してもらっても大丈夫だぞ…篠原浩介…」
「!?」
押えつけている自分の方に首を向け、視線を合わせながら
ハッキリとした口調で浩介のフルネームを言ったαに
思わず浩介は押えつけていた手を離し、その場から立ち上る
「俺の事――ご存じで…?」
「――そりゃ知ってるさ…“株式会社グロース”の社員なんだから…
“名目上”でも副社長である俺が社員の名前と顔を知らんわけなかろう?」
αは身体についた埃などを払いながらその場から立ち上る
「お前の事も当然知ってるぞ皆瀬洋一…噛みついて悪かったな…大丈夫か?」
「え…?ええ…まあ…」
洋一は氷袋を項に当てたまま、副社長にどう反応していいのかが分からず…
困ったような笑みを浮かべながら返事を返す
「――まあ…お前の場合は――
“社員だから知ってた”って訳ではないんだがな…」
「へ?」
α…副社長の言葉に洋一が間抜けな声を上げる
「お前…振られただろ…“要(かなめ)”に…」
「ッ!?どうしてソレを――」
『ごめんなさい洋一…私――運命の番を見つけちゃったの…
だから私達――もう別れましょう…』
「うっう…要…う”ぅぅ……かなめぇ…グスッ…うわぁぁぁあああんっ!」
振られた事を改めて思いだし、洋一がその場で大泣きし始める
「!洋一っ、ちょっとアンタっ!
いくら副社長だからって洋一の傷抉ってくれるなよなっ!!」
浩介が泣きだした洋一の傍に駆け寄り、背中を擦りながら副社長を睨み付ける
「別に…抉ったつもりは――
ただ…兄妹(きょうだい)揃って同じ男に迷惑をかける事となるとは…
これも何かの縁か?…と、思ってな。」
「…え…?」
「きょう…だい…?」
洋一と浩介の時が止まる
「お前を振った女――“鬼生道 要”は俺の愚妹(ぐまい)…妹だ。」
「あ、どうも…」
店のマスターが氷の入った袋を洋一に手渡し
洋一はソレを噛まれて未だにジンジンと熱を持ち、疼(うずく)く項へと当てる
「くぅ~…浸みるぅ~…」
店の床に座ったまま
氷袋を項に当て、項垂れながら洋一が呟く
αに大分強く噛まれた洋一の項には
赤黒く変色してしまっている歯形がクッキリと残され、かなり痛々しい…
「…医者に診てもらった方が良いんじゃね?ソレ…かなり酷いぞ…」
浩介がαを押えたまま、心配そうに洋一に尋ねる
「大丈夫、大丈夫w血は出て無いっぽいし…」
洋一が俯いたまま浩介の方を見て、ヘラヘラと笑いながら片手を振る
そこへ
「う”ぅ…は、なせ…っ、もう…大丈夫…だから…」
浩介に押さえつけられているαが呻きながら口を開き
ソレを聞いた浩介が怪訝そうな表情で尋ね返す
「…本当に?」
「ああ…あのΩのフェロモンの匂いも大分薄まってきたからな…
もう…離してもらっても大丈夫だぞ…篠原浩介…」
「!?」
押えつけている自分の方に首を向け、視線を合わせながら
ハッキリとした口調で浩介のフルネームを言ったαに
思わず浩介は押えつけていた手を離し、その場から立ち上る
「俺の事――ご存じで…?」
「――そりゃ知ってるさ…“株式会社グロース”の社員なんだから…
“名目上”でも副社長である俺が社員の名前と顔を知らんわけなかろう?」
αは身体についた埃などを払いながらその場から立ち上る
「お前の事も当然知ってるぞ皆瀬洋一…噛みついて悪かったな…大丈夫か?」
「え…?ええ…まあ…」
洋一は氷袋を項に当てたまま、副社長にどう反応していいのかが分からず…
困ったような笑みを浮かべながら返事を返す
「――まあ…お前の場合は――
“社員だから知ってた”って訳ではないんだがな…」
「へ?」
α…副社長の言葉に洋一が間抜けな声を上げる
「お前…振られただろ…“要(かなめ)”に…」
「ッ!?どうしてソレを――」
『ごめんなさい洋一…私――運命の番を見つけちゃったの…
だから私達――もう別れましょう…』
「うっう…要…う”ぅぅ……かなめぇ…グスッ…うわぁぁぁあああんっ!」
振られた事を改めて思いだし、洋一がその場で大泣きし始める
「!洋一っ、ちょっとアンタっ!
いくら副社長だからって洋一の傷抉ってくれるなよなっ!!」
浩介が泣きだした洋一の傍に駆け寄り、背中を擦りながら副社長を睨み付ける
「別に…抉ったつもりは――
ただ…兄妹(きょうだい)揃って同じ男に迷惑をかける事となるとは…
これも何かの縁か?…と、思ってな。」
「…え…?」
「きょう…だい…?」
洋一と浩介の時が止まる
「お前を振った女――“鬼生道 要”は俺の愚妹(ぐまい)…妹だ。」
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