短編集

サグリ

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モラハラ夫が変わってくれるなんて期待した私が間違っていました。離婚して出ていきます

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「お前の卑屈な態度を見ていると怒りが湧いてくる…。どうしてお前はいつもそんな顔で俺を見るんだ?」

ロブはいつものように妻のコリンナを責めた。
理由など何でもよく、ただ気が済むまで罵倒すれば満足だった。
コリンナがどれだけ傷つこうがロブは気にしない。

「何か言ったらどうなんだ?いつもそうやって黙っていて、まったく話にならないな!」

何か言ったところで何倍にもなって返ってくることは何度も経験し学習していた。
コリンナはただ耐えるしかなかった。

「もういい。何も言わないなら離婚だ。出ていけ」
「わかりました。実家に帰らせていただきます」

コリンナの我慢も限界で、どれだけ自分が我慢しようが無駄だと悟り、もう諦めることにした。

 ☆ ☆ ☆

「まさか本当に出ていくとはな」

コリンナがいなくなったことはロブにとって想定外のことだった。
今までどれだけ厳しく当たろうがじっと耐えていたコリンナだったので、今回もきっと何もしないだろうと考えていた。

しかし、更なる追い討ちがロブを待っていた。

「失礼します。ご主人様、お暇をいただきたく思います」
「ふん、お前も自分勝手な奴だな。まあいい。どうせ他にも代わりはいるからな。辞めたいならさっさと辞めろ」
「ありがとうございます。今までお世話になりました」

使用人はコリンナがいたから辞めずにいた。
そのコリンナがいなくなったとすれば、ロブに従う義理はない。
安い給金で扱き使われ暴言を吐かれるような主人はお断りだった。

同じように考えていた使用人は多い。
暇を願い出る使用人が絶えることがなく、ロブも面倒になり全員に解雇を伝えた。

「不満があるなら辞めればいい。そんな態度では他で通用しないぞ?」

こうしてロブの使用人はいなくなった。

 ☆ ☆ ☆

通用しないのはロブのほうだった。
使用人がいなくなれば食事の用意もままならない。
使用人がいなくなったことに腹を立て暴言を吐こうが事態は改善しない。

慌てて人を雇おうとするが悪評が広まったロブに雇われたいと申し出る人はいなかった。

食べるものに困れば平民から奪えばいい。
そう考えたロブは食堂へ行き貴族だからという理由で無銭飲食を繰り返した。
さすがに貴族としての振る舞いから逸脱していたため、王によって貴族籍を剥奪されることになった。

(まったくどいつもこいつも俺の邪魔をしてばかりだな)

ロブは反省することができなかった。
貴族でなくなったロブは無銭飲食をしようとして捕まり犯罪者として鉱山送りの刑に処された。

 ☆ ☆ ☆

ロブと離婚してからのコリンナは自信を取り戻し明るく振る舞えるようになった。

(どうしてあんな男を信じてしまったのだろう。信じて良かったことなんて何もなかったじゃないの)

反省を踏まえて同じ失敗を繰り返さないとコリンナは誓った。

その後、コリンナは穏やかな性格の男性と再婚し、今度は二人で平和な暮らしを満喫した。
もう暴言に怯えることもなければ相手の顔色を窺うこともない。
ごく自然にいられることの喜びをコリンナは噛みしめ、愛する夫と共にずっと幸せに暮らした。
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