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辺境の造船都市 クルトラカ
思っていたより大きいぞ?
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サティの背に乗ってしばらく経つと、前方に、空へと昇る煙が見えてきた。
「ユーリ、見て。ほら煙が見えるでしょ」
「ああ、見えた。きっと人が住んでいるんだ」
「ユーリ以外の人に初めて会うなあ。なんだかどきどきするよ」
「俺もこの世界に来てからは初めてだから、似たようなもんだ」
「そういえばそっか」
大地はまだ一面の森に覆われているが、一本の大河が煙の上がる方面に向かって流れている。俺たちは川沿いを飛んでいた。集落は川の近くにあるのかもしれない。
「そうだサティ。煙の上がる場所に近づいたら、少し手前で降りよう。念のため、人間の姿になって欲しいんだ。ドラゴンが人々にどう思われているかわからないから」
「どういうこと?」
「例えば、俺のいた世界だと人魚の肉を食べたら不老不死になると信じられていて、人魚を狩ろうとした人々もいたみたいなんだよ。まあ人魚なんていなかったんだけどな。もし、ドラゴンが人魚のように思われてたら、大変だろ?
もしくは、この世界では、ドラゴンが悪い奴だと信じられているかもしれない。もちろんサティは俺にとって最高のパートナーだよ、でも他の人間がサティを見たら驚いてしまうかもしれない。ここが竜と日常的に接するような世界であれば問題はないと思う。でも、まだサティ以外の竜を見かけたことはないからな。始めは慎重に行こう」
「うーん、なんだか嫌な感じだよ。あそこに行く必要ある?」
伝え方が悪かったのか、サティの機嫌を損ねてしまったようだ。
「ごめんなサティ。でも、人がたくさんいれば、美味しい食べ物や見たことのない綺麗な物もあると思うぞ。俺はサティとこの世界を見て回りたいんだ」
「美味しい物は食べたいなあ」
「わかった、着いたらご飯にしような」
「じゃあもう少しだけ頑張るよ」
サティと話しているうちに、煙の立ち上がっている場所が見えてきた。
そこは、想像していた集落などとは程遠い、円形の城壁に囲まれた、大きな街だった。
街の中心には、工場のような建物が密集しており、いくつもの煙突が乱立している。空へと昇る灰色の煙は、そこから出ていたのだった。
街は想像していたとおり、大河の隣に建っていた。森林の中にあるわけではなく、街の向こうには平原が広がっていた。街の住民からしたら、森の入り口に位置するということになる。
「サティ、人間が住む場所で、こういう大きなところは街って言うんだ。きっとたくさんの人間が住んでいるぞ。ひっとしたら、サティの親のこともわかるかもしれない」
「わたしのお父さんお母さんだよね、知りたいような、知りたくないような」
サティなりに思うところがあるのか、人間の感覚とは違うものなのか。複雑そうな心境の声色だ。
「よし、森の中にそろそろ降りよう」
「はーい」
森の中に開けた場所を見つけると、俺たちは地面に降り立った。
こわばった体をほぐし、サティのワンピースを取り出した。
「あっち向いてて」
俺が背中を向けると、サティはさっそく人間へと姿を変えた。最近は服を着るのもお手の物だ。
「できたよ」
振り向くと、サティは小さな女の子になっていた。
街では兄弟と名乗ったほうがいいだろう。
水を飲んで少し休憩すると、俺たちは街へ向かって歩き始めた。
「美味しい物を食べるぞー!」
小さなサティの一番の関心は、食べ物のようだ。
小さな身体で、元気よく声を張ると、サティは俺の二、三歩前へ歩み出た。
俺はサティの背を見て歩く。
銀色の髪は背中まで伸びていた。陽は高く上っている。木々の間から溢れた光がサティの髪にあたってきらりと輝いた。
「ユーリ、見て。ほら煙が見えるでしょ」
「ああ、見えた。きっと人が住んでいるんだ」
「ユーリ以外の人に初めて会うなあ。なんだかどきどきするよ」
「俺もこの世界に来てからは初めてだから、似たようなもんだ」
「そういえばそっか」
大地はまだ一面の森に覆われているが、一本の大河が煙の上がる方面に向かって流れている。俺たちは川沿いを飛んでいた。集落は川の近くにあるのかもしれない。
「そうだサティ。煙の上がる場所に近づいたら、少し手前で降りよう。念のため、人間の姿になって欲しいんだ。ドラゴンが人々にどう思われているかわからないから」
「どういうこと?」
「例えば、俺のいた世界だと人魚の肉を食べたら不老不死になると信じられていて、人魚を狩ろうとした人々もいたみたいなんだよ。まあ人魚なんていなかったんだけどな。もし、ドラゴンが人魚のように思われてたら、大変だろ?
もしくは、この世界では、ドラゴンが悪い奴だと信じられているかもしれない。もちろんサティは俺にとって最高のパートナーだよ、でも他の人間がサティを見たら驚いてしまうかもしれない。ここが竜と日常的に接するような世界であれば問題はないと思う。でも、まだサティ以外の竜を見かけたことはないからな。始めは慎重に行こう」
「うーん、なんだか嫌な感じだよ。あそこに行く必要ある?」
伝え方が悪かったのか、サティの機嫌を損ねてしまったようだ。
「ごめんなサティ。でも、人がたくさんいれば、美味しい食べ物や見たことのない綺麗な物もあると思うぞ。俺はサティとこの世界を見て回りたいんだ」
「美味しい物は食べたいなあ」
「わかった、着いたらご飯にしような」
「じゃあもう少しだけ頑張るよ」
サティと話しているうちに、煙の立ち上がっている場所が見えてきた。
そこは、想像していた集落などとは程遠い、円形の城壁に囲まれた、大きな街だった。
街の中心には、工場のような建物が密集しており、いくつもの煙突が乱立している。空へと昇る灰色の煙は、そこから出ていたのだった。
街は想像していたとおり、大河の隣に建っていた。森林の中にあるわけではなく、街の向こうには平原が広がっていた。街の住民からしたら、森の入り口に位置するということになる。
「サティ、人間が住む場所で、こういう大きなところは街って言うんだ。きっとたくさんの人間が住んでいるぞ。ひっとしたら、サティの親のこともわかるかもしれない」
「わたしのお父さんお母さんだよね、知りたいような、知りたくないような」
サティなりに思うところがあるのか、人間の感覚とは違うものなのか。複雑そうな心境の声色だ。
「よし、森の中にそろそろ降りよう」
「はーい」
森の中に開けた場所を見つけると、俺たちは地面に降り立った。
こわばった体をほぐし、サティのワンピースを取り出した。
「あっち向いてて」
俺が背中を向けると、サティはさっそく人間へと姿を変えた。最近は服を着るのもお手の物だ。
「できたよ」
振り向くと、サティは小さな女の子になっていた。
街では兄弟と名乗ったほうがいいだろう。
水を飲んで少し休憩すると、俺たちは街へ向かって歩き始めた。
「美味しい物を食べるぞー!」
小さなサティの一番の関心は、食べ物のようだ。
小さな身体で、元気よく声を張ると、サティは俺の二、三歩前へ歩み出た。
俺はサティの背を見て歩く。
銀色の髪は背中まで伸びていた。陽は高く上っている。木々の間から溢れた光がサティの髪にあたってきらりと輝いた。
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