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団長&副団長 × アミル

騎士団の不祥事と事後処理

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 騎士団による魔獣飼育の犯人の隠匿、逃走補助。そのために犯人を逮捕しようとした騎士を襲撃したという前代未聞の不祥事に、近隣に駐留していた中央騎士団の責任者は即座に人を向かわせることを決め、中央騎士団本隊へ部隊の派遣を進言すると共に襲撃犯を引き渡し町に戻る騎士団へ数名を同行させた。

 おかげで中央騎士団の先遣隊が到着してからは非常に速やかに話が進んだ。
 追加で捕縛した者の中に領主の従者がいたことも良い方向に働いた。
 事態の重さを見て中央騎士団からアミルたちの騎士団に協力要請が出され、中央騎士団本隊の到着前に管轄の騎士団、それから領主の屋敷にも捜索に入ることになった。

 そんな訳でアミルは今、この町の騎士団の詰め所にいる。
 元いた騎士団は謹慎、代わりにアミルたちの騎士団と中央騎士団の先遣隊が詰め所を使い、捜索して差し押さえた書類の確認に当たっている。
 団長は次から次に運び込まれてくる書類にうんざりした顔をしながらも書類を捌いていた。

「団長、コレ追加です」

 カイルが持ってきた書類の山に団長の眉間に深くシワが寄る。
 領主の金の流れを追うという複雑な処理をしていたところに話しかけられた上に、対応しなければならない書類を増やされ機嫌が急降下したのが見て取れる。
 団長の感情の機微なんてわかりきっているだろうカイルはいつもの笑みを崩さない。むしろ楽しそうだ。
 団長が見ていた書類をカイルに突き付けて文句を言う。

「これはお前でもわかる内容だろうが」

「わかるからって俺に任せすぎにしてるからこういう時に困るんですよ」

 少しくらいはやらないと、と更に書類を積み重ねていく。少しという量ではないように見えるけど。
 どこが少しだとぼやく団長に取り合わず高く積み上げた書類を置いてカイルは部屋を出て行った。
 カイルが置いて行った書類を手に取り団長が青筋を立てる。

「あいつ……! 嫌がらせか!!」

 増やされた書類は捕らえている騎士たちや従者などの取り調べ記録だったようで、供述している内容とすでに押収している書類の照合をしなければならずとても手間のかかる仕事だ。
 容量を超えたようで団長は頭を抱えて唸っている。

「団長、よかったら今カイルが持ってきた書類は僕の方で確認しましょうか?」

 動かなくなった団長を見かねて提案する。
 がばっと起き上がった団長の顔が期待から躊躇いへと変わっていくのを見て笑みが浮かぶ。

「もちろん最後は団長に確認してもらわないといけませんが、全体を見て必要な箇所を抜き出して見やすいようにすることはできますから」

 安心して任せられるようにと言葉を重ねる。
 最終的な確認は団長がする必要があるけれど、見やすく書き出すくらいなら任せてもらって大丈夫だ。

「それは助かるが……、良いのか?」

「ええ」

 大丈夫だと頷き、自分の前にある書類を箱へ戻す。
 先ほどまで押収した書類に番号を振り目録を作る仕事を任されていたので大体は頭に入っている。
 団長が一から見るよりは早いだろうと書類に手を伸ばす。

「アミルはこういった書類仕事も苦手じゃなさそうだな」

「苦手ではないと思いますが……、まだまだ経験不足だと感じています」

 やはり先輩たちに比べるとまだまだできないことが多いと感じる。
 一朝一夕で身に着くものではない。それはわかっているから自分にできることをこなしていくだけだ。

「そうか? 俺には十分に見える」

 助かってると笑みを浮かべる団長にありがとうございますと返して書類に目を落とす。
 こうして認められるのは嬉しい。頬がほんのり熱を持つのがわかった。
 悟られないように俯いて調書を開く。
 読み進んでいくうちに作業に没頭し、いたたまれなさは忘れていった。






 集中して調書を読み込むアミルの横顔を見つめる。
 時折書き留めるのは供述の中にあった証拠の管理番号だろうか。
 先ほど伸ばしかけた手を握り込む。俺の言葉に頬を染めたアミルに思わず伸ばしかけた手。
 欲望で汚した手で触れようした自分が嫌になる。それ以前にどんなつもりで触れようとしたのか。
 飲み込む自己嫌悪が苦すぎてうんざりする。
 何度となくカイルとの濡れ場を見られても態度の変わらないアミルに安心しながらも、それは俺に見られたことなどどうでもいいからなのかと湧く嫉妬。
 自分がどうしたいのかもわからない。ただ触れられれば満足なのか。
 思考が同じところを繰り返し全く書類に手が付かない。
 このままではいかんと深く息を吸って気持ちを切り替える。
 こんなに自分の思考に振り回されるのは覚えのないことだった。


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