騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

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団長&副団長 × アミル

抵抗

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 暗闇の中で息を潜める。
 地下の閉塞感や緊張感に浅くなりそうな呼吸を意識してゆっくりと行う。
 アミルの耳に階段を下りて来る足音が聞こえた。
 微かな足音が止まり、開いた扉から月明かりが差し込む。

 男が手にした灯りに室内が照らされる。
 物の少ない地下室には布の掛けられた檻。
 魔獣が興奮しないように掛けられた布に男が違和感を感じる前に入口近くに隠れていたカイルが動いた。

 足を払いローブの首元を掴みゆっくりと床に引き倒して腕を押さえる。
 一連の動きをほぼ音もさせずに行い、縄まで掛け終える。全く無駄のない動きは流れるようで、男が抵抗する間もなかった。

「さて、聞きたいことがいくつかある」

「なんだ手前……、ぐっ!」

 身を捩り暴れようとした男の背をカイルの膝が押さえつける。
 男の呻く声から結構な力が込められていることが知れた。
 無駄話はせず聞かれたことに答えるよう求める声が穏やかに聞こえるのが余計に怖い。

「まず、この場所を誰から借りてるのかな。
 ブラッディホークを飼育するのに丁度いい地下室なんてそうそう見つからないはずだけど」

「知るかよ……っ!
 たまたま空いてたから寝床にしようと思って入っただけだ!
 ブラッディなんとかなんて知らねえっ……!」

 魔獣のことなんて知らなかったと叫ぶ男に取り合わずカイルは質問を重ねていく。

「それから卵の保管所も。 同じ人物から借りた?
 地下に保管場所を得たってことはブラッディホークがどういう魔獣か知ってたってことだよね」

 知らないと否定する男に力を掛け黙らせる。

「この前会っていた相手はここと関係は?」

「知らねえって!」

 やったことを考えれば正直に話す方がおかしいと思うが男はふてぶてしい態度を崩さない。今もギリギリと腕を締め上げられているのにも関わらずだ。
 ふうん、と呟いたカイルがアミルに目配せをし男を立たせる。
 この場でこれ以上の詰問はできそうにない。
 場所を移すため扉を開け、ローブの男を連れ出す。
 もっと抵抗するかと思ったが細い階段で暴れるほど愚かではなかったようだ。
 大人しくなった男を先頭に階段を上がっていく。


 ぴた、とカイルの足が止まる。
 振り仰いだ視線の先を追うと周囲を囲む男たちが目に入った。
 ――武装している。

 思わずカイルを見ると口元に浮かべた笑みを酷薄なものへ変えていた。

「――通りすがりには見えないけれど、何の用かな」

 一番近くで見下ろす男へ問いかける。
 カイルの問いに男が答える。そこの男を引き渡せと。

「えー、俺たちもコイツに用があるんだけど」

 場にそぐわない緊張感の欠片もない返答にも武装した男は表情を変えなかった。

「不利なのはわかっているだろう。
 無駄な抵抗はしない方が身のためだぞ」

 相手の言う通り頭上を取られているこちらは不利だ。狭い階段という足場も悪い。
 加えて相手は人数も多かった。アミルの位置から見えるのは階段上の男を含めて3人だが、カイルの視線からするともっといるように思えた。

 仕方ないか、とカイルがローブの男の縄を手放す。
 一度だけ振り向いた男へ手を挙げ縄を離したことを示すと、男は嘲笑い後ろ手に縛られたまま階段を上がっていく。階段の中程で止まっていたため階段を上り切るのはすぐだった。

 ――!

 男が上り切る寸前、階段を蹴ったカイルが一息で距離を詰める。
 最後の一段へ足を掛けていた男を引き倒し背を踏みつけた勢いに乗せ武装した男へ一撃を放つ。

 金属のぶつかり合う音が夜の闇に響いた。

「なっ! 抵抗するつもりか!」

「当たり前じゃない? 引く理由がないよ」

 武装した男は攻撃を防ぎながらも驚愕を露にカイルを見た。
 まさか抵抗するとは思わなかったと顔に浮かべている。

「アミル!」

 カイルに名を呼ばれ反射的に階段を上がる。
 ローブの男は倒された時に顔を打ったのか地面に伏せ呻くだけで逃げる様子はない。

「向こうに行っててくれるかな、あっちの方が安全だから」

 そう言って離れた路地を指し示す。了解を返し走り出そうとして寸暇迷う。

「そいつはそのままで良いよ」

 男をどうするかと一瞬視線を落としたアミルの動きが見えているかのように指示を発する。
 行って、と命じられてアミルが駆け出すのと、武装した男たちが襲い掛かるのは同時だった。


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