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団長&副団長 × アミル

魔獣の痕跡

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 余計な邪魔が入ったので遅くなったけれどカイルを昼間見た場所へ案内する。
 ここですと足を止めると、階段をじっと見つめアミルによく気づいたねと笑った。
 何があるんだろうと思っているとカイルが懐から何かを取り出す。

「それは?」

「まあ見てなって」

 そう言うとカイルは降りた階段の下、扉近くの床に手にした瓶の中身を振り撒いた。
 ぼうっと淡く浮かび上がった青色。

「これって……」

「そう、魔獣が残した痕跡。
 よく魔獣の住処なんかに見られるマーキングだよ」

 魔獣が縄張りを誇示するためにマーキングすることはよく見られる。
 残すマーキングの種類にもいくつかあり、侵入禁止や繁殖相手を探すものから仲間に危険を知らせるものなど多岐にわたる。
 このマーキングが何を意味するのかはわからないがここに魔獣がいる、もしくはいた、のは確かだ。

「本当、よくわかったね」

「いえ、気が付いたというわけでは……」

 よくわからない違和感があっただけなのでわかったと言われるのは気が引ける。

「別に明確に理由がわからなくても気が付いたのは確かでしょう。
 そこには今はわからなくても何か違うと思う理由がちゃんとあるから。
 違和感を見つける度に色なのか臭いなのか気配なのか探ってみな。
 続けていくうちに自分が何に違和感を持ったのかわかるようになる」

 それは騎士としての武器になるよと言われた。
 わからなくても何かを感じてる、か。
 最初からわかるわけじゃないから違和感を持てただけでも結構すごいと褒められた。
 素直に喜ぶのもなんか悔しいので頷くに留める。

「マーキングを消そうとしたんだろうね、一回洗った跡がある」

 そうカイルが床の浮き出た痕跡を指し示す。
 確かに、言われると擦ったようにマーキングの跡が伸びている。
 この痕跡を見る限り、素人がたまたま捕まえて連れてきたはありえない。

「中に入るんですか?」

「いや? ここに誰が来ているのか突き止めるのが先かな」

 通ってるみたいだし、と扉の取っ手に指を滑らす。
 ほらと見せた指先には砂埃などは付着していない。
 扉を確認していたカイルがもう戻ろうかと上を指し示す。

「悪いんだけどアミル、この後団長の所に行ってくれる?」

 いつ来るかわからないし見落としたくないからとカイルはここに残るらしい。
 応援を呼んでくるようにと言われ了承を返す。

「そのまま休んで明日また戻ってきて」

「はい、カイルは……」

「俺はさっき休んだから大丈夫。
 団長には魔獣が町に入っている可能性ありで伝えて」

 わかりましたと頷いて早足で町の外を目指す。
 駆け出したいけれど目立つわけにはいかない。
 カイルは危険を承知で残る。アミルがいても足手まといだ。
 わずかな不安と心配を胸に押し込め周囲の警戒に集中する。
 危険が大きいのはカイルだけれど町のどこに危険が潜んでいるかわからない
 余計なことは考えずに野営地までの道を急いだ。


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